西武新宿線の新井薬師前駅、都営大江戸線の落合南長崎駅などを利用できる中野区松ヶ丘エリア。
近隣には都内有数の花の名所・哲学堂公園があり、新宿からわずか5km圏内ながら、ゆたかな自然に囲まれています。
妙正寺川沿いに建つデザイナーズマンションで暮らすのが、ムカバトリ一級建築士事務所を主宰する村田裕紀・優花さんご夫妻。
住居兼事務所として、建築家ならではのアイデアとこだわりが光る空間でしたが……
なんと取材翌日に引越しをひかえているそうで、その気配がまったく感じられない部屋に、取材陣は心配しっぱなしだったのでした。
名前:村田裕紀さん・優花さん職業:ムカバトリ一級建築士事務所主宰
場所:東京都中野区
面積:約40㎡+ロフト10㎡
家賃:12万円
築年数:築10年
さすがの間取り図!(クリックで拡大)
お気に入りの場所
緑に囲まれたワーキングデスクワンルームを家具で仕切り、ワーキングスペースとリビングに分けています。
仕事は、日あたりのいい大きな窓に面したデスクで。
早い者勝ちで決まったという裕紀さんの特等席。
「窓からは妙正寺川が見えて、部屋に置いた植物に囲まれて仕事ができるので、気に入っています」と裕紀さん。
一方、優花さんはリビングのテーブルに移動して作業することが多いそう。
「夫のデスクトップパソコンで圧迫感があって……。夫婦間で席に落差があるんです(笑)!」(優花さん)
学生時代の友人と協働したソファ優花さんのお気に入りは、落ち着いたブルーが印象的なソファ。
「私たちが設計したものを、家具工房・KOMAの職人である友人につくってもらい、それを夫とふたりで組み立てました。
テレビっ子なので、テレビを観てリラックスしているときがしあわせですね……」(優花さん)
収納スペースを仕切るパーテーションに組み込まれていて、場所を取るはずのソファが省スペースに。
ふたりなら並んで、ひとりならゴロンと膝を立てて横になれるサイズ感です。
使いやすいようにDIYしたキッチン「自宅で仕事をしているので、気分が変わる料理がたのしくて」という優花さん。
使いやすいようにと、水まわりの棚は優花さんがDIYしたものです。
「水場は木が傷みやすいので、水が接する足元だけ100均で買ったクリアマニキュアを塗ってコーティングしました。
このDIYは半日もあればできますよ」(優花さん)
DIY初心者でもマネできそうな、耳寄り情報をいただきました。
図面は引かずに感覚的につくったという優花さんに対して「こっちは図面を引いて設計しました!」と返す裕紀さんがDIYしたのが……
キッチンの食器棚、その名も「骨箱(ほねばこ)」。
優花さんが買い集めた食器やポット、カトラリーが並びます。
2本の柱が四角いボックスの箱を支え、飾り棚のような空間も確保されていて、使いやすそう!
この部屋に決めた理由
この部屋に住んで、現在4年目。
それぞれ別々の会社に勤めながらここに住み、2年ほど前に一緒に事務所をはじめたそうです。
「この部屋に引っ越す時点で、事務所を開設しようと決めていたので、自宅兼事務所として快適に暮らせるところがいいなと思ってました。
40㎡以上のワンルームで、都心に出やすいことを条件に探したら、なかなかいい物件がなくて……」(裕紀さん)
玄関からの景色。天井が高い!
「夜な夜な不動産サイトを見てまわって、ネットに出ている賃貸情報はすべて知っているレベルに(笑)。
新着でやっと見つけたこの部屋は、天井が高くて、昼間も明るいのが決め手でしたね」(裕紀さん)
「私は、近くに公園とパン屋さんがあることを絶対条件に入れていて、それも両方満たしていました。
最近、そのお気に入りのパン屋さんは閉店してしまったんですけどね……」(優花さん)
スーパーが徒歩圏内にあり、少し足を延ばして中野駅まで行けば買いたいものが買え、新宿にもすぐ出られる、そんな便利な立地もよかったのだとか。
残念なところ
バルコニーとキッチンがちょっとせまい「せっかく南向きなので、もう少しバルコニーが広かったらなぁ〜」(裕紀さん)
「キッチンもちょっと気になりますね。日々、料理で気分転換をしているので……。
コンロは3口で、あともうちょっと明るいとうれしいです!」(優花さん)
夏の熱を吸収する床「リノニウムという建材で、ブラックなこともあって、熱を吸収して夏は特に暑いです……」(裕紀さん)
お気に入りのアイテム
伸張式のダイニングテーブル20年ほど使っているダイニングテーブルは、裕紀さんのお兄さんからもらったもの。
そこに天板を付け足して、伸張式のダイニングテーブルにDIYしたそうです。
「大勢で座れるように、ホームセンターの島忠で金物を買ってきて、拡充できるテーブルにしました。
設計者としての反省点は、座ると足が来る位置に金具があること……。
ここに座る人には、ぶつかるので足元気をつけてくださいって毎回言ってます(笑)」(裕紀さん)
イスは、このテーブルに合うものをアルフレックスで購入。
酉年につくった鳥のオブジェ木に止まった白い小鳥は、ふたりがそれぞれつくったもの。
「酉年の年賀状に使うために、紙粘土でつくりました。それを今はオブジェにしてます」(優花さん)
手づくりのカッティングボードに、植物を飾って(裕紀さん)KOMAのワークショップでつくったカッティングボード。
もともと刺身皿にしたかったという裕紀さんの作品、今は植物が置かれ、インテリアの一部になっています。
もらいものの「まゆげった」(裕紀さん)ふと見上げると、目に入ってきたまゆげった。
「明らかに部屋の中で違和感があるんですが、捨てられずにいます(笑)」と優花さんが言うとおり、シャープなイメージの部屋で異彩を放ち、笑いがこみあげてくる可愛さです。
「茨城県結城市のキャラクターで、兄からもらったもの。
昔僕が、というか家族全員共通して、眉毛がつながっていたので……(笑)」(裕紀さん)
大正時代の下駄箱(優花さん)「学生時代、和室に住んでいたので、そこに合わせて買ったものです。
今は、ちょっとしたものを入れる見せない収納として使ってます」(優花さん)
買い集めた食器(優花さん)手前が大嶺實清さんの器
料理好きな優花さんは食器好きでもあり、夫婦で陶器市に出かけることもあるのだとか。
「学生時代に、大学のあった沖縄で買ったものや益子焼、笠間焼、母親の実家である有田焼などなど……。
沖縄を代表する大嶺實清さんの器は、新婚旅行で窯を訪れておしゃべりした際に、なんとお祝いとして『好きなのをひとつ持って行っていい』と言われて、いただいたものです!
組み合わせて違和感がないものを集めてますけど、ちょっと土っぽい感じが共通してますかね? 」(優花さん)
食器を選ぶときは“食べものを置いたところがイメージできるか”を基準に、買っているそう。
「食器は朝ごはん用、夜ごはん用と分けて使ってます。
買う時点で『このお皿でショートケーキが食べたい』『これはワンプレートごはんで使う』『これは餃子を食べる』など、頭の中で振り分けられるんです。
魚柄のお皿は、魚を入れたパスタを食べるときに使いたいな、とか」(優花さん)
優花さんの器の中に、ビールジョッキをさりげなく紛れこませる裕紀さん。
実は年はじめに、その年の“おつかれ会”で使うグラスをふたりで買いに行くのが決まりなのだそう。
「僕たちの施主との打ち合わせって、毎回ものすごく長くて。模型や資料を用意して、数時間打ち合わせして……終わると放心状態。
それが終わると、このグラスで、ふたりでビールを飲んでおつかれ会をするんですよ」(裕紀さん)
なんてすてきな習慣!
暮らしのアイデア
家具はモビリティなものを
テレビ台であり、リビングとワークスペースを仕切る家具
家具は裕紀さんによる設計で、どこへ行っても使えるモビリティな家具にこだわっているそうです。
「僕が設計した家具はすべてバラバラに分解して、運び出せるんです。
空間を壁ではなく家具で間仕切ると、いろいろな住まい方ができます」(裕紀さん)
スペースを有効活用して冷蔵庫や洋服を収納し、ソファまで組み込まれた家具も。
有孔ボードの穴を生かして、帽子や鞄を引っかけたり、突っ張り棒をつけて布で隠したり。
これも同じく、ユニットごとにバラバラにできるので、引越し先でも活用するそうです。
モノの「住所」を決める自宅兼事務所では、どうしても荷物が増えそう。このスッキリ整理された部屋には、なにかルールがあるのでしょうか?
「モノの住所を決めることでしょうか。
例えば事務所スペースの棚は、マスごとに『法規関係』『プロジェクト単位』『昔の雑誌』などを決めて、使ったらその場所に戻すようにしてます」(裕紀さん)
「ツールボックスは、道具を固めて移動できる職人の道具箱を参考につくりました」(裕紀さん)
また、仕事柄増えてしまう建材サンプルをインテリアの一部にするのも、暮らしのアイデアだそうです。
寝るところがいっぱいある「寝室はロフトですが、夏はすごく暑いので、エアコンの効きがいい下の部屋に寝たり、冬はロフトで寝たり……。使い分けてます」(裕紀さん)
植物は床に置かない部屋の中にポンポンと置かれた大きめの植物たち。
「一番大きな植物は、スーパーマーケットで売れ残っていてかわいそうだったものを買いましたが……どんどん大きくなってますね」(優花さん)
「木に囲まれる感じにしたかったので、植物は地べたでなく、棚の上などに置くようにしてます。
天井の高さを利用したかったのもあるし、空間に立体感が出ますよ」(裕紀さん)
家具や材料のあまりを、何かに使う「昔いただいた家具の足を、分解してタオルかけに使ってます」(裕紀さん)
タイルの見本は、キッチンのタオルかけに。
これからの暮らし
今度は和室のある暮らし取材翌日に引越しをするおふたりの次の住まいは根津。
プライベートとワーキングスペースを分けたいというのが、その理由でした。
「ワンルームでは、ひとりがONだと、もうひとりもONにしないといけないんです。
なので、もうひと部屋つくれる場所に引越しを決めました」(優花さん)
半年ほど探し続けて、またもやネットに出ている賃貸情報はすべて把握して(笑)、やっと見つかった根津の物件。
「レトロな雰囲気ですね。68㎡で3部屋ある物件で、和室もあるんです。
設計をはじめてから、和室のある暮らしは初めてなので……楽しみですね。
床の色に合わせて家具に柿渋を塗って、昭和レトロな雰囲気に合わせていこうと思ってます」(裕紀さん)
物件探しのコツ、“ガマン”はひとつまで「物件探しで気にしていたことは、ガマンはひとつまでということです。
なかなか希望がすべて叶う物件はないんですけど、ふたつガマンするポイントがあったらやめようと、ふたりで話しました。
根津の物件のガマンは、お風呂がバランス釜なこと!」(裕紀さん)
「でも根津周辺は銭湯が多いので、銭湯の年間パスポートを買ってもいいなと思って。
ここでは人のつながりがない感じがあったんですけど、根津は下町ならではの魅力があるので、街にコミットした暮らし方をしたいですね」(優花さん)
「今回見た物件の中に、庭付きの2階建て集合住宅があったんですけど、次はそこに住みたいなと、もう考えていて。
そこはワーキングスペースが確保できないので、オフィスをかまえる必要がありますけど。4年後くらいかなー」(裕紀さん)
「私は2拠点生活もいいなと思ってます! 大すきな沖縄や、都心から2〜3時間の田舎に住んで、遠隔で仕事したい……」(優花さん)
引越しを機に、さらにその先の夢が見えてきた様子。
暮らしを探求するおふたりなら、モビリティ家具とともに暮らしの可能性を広げていけそうです。
Photographed by Kenya Chiba
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