リノベーションって、なんのためにするんだろう。

素敵に暮らしたいから? 快適に過ごしたいから?

いろんな理由があるけれど、目的を突きつめて考えてみたら、自分の生活スタイルに部屋を最適化するためなんじゃないかと思いました。

西荻窪駅から徒歩数分のマンションに住む小林祐太さんは、自ら設計したワンルームに「余白」を残し、住みながら“住まい方の最適解”を探しています。

不動産のプロである小林さんに、未完成な部屋をつくった理由や、マンション購入の際に気をつけるべきポイントをうかがいました。


間取り図(クリックで拡大)

この部屋に住んだきっかけは?

お客さんに売る予定だった部屋

「前職が中古不動産を扱う会社・コスモイニシアで、僕はリノベの設計兼営業担当として働いていました。

この物件は、社外パートナーのTOOL BOXさんと共同企画でリノベしたもので、プロジェクトマネジメントから設計、販売まで僕の仕事だったんです。

設計段階では自分が住むつもりはまったくなく、誰にとっても住みやすい設計を心がけました」

費用感とデザインが理想的だった

「僕は物件を売る立場として、“自分で中古マンションを買ってリノベする”のを経験したいと思ってました。

でもちょうどいい物件が見つからなくて、そんなとき『俺が設計した部屋があった!』と気づいて(笑)。

リノベ済みの状態で3,000万円弱という価格も理想的でした。もともとマンション自体の費用とリノベ費用を合わせて4,000万円程度で見積もっていたので」

なぜ29歳で、ワンルームの中古マンションを購入したんですか?

賃貸マンションに比べてコスパがいい

「賃貸に住む場合、月々の支払い金額は自分の手元に戻ってきませんよね。マンションの場合は、毎月ローンを払った分だけ資産として積み立てていけます。

もちろん年々資産価値は下がりますが、西荻窪のこの立地なら、どんなに下がっても1,000万円は下らないでしょう。

ちなみに月々の支払いは、管理費と積立金を合わせても10万くらい。タイミング的には、ちょうど転職を控えていたので、その前にローンを組んでおこうと思いました」

マンションの価値は下がりづらい!

「僕はリノベができるメリットを感じてマンションを購入しましたが、資産的なメリットも同じくらい感じています。

建物の価値は年々下がりますが、マンションの価値は20年ほどで下がりにくくなります。このマンションは築49年なので、もう下がり切ってるんですよね。

だから資産価値が暴落するリスクは少ないし、逆に西荻窪の地価がドカンと上がることだって考えられます」

「ちなみに一軒家の場合は、建物の値段は下限なく下がって20年で0円になります。

一生住むなら戸建でもいいんですけど、でもそれなら、僕だったら東京以外をオススメしますね。東京は土地の値段が高いのでせまい戸建になってしまって、庭も持てません。

それならマンションを買うのと、暮らし方はあまり変わらないですよね。

こういうことって不動産業界の人以外は知る機会がないので、マンション購入はリスクだと思われがちなんですよね……」

住み継ぐことを前提に、マンションを買う

「いつか結婚して子どもが生まれたら、ワンルームではせまくなります。

子育てをする上では地方に住みたい気持ちがあるので、いつかは必ず引越しをします。

そのときこの家は、東京R不動産のような信頼できる仲介業者さんに預けて、誰かに住んでもらいたいな。駅から徒歩数分でこの広さであれば、12〜13万程度で貸出できると思います」

中古マンションを買うときに、気をつけることは?

「築年数」と「修繕計画」

「安全面を考えるのであれば、築年数は気にしたいですね。

この物件は築49年で旧耐震ではあるんですけど、近いうちに修繕計画が決まっていました。

耐震診断を入れているか、修繕積立金があるか、大規模修繕計画があるか……など、一度管理会社に問い合わせるといいですよ!」

老朽化した水道管はNG

「古い建物の水道管は、銅製の場合があります。傷みが増すと破裂して漏水したり。

下の階に損害があったら、水道管の持ち主が保障しなければならないんです……。

とはいえ水道管の修理ってかなり大変で、構造によっては床をすべて剥がす必要があります。だからリノベ時に一気に変えるのがオススメですね。

漏水して賠償金を支払うことを考えると、保険だと思って修理しておくべきかと……」

コミュニケーションを取りやすいリノベパートナーを見つけよう

「なによりも、住む人に寄りそったコミュニケーションができる設計担当者と出会えるかが重要ですね。

リノベあるあるですが、工事業者にさまざまな要望を伝えた結果、見積もり価格が跳ねあがって驚いたり、専門的な知識をもとにしたコミュニケーションがとれず、要望を伝えきれないことも。

例えばROOMIEで好きなテイストの部屋を見つけたら、その物件を担当した会社を調べて、連絡を取ってみるのも手だと思いますよ」

不動産のプロの視点で、こだわったことは?

青空を生かすための構造にした

「この部屋は上層階で見晴らしがとてもいいので、ベランダの開口を活かしました。もともとは3Kの薄暗い部屋でしたが、壁をすべて抜いてワンルームに。

リノベでは、配管の位置を自由に設置するために床をあげることがよくありますが、そうすると視点が高くなって、青空が遠くまで見えなくなるので……あえて床はあげていません。

その分、キッチンや水まわりの場所を制限されちゃいますけどね」

「それと、梁はむき出しにしないで、あえて隠すように壁を建てました。

その分ちょっと壁が内側に建って、部屋自体はせまくなっているんですけど、スッキリしてムダがなくなりました」

TOOL BOXのアイアンパーツを採用

「TOOL BOXのパーツを使用した内装は僕のこだわりです。

主張しすぎないけれど愛着のわくパーツばかりで、誰にとっても居心地のいい空間ができるなと思ったので」

未完成な住まいを選んだ理由

「『リノベーション物件に住むぞ』と思ったときに、選択肢として浮かぶのはふたつだと思うんです。

ひとつは、中古物件を買って中を壊し、イチからすべてリノベする。ふたつめは、リノベが完了した家を買う。

でも、僕が不動産会社の営業担当としてお客さんと話すうちに気づいたのは、ふたつの中間的な物件にもニーズがあるということでした。

完全にリノベされた部屋を購入した人からは『もうちょっとこうしたいな』『ココはこうできたらよかったな』。逆にゼロからリノベする人からは、『知見がないので、どこからやっていいかわからない』という声を聞きました。

未完成な状態だけれど、ある程度暮らしの想像をかき立てられる段階までリノベされた部屋が必要だと思ったんです。

それで『微調整』というコンセプトに共感してくれそうなTOOL BOXさんに話を持ちかけました」

「例えばこの部屋は、有孔ボードを好きな場所に設置して部屋をアレンジできるメニューを、デフォルトでつけました。リビングと、隣接する洋室の広さを、自分で決められるんです。

そのほか要望があれば、オプションで棚をつけたり、タイルの色を変えたりも。

僕は部屋を仕切らず、余った有孔ボードはクローゼットの扉として取りつけてもらいました」

編集部ノート
「部屋に生活を合わせるのではなく、生活に部屋を合わせたい」
ビールを飲みながら取材陣を迎えてくれた、自然で飾らない小林さん。そんな言葉が印象的でした。
生活リズムは人それぞれなのに、みんなパッケージのような同じ部屋で暮らすって不自然……。
そういう理由で、新築物件には疑問があるとも話してくれました。

余白が多い「未完成」の家だからこそ、これからも小林さんらしい暮らしを模索していくのでしょう。
暮らしって、そうやって手作りしていくのが楽しいのだと、改めて感じました。

部屋の詳細や暮らしのアイデアは「みんなの部屋」で!

Photographed by Norihito Yamauchi

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