池袋駅から少し歩いたところにあるヴィンテージマンション。近くに高速道路が走っているため周囲に高層ビルやマンションがなく、最上階からの眺めは格別です。

玄関ドアを開けて飛び込んでくる情報の多さに、多趣味であることが瞬時に見て取れる佐々木さん。パッと見コワモテですが、実はすごくやさしくユニークなひと。物件購入、そしてリノベーションに踏み切った理由について伺いました。

リノベーションをしようと思ったきっかけについて教えてください

「実は、引越し前もゴリゴリのデザイナーズマンションに住んでいたのですが、ちょっと飽きちゃって……。

広くて住みやすいところに引っ越そうと思っていたタイミングで、僕の勤めている会社にリノベーション会社出身の人間が転職してきたんです。それで、『作るのもアリだな』って」

「自分のイメージしてるものを作ってみたかった、というのもあります。当然知識もなにもないのですが、要所要所に『こういうものがあったらいいな』っていうのを、実現してみたかった。出不精なので、家で過す時間には好きなものに囲まれたいんですよね」

具体的に、どのような提案をしましたか?

「ピンタレストを使って、キッチン、リビング……とカテゴリーに分けて合計200枚くらいピン留めしました。それを事前にリノベーション会社に共有。あと、言語化したアイデアを2、30個くらいリストにまとめたものも同様に共有しました。

たとえば『壁の一面はコンクリ剥き出しにしたい。でも一面は濃いめの壁色にしたい』とか、『キッチンをステンレスにしたい』とか……。それらを基に担当者が間取りの候補を何個かつくってくれて。2、3回の打ち合わせで、最終的にひとつに決めた。

わりとワガママも言ったと思うんですけど、それも汲み取ってくれて。すごく協力的にしていただきました」

特にこだわったポイントについて教えてください

さりげなく空間を切り替えるアイデア

「夜、ボーっとしたいから、段差部分に間接照明を入れたかったんです。間接照明をつけるなら、なるべく下の方から光が当たる方が明るすぎない空気をつくれそうだなと思って。キッチンも同様に、さらに一段高くなっています。


最下段にタイルを貼ったのは、インナーバルコニーのような空間をつくりたかったから。そうした空間の切り替え方にはこだわっています。キッチン上の天井に化粧板を入れたのも、その空間をきちんと切り取りたかったからなんです」

実家時代から欠かせなかったパンチングボード

「壁のパンチングボードも、どうしても入れたかったもの。実家に住んでいるときにも自分の部屋に自分で埋めていました。これは超シンプルに、ラクなんです。いろんなものを雑にぶら下げても邪魔にならない」

ワガママを聞いてもらえるかもしれない、裏ワザ

「トイレとお風呂のタイルは、あえて斜めに貼ってもらいました。真横に貼るとキツい印象になる気がして。

実は、施工会社の方に結構ワガママを聞いてもらいました。これもそのひとつ。『4倍の工数かかったよ!』って、あとで笑いながら言われましたが、ほとんど“後出しじゃんけん”でもやってくれました。『これもやりたくなっちゃったなー、社長!』って感じで(笑)。

そうやって融通してくれたのは、施工中に毎週のように現場に通ったからだと思います。『毎週来るやつなんて、いないからなぁ!』って、息子のように可愛がってくれて。差し入れ、ジュースくらいしかしてないんですけどね……(笑)」

リノベーションしたことで、暮らしはどのように変化しましたか?

「なんとなく、気を遣って丁寧に生きるようになった気がします。

たとえばステンレスのキッチンも、ずっと暮らすなら傷がついても“味”ですけど、いつかは貸すなり売るなりすると考えているので、ある程度きれいに使いたい。

もともとは激烈なO型で、実家では特にひどかったんです。ベッドにも土足で上がってましたからね(笑)。環境が本当にひとを変えるんでしょうね。だからって無理しているわけじゃなくて、そもそも『こういう空間に住みたい』と思ってリノベーションしてるので、それを維持するためのことは不思議と苦にならないんです」

これからリノベーションを考えている読者に向けて、アドバイスをください

「なにをやるとどれくらいお金がかかるか、を理解しておいた方がいいと思います。それによって優先順位も変わる。それこそリノベーション会社にお願いするのであれば、訊いちゃえばいいと思いますが。

あと、『つくっている途中の段階で、いっぱい写真を撮っておけばよかった』と僕は後悔しています。どこにどんな釘を打っていいのか、など細かく記録しておかないと、図面に描かれていない部分はあとからではわからないので。これは自分でDIYするつもりの方なら、特に気をつけるべきポイントかと」

特別な知識や経験がなくても、理想の住まいは実現できる。

ただそこに、暮らしのなかから生まれるさりげないアイデアがあれば、きっとリノベーションはもっと自分のモノになるはずです。

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Photographed by Yutaro Yamaguchi

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