忙しさのあまり秋アニメがほとんど視聴できず困り果てているFP山崎(@yam_syun)です。今回は王道のストーリー展開「ボーイ・ミーツ・ガール」について考えてみます。
『天空の城ラピュタ』はあまりにも完成度が高すぎるので、いつ見返しても飽きることはありません(見飽きる理由があるとすれば、完成度が高すぎるからだったりする)。今でもなお、「バルス!」の瞬間に2ちゃんねるもtwitterも過剰なサーバー負荷がかかるほどに強く支持されている王道ストーリーです。
ラピュタのような「ボーイ・ミーツ・ガール」は物語の基本中の基本です。男の子と女の子が出会ったところからストーリーが広がり、やがては世界をも左右することになるなんて、わくわくします。
しかし、「ボーイ・ミーツ・ガール」型の難しさは手垢が付いていることで、作家はこれをいかに切り抜けるかに苦心します。アニメ化、コミカライズも行われたライトノベル『フルメタル・パニック』(作:賀東招二)の大団円などは、最終刊の前で「これは鬱展開か」と騒いだファンの心配を鮮やかに裏切り、見事なハッピーエンドに持ち込みました。(コミック版はもう少しで完結しそうなので期待して待っています)
今回紹介するのは、まだスタートしたばかりですが、その後の展開を期待している「ボーイ・ミーツ・ガール」なストーリーです。
■その女子高生は地球の侵略者か保護者か
小川麻衣子作の『ひとりぼっちの地球侵略』は、その絵柄の柔らかさに油断して読み進めているうちに、タフなSF的バトルを連れてくる不思議な漫画です。
どこかパズーっぽい主人公は、高校一年生の入学式に謎の先輩(女子)に見込まれます。話をしてみると、彼女は地球を侵略するために来た宇宙人だというのです。
電波系か中2病かと半信半疑の主人公でしたが、自身の過去に起きたイベントと、彼女の身に降りかかったアクシデントにより、彼女が本当に宇宙人であること、地球侵略の危機がウソではないことを知らされます。
イベントを重ねていく中、彼女は主人公に「二人で一緒に、この星を征服しましょう!」と誘い、主人公は彼女に「お前はもう、ひとりぼっちじゃないんだ!」と呼びかけます。世界を動かす(であろう)「ボーイ・ミーツ・ガール」の始まりです。
まだ一巻しか発売されておらず、連載途上のコミックであるため、もしかすると今後の展開に肩すかしを食うかも知れませんし、残念ながら未完(あるいは無理やりのエンディング)になる可能性もあります。しかしコミックの読者は現在進行形で物語の誕生に立ち会うことができます。
今後はともかくとして、「この1巻を誰かに薦めてみたい」と思わせる幕開けであることは確かです。
ここまでのレビューを読んでみて気になってきた方は、本気の「ボーイ・ミーツ・ガール」の開演を見届けてみませんか?
■あわせて読みたい~『魚の見る夢』
作者の小川麻衣子さんは、ライトノベル『とある飛空士への追憶』のコミカライズと、『魚の見る夢』という短編集を出しています。どちらも作者の力量が出ているので、一読をお勧めします。
『魚の見る夢』は『ひとりぼっちの地球侵略』とはまたトーンが打って変わって、百合漫画です。基本的に女の子だけが登場するので、「ボーイ・ミーツ・ガール」はありません。
姉妹カップル、同級生カップル、同級生の友人(片方は好きだが両思いではない)のそれぞれの心象と日常生活を織り交ぜながら、少しずつ大人へのステップを踏んでいく様子が描かれています。
同じ作家が描く異なるジャンルのセンスを楽しんでみるにもいいと思います。