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モノで溢れているのに、なぜか整って見える空間。そのヒミツは“合理性”(板橋)|みんなの部屋

2018/05/22 11:00 投稿

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人気連載「みんなの部屋」vol.110。部屋づくりのアイディア、お気に入りの家具やアイテムなどの紹介を通して、リアルでさまざまな「暮らしの在り方」にフォーカスします。


玄関ドアを開けて、たじろいだ。ここは東京のはずなのに、木々が鬱蒼と生い茂るジャングルにでも迷い込んだかのような錯覚に陥る。

マンションの外観と内装に大きなギャップがあったのはもちろんですが、それ以上に迎え入れてくれたこの部屋の住人・佐々木さんが、狡猾な猛獣さながらちょっとコワモテだったからです。

しかし取材を進めていくと、ひとつひとつのエピソードにギャグを交えながら語り、その都度ガハハと全力で笑うから、次第にようやくホッとする。

そんなユーモラスな佐々木さんが暮らすのは、都内のヴィンテージマンション。リノベーションしたばかりのその部屋は、趣味とこだわりのつまったジャングルでした。

名前:佐々木さん
職業:IT系企業 企画
場所:東京都板橋区
面積:50㎡ 1LDK
物件価格:非公開 リノベーション価格:1,000万円
築年数:築30年

お気に入りの場所


佐々木さんの部屋で大きな役割を担うのは、施工中にワガママを言って「いいのを選んでもらった」というホームシアターセット。

「休日はソファに寝転んで、映画やバラエティー番組を観てることがほとんどです。友達と家飲みすることも多くて、それぞれが最近撮影した写真なんかをスクリーンに投影して見せ合ったり、みんなでゲームをしたり」

すぐそばにあるテレビも小さいわけではなく、写真を投影したりバラエティー番組を観るにはむしろテレビだけで十分な気もします。が、そこには佐々木さんならではのこだわりがあるようです。

「ひとことで言うと、“ドデカイ”っていうことがいいのかもしれない。スマホで見れば十分じゃないかっていう写真を、わざわざスクリーンで眺めるっていう、贅沢感」

なるほど、もちろんただそこに映像があればいいというわけではない、それが男心というもの。野暮な質問をしてしまったことを思わず反省しました……。

お気に入りのアイテム

コンクリートやステンレスなど、ともすれば無機質でつまらない印象になりそうな素材で構成された内装を、緑々とした植物を至るところに配置することで佐々木さんはうまく整えていました。

ただ、植物という存在は佐々木さんにとって、単なるインテリア以上の価値を持っています。

「前に暮らしていた家にも、植物をたくさん置いていました。たぶん“生き物”と一緒に過ごしたかったんでしょうね。ひとりでAmazonプライムビデオばっかり観てていいのかって、無意識に自問自答した結果かも(笑)」

友達が家に来ると、「これちょうだい!」と持って行ってしまうこともしばしばで、「いつまでも不揃いで完成しないまま」ともボヤく。

どの植物が一番お気に入りかと訊けば、テレビ脇に置かれた大きなエバーグリーンを示して、「断然、彼ですね!」。

「昼と夜とで顔が変わるのが気に入ってます。成長スピードも速くて、刻一刻と変化する。あの薄緑色の葉っぱは2日前くらいから出てきたのに、もう大きくなってます。ただ急成長する分、大量の葉が落ちる。今日掃除したのも、唯一その周りなんです」



植物はもちろんですが、バッグ、スニーカー、本、工具、DVD、サングラス、調理器具、と部屋を見渡せばモノが多すぎて、正直何から訊いていいやらわからなくなります。

そのくせ佐々木さん自身は、「そんなに、こだわりってないんですよね」なんて話すから、さらにわからなくなる。

「こだわりがあるっていうより、とにかくモノを買っちゃうんですよね。サングラスとか時計とか帽子、カバンも多い。だからこそ、こまごましたものをラフに収納できるように設計してもらいました」

そう、たしかにモノは多いのに、なぜか散らかって見えない不思議。そのあたりは「僕のセンスというより、住まいのプロの技」と、謙虚に教えてくれます。

近日公開予定の「リノベストーリー」で!

残念なところ

いくらこだわりつくった部屋ではあっても、実際暮らしてみないとわからないこともあります。

ステンレスにこだわって選んだキッチンは、無駄な凹凸もなく使いやすそうで、掃除も簡単なのではと思いきや、実は使いづらいそうです。

「システムキッチンの方が絶対にラクだと思います。すぐ傷がつくし、水場なのに水垢も残りやすい。言ってみれば、『紙でできた風呂桶』みたいな……。そういうレベルのミスマッチだと思います」

暮らしのアイデア

空間の切り替えは、さりげなく

寝室やリビングがゆるやかにつながる間取りには、ドアや仕切りが少ない。だからこそこだわったのが「空間の切り替え」でした。

「段差を設けたり、タイルを貼ったり。同じ空間のなかにあっても、自然と気持ちが切り替わるように。そうすることで空間にも暮らしにもメリハリが出ると思います」

たとえばキッチンの天井に設けられた化粧板が、そのひとつ。

トイレ、風呂、向かい合うそれぞれのドアの色を変えているのも、そのためです。

生活動線を意識して、合理性を


パンチングボードしかり、玄関からリビングに通じる壁にモノを提げられるようにしたのも、佐々木さんのアイデア。そのメリットは、バッグやサングラス、腕時計などを順番に身につけながら玄関に向かえる(または、外しながらリビングに向かえる)こと。

「収納のルールというのをあらかじめ決めるのではなくて、生活動線に沿ってモノを置いていくだけ。ぶっちゃけ、結果なんです」

なんでもないことのようにサラリと話しますが、「そういうのは、実家暮らしの頃からやっていた」という経験の裏付けがあるからこそ思いつくアイデアでしょう。

「ごちゃごちゃしがちなんですけど、とはいえ生活に邪魔な置き方はしていない。不便を抱える家にはしてないつもりですね。デザインのためになにもかも我慢すればいいとは思ってないので。ある種、合理性を持って暮らすようにしています」

部屋にこだわりたいけれど、あくまで“生活”。その辺のバランスの取り方が、巧みです。

これからの暮らし

物件購入と、リノベーションを同時におこない、ひとまず理想の“箱”は手に入れた佐々木さん。「ひとまず」と言ったのは、もちろんこれからがスタートだから。

「直近は、まずベランダをつくりたい。ベランダはなにもしてなくて、いまは仮で板を置いてるだけなんです。これから砂利を敷いて、植物やライトを置いて、昼からベランダでビール飲んだりしたいんですよね。

家具も、暮らすために一旦揃えただけなので、それをこれからイジイジしていきたい。希望は、早く彼女を作って、彼女と一緒にイジイジしていきたいですね。あ、そこが唯一の“こだわり”ですかね!(笑)」

断捨離やミニマリズムといった流行りの対岸にいる佐々木さん。たとえモノに溢れかえっていても住まいが整っているのは、空間にメリハリと合理性が存在するからなのでした。

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Photographed by Yutaro Yamaguchi

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