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「コーヒーで毎日に幸せを」ではない。新進気鋭のカフェ・オーナーの等身大の想い

2018/04/25 11:00 投稿

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「世はまさにカフェ戦国時代」と言ってしまっても過言ではありません。

そんな中、とりどりのカフェがひしめくここ東京で、2017年5月、渋谷区神泉町にオープンした「HEART’S LIGHT COFFEE(ハーツライトコーヒー)」。

その人気は日々、高まるばかり。常連客が行き交います。

そんなお店の精神は「常に新しいことに挑戦すること」。そこで、店主のひとりでもある、バリスタの八角(やすみ)さんに話を訊いてみました。

コーヒーもレコードも、みんなでシェアする

入り口のドアを開けると、まず目に飛び込んでくるのが大型のスピーカーとレコード。当然、体の芯まで響く心地よい音楽が流れています。

そして、店内奥に鎮座まします焙煎機の存在感。

聴覚と視覚に飛び込んでくる情報のインパクトにあっけに取られていると、「こんにちは!」と爽やかな声が。

「HEART’S LIGHT COFFEE」の店主・バリスタのひとりである八角(やすみ)さんです。

音楽を通じてコミュニケーション

同じ志を持った同年代の仲間3人で店を開いてから、もうすぐ1年。

大手コーヒーチェーンからコーヒーのキャリアをスタートした八角さんは、その後蔵前にあるコーヒースタンド、そしてあのブルーノートの系列店「カフェ イチマルヨンゴー(cafe 104.5)」で研鑽を積みました。

もともとレコードは趣味でよく聴いていたという八角さん。それでも、「カフェ イチマルヨンゴー」という、カフェ・バーに加え、音楽のある空間を提供する場所での経験が、「コーヒー+α」という今の店をしかるべく形づくったことは明らかでしょう。

カルチャーとの親和性が高いコーヒーと一緒に音楽を提供することを、八角さんたちは自然と決めたのでした。

「店内にレコードがあることで、お客さまとの話のきっかけも生まれます。

詳しい方は本当に詳しい世界なので、僕なんかはまだまだ未熟で、レコードのことはむしろお客さまから教わることがの方が多いんです」

コーヒー豆を200グラム買うとレコードを1枚プレゼントする、というサービスもユニーク。

はじめたきっかけは、「このペースでレコードが増えていくと、すぐに棚が埋まってしまうから」と、なるほどシンプルこの上ない。

そしてそこには同時に、「音楽とは、みんなでシェアするもの」という価値観もあったようです。

コーヒー好きはレコード好き?

「コーヒーとレコードって、似ています。コーヒーをドリップする行為も、レコードに針を落とす行為も、どちらも“わざわざ”という手間が必要ですよね。

『流します』っていうフローがある分、より音楽を楽しめる。コーヒーも一緒です。だからか、わりとコーヒー好きには、レコード好きが多いような気がします」

と、話に夢中になり、うっかりドリンクを注文することさえ忘れてしまっていました……。

オススメは「Banana Latte」

「Banana Latte」がおすすめということで、注文してみます。

エスプレッソは2種類から選べて、ひとつは日替わりのシングルオリジン、もうひとつはエスプレッソ専用の「LAYLA」という豆。

カカオを思わせるフレイバーがバナナシロップとの相性よしとのことで、「LAYLA」を選びました。

飲んでみると、甘いシロップの入ったエスプレッソドリンクですが、甘みがほどよく、エスプレッソの味を邪魔しません。

バナナの印象がしるし程度にやわらかく残るやさしい味わいにも癒されますね。

コーヒーは嫌なことがあった時にこそ飲む

「『コーヒーで毎日に幸せを』みたいなスタンスではないんです。僕のなかでコーヒーは、嫌なことがあったり疲れたりしたときに欲するもの。

だから、マイナスの気分をプラスマイナスゼロにできたらいいな、と。で、『“HEART’S LIGHT” COFFEE』」

そんな背伸びしない等身大の想いが、なるほど漂うコーヒーの香りよりもたしかにお客さんを惹き寄せるのでしょう。

毎日通う常連さんが非常に多いという事実も、さもありなん、と納得です。

日本に1台、トルコ製の焙煎機

さて、お話を聞きながらも強い存在感を放っていたのがこの焙煎機。

決して大きくはない店舗のスペースを割いてまで焙煎機を設置するのは、彼らにとっては必然でした。

「以前働いていたコーヒースタンドは焙煎所と距離があって、その分融通が利かないことも多かったんです。

コーヒーは僕たちの核なので、やはり常に品質のいい豆を提供できないとダメだっていう意識がありました」

そんなプロ意識に「常に新しいことに挑戦する」という信念が合わさった結果、それまで日本になかったトルコ製の焙煎機を導入することに。

その特長は、銅板で覆われたドラムによる蓄熱性の高さと、タッチパネルによる吸排気の細かい調整。そのふたつが相まることで、豆の個性をより引き出しやすいとのこと。

「日本に1台しかない焙煎機だったので、設置から操作まで、全部自分たちで細かく調べながら行いました。

苦労してようやく最初の豆が焼けたときは、思わず泣きそうになりましたよ(笑)」

お客さんとの親密な距離

「お客さんや周りのひとみんなに助けられてるなって、本当に日々感謝しかありません」

1周年を目前にして八角さんは振り返ります。

純粋な感謝しかないから、これからも、「続けていく」という単純で一番難しいことをまず目標にしているとのこと。

話を聞いている最中にも何名かお客さんがいらっしゃって、そのほとんどが常連のようでした。

そのうちの1人からはなにやら相談を受けていて、「うんうん。あとで詳しく聞かせてよ」なんて、まるで幼馴染同士といったトーンで話すのです。

八角さんをはじめとしたバリスタのみなさんの、そのおおらかでやわらかな空気が店内に漂っていて、常連さん、一見さん問わずやさしく包み込んでくれる。

”オンリーワン”にこだわりながら、コーヒーの力で「マイナスの気分をプラスマイナスゼロに」してくれる「HEART’S LIGHT COFFEE」。

でも、そうして「ゼロ」になった僕たちの心をさらに「プラス」にしてくれるのは、彼らの笑顔や言葉、醸すムードだったりするのかもしれません。

Photographed by Yutaro Yamaguchi

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