でも、人生の中で数少ない「引越し」という一大イベントにおいては、「確実に失敗したくない!」というのが本音です。
そこで今回は、“引越しのプロ”である「引越しオーガナイザー」の門野内絵理子さんに過去の「引越しの失敗談」をうかがいしました。準備に夢中になって意外と見落としがちなミスも、今のうちに頭に入れて、失敗しない「引越し」をしましょう。
引越しオーガナイザー; 門野内絵理子(もんのうちえりこ)
1978年生まれ 広島出身。引越し11回。9回までは失敗続きだった片付けられない主婦時代から、入居2日目で新居が片付く仕組みを創り上げ、引越しオーガナイザー;をスタート。育休ママ向けに、引越し整理収納サポート、企業セミナー、自宅収納見学会を行っている。http://hikkoshi-org.wixsite.com/home
内見では気付かなかった部屋付近の道路情報
引越しは「家の中」に意識が向きがちで、周辺環境の暮らしやすさを見落としがち。そのひとつが「道路」のこと。通勤道路でも通学路でも、日々使う道のチェックを忘れてしまうと、後々ストレスになってしまうことも……。
住んでみたら、道が狭くて通勤ストレス社会人になりたての20歳の頃、世田谷区の隣に位置する住宅街に引っ越した時の話です。
歩道も車道も狭い道に悩まされました。歩道は大人が1人歩くと向かいの人とすれ違うことができないほど狭く、自転車の時は車道を走るものの、車道も狭いために車が自転車を追い抜けず往生する道路でした。
歩道の狭さを1番ストレスに感じるのが雨の日。傘を差していると、電柱と塀の間に傘が挟まるのです。電柱を通り抜けるたびに傘を畳むか、車を確認しつつ車道と歩道の上り下りしながら、駅までの10分の道のりを進む……。
たかが10分されど10分。毎朝のこととなると、やはり道路事情はストレスの元なのです。
引越しの内見では、不動産担当の方が車で物件まで案内してくれることが多いので、毎日使う道を確認できないこともあるかもしれません。そんな時はGoogleストリートビューなどで、部屋の中だけだなく周辺道路も確認しておくことがオススメです。
家電付き物件の罠
エアコンが設置されていることが魅力で選んだ物件で、そのエアコンに悩まされることになった話です。
この部屋のエアコン、なんで押入れに送風しているの?築17年2DKハイツに引っ越した頃のこと。
内見の時は「家の奥の和室にエアコンがあるから、家の真ん中に向けて吹き出せば便利かも」くらいの認識でした。ところが、入居して気づくのです。そのエアコン取付け向きでは、向かいの押入れにしか当たらないことに。
部屋の間取りは、玄関→ダイニングキッチン→和室の並び。和室の奥に腰高の窓と押入れがあり、エアコンは窓を挟むかたちで、押入れの向かいに設置されていたのです。押入れとエアコンの間は生活スペースではなく人はいない場所。わざわざエアコンの真下に行って風に当たらなければ、恩恵にあずかることができない構造です。
夏は設定温度を18℃にしても、押入れだけが冷えてダイニングは猛暑。冬も28℃に設定しても和室すら温まらず。エアコンの真下の窓辺に座っていないと効果なし。光熱費ばかり高くなって快適さは得られないエアコンでした。
まさか、こんなことで暮らしの快適さに影響を受けるとは! 引越し前の物件選びは、間取や収納だけでなく、部屋の設備も使い方をイメージしてチェックすることが大切だな、と身をもって感じた引越しでした。
部屋に家具が入らない事件
家族で引っ越した築15年の3LDKマンション。そこで事件は起きました……。
予定していた場所に、タンスが入らない前の家と比べると廊下の床が高いなぁ……という印象がありましたが、特に気にとめることもなく、それぞれの部屋に予定した家具が入るか、部屋の中の採寸を済ませて準備万端での搬入でした。
しかし、いざ荷物を入れ始めると、タンスが予定していた洋間に入らないと言うではありませんか。廊下の床が高く天井までの間に隙間が取れなかったため、傾けたり方向転換させる可動域が確保できず入らないと。
結果、タンスは廊下を抜けた先にある和室へ配置することに。他の衣類は洋間なのにタンスだけ和室となったので、着替えのややこしさったらありません。
このことから、家具は設置場所だけでなく、部屋の扉や玄関の扉まで採寸することをオススメすることになったのでした。
引越しトラックに積まれてしまった大切なモノ
最後は、友人夫婦が教えてくれた話です。なんと、引越し業者さんが……。
梱包サービスさんが車の鍵の入ったコートを…新婚時代の引越しでのこと。引越し業者さんの梱包サービスを利用されたそうです。
食器から押入れの中からクローゼットの衣類まで、何でも梱包して運んでくれる便利なサービスです。荷物の詰め込まれたトラックを見送った後、ペットの猫ちゃんと一緒に自家用車で新居に向かう予定だったそう。
ところが、車に乗り込んでエンジンをかけようとすると……「車の鍵が無い!」。
「あー! コートのポケットの中だ!」。そうです、そのコートは引越しのトラックの中。慌てて引越しトラックに電話するも、すでに高速に乗ってしまい引き返すことは無理だと。
やむなく、車はひとまず置いて電車で移動することに。新居に荷物が届いてから、後日、車を引き取りに行ったそうです。近場の引越しだから可能でしたが、荷物が一泊する東京と大阪間のような遠距離の引越しだと、膨大な時間とお金のロスになります。
慌ただしく荷物や人が出入りする引越しは、最後のチェックをお忘れなく。
「これが自分だったら……」と考えるだけで、なんともやるせない気持ちがこみ上げてきます。引越しを控えているみなさんは、ぜひとも最後の最後まで気を抜かずに、万全な状態で引越しを実施してください!
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