東京から電車で1時間強、そこからバスでさらに20分弱。通勤に便利な場所とはいえないが、ここ葉山に魅せられて住まいをかまえる人は多い。今回取材する青木さんもそのひとりだ。海と山のちょうど中間あたり、もともと米軍ハウスだった平屋をリノベーションして暮らしている。
名前:青木一茂さん職業:都内のITベンチャー企業
場所:神奈川県三浦郡葉山町
面積:83㎡ 2LDK
購入金額:非公開
築年数:築49年
お気に入りの場所
住む前から購入を決めていたソファスペースリビングの窓の下にはTRUCK FURNITUREのソファが。風が通る広々としたスペースに、ゆったりと置かれている。雑誌や仕事関連の本を読んだりする、お気に入りのくつろぎスペースだ。
「引っ越すタイミングで購入したものですが、もともとこのソファを置くことを前提にリビングの設計を考えていました」
名作椅子と実家の椅子が肩を並べるダイニング優に6人は座れそうなダイニングテーブルもTRUCK FURNITUREのもの。週末になると友人たちが集まる青木邸は、このくらい大きなテーブルがあると便利そうだ。
ハンス J.ウェグナーのYチェアや天童木工の椅子にまぎれて、実家から持ってきた古いロッキングチェアが並ぶ。
靴や遊び道具を置く玄関土間玄関を入ると広めの土間スペースになっている。工務店にイメージを伝えて壁に付けてもらったという棚が便利そう。好きでつい買ってしまうというニューバランス1400も並ぶ。
「気に入ると同じアイテムを色違いで買ってしまうので、どうしても数が増えてしまうんです……。靴をたくさん置けるので、土間をつくってよかったですね。ただ、一応考えたつもりだったんですが、幅をもう少し狭くすればあと一段つくれたかな、と思っているところです」
この家に決めた理由
リノベーション前はだいぶ古かったこの物件だが、青木さんはピンときたという。
「ここ実は、更地になる予定だったんです。鎌倉、逗子、葉山などの物件を扱う不動産会社エンジョイワークスのWebサイトに、建物を取り壊す前提で土地のみが売りに出ていました。見に行ったら確かにかなり古かったんですが、広くて南向きだし、庭の木の感じもよかった。リノベーションしたらいい感じになるんじゃないかなと。不安もありましたが、直感を信じて決めてよかったです」
都内に通勤している青木さんだが、遠さは気にならないのだろうか?
「会社まで遠いのはわかっていたんですが、それほど気にしていませんでした。朝6時に出て家に帰るのは23時頃、そう聞くと大変そうに思うかもしれませんが慣れるものです。逗子駅からは始発で絶対に座れるので、通勤時間を有効活用しています。
家は遠くなったのに、東京に住んでいた時よりも人が家に遊びに来るようになりました。都内だと、家に行くというより外でごはんを食べようってなりますが、ここに住んでからは誘わなくても『週末行っていい?』みたいなことがよくあります」
リノベの過程は「リノベーションストーリー」にて。
残念なところ
使うと思ったけれど使わなかったものたち「リビングの電源は4つにしたんですが、実際はそんなに使わないので2つで足りたなと。2つならすっきりしたデザインのものがあったんですが……。
それと、玄関の電灯は自動点灯と常時点灯のスイッチがあるんですが、どちらかだけでよかったですね。自動点灯をオンにすると常時点灯もオンになるので。結局、朝出勤する時に点いて、帰宅するまでずっと点いてる……」
外部シャワーの排水が溜まる海から帰ってすぐに砂や海水を落せるように、葉山に建つ家には外部シャワーがついていることが多い。
「温水が出るシャワーを完備したんですけど、排水経路をとくに考えなかったので、水が溜まってしまって。庭に逃がせばよかったなと思います」
お気に入りのアイテム
引っ越し祝いでもらった壁掛け時計リビングダイニングの壁は、青木さんのアイデアで足場板が貼られ空間のアクセントになっている。部屋の雰囲気にぴったりのセイコーの壁掛け時計は、会社の同僚からの贈りもの。
「引っ越し祝いに何がほしいか聞かれたので、狙っていたこの時計をもらいました(笑)」
Matthew Allenのアート造作棚には、本や雑誌の他に雑貨やアートが飾られている。お気に入りは、サーフカルチャーとビーチカルチャーをルーツとしたグリーンルームギャラリーで購入したMatthew Allenの作品。他にも海をモチーフとしたアートが無造作に置かれている。
インフレータブルSUP休日に都内へ出ることはほとんどなくなったという青木さん。愛車のベスパで5分ほどで行ける海でSUPを楽しんでいる。
「車は売ってしまって移動はバイクなので、背負っていけるように収納できるインフレータブルタイプにしました。葉山の海は波が穏やかなので、サーフィンよりSUPに向いているんです」
暮らしのアイデア
造作棚を利用した見せる収納この家の扉付き収納はクローゼットくらいで、収納家具もほとんど置いていない。リノベーション時にイメージを伝えてつくってもらった造作棚を活用し、見せる収納を多用している。整頓しすぎずラフに収められているのが、この家のリラックスしたムードにマッチしている。
「基本的に欲しいものしか置いていないので、隠す必要がないというか、あまり隠すことを考えてないですね」
部屋と部屋のしきりはガラスでゆるやかに土間と室内、ダイニングと部屋のしきりには厚めのすりガラスを使用。ゆるく分けることで、空間が広く明るい印象になる。
徹底したカビ対策これは加湿器でなく除湿器。海の近くに住むなら必須アイテムで、常にフル稼働だという。
「ここに引っ越してきていちばん驚いたのが湿気です。一晩で12リットルたまっていることもあります」
これからの暮らし
葉山に引っ越してきて3年。青木さんは、都内への通勤が気にならないくらいこの家と葉山の雰囲気が気に入っている。都内に住んでいた時とは違い、“すぐに家に帰りたくなる”のだという。
「あとは庭に手を入れたいですね。住みはじめた頃から考えてるんですが、なかなか進まなくて。芝も一度やってみたんですが、雑草にやられて……」
野性的な雰囲気のいまの庭も素敵だが、手を入れることで窓から見える風景がまた変わりそう。海や山を身近に感じられるこんな素敵な家なら、通勤時間をかけてでも暮らしてみたい。
Photographed by Shinichiro Oroku
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