というわけで、大人も子どもも楽しめる絵本の紹介をしていきたいと思います。
第8回は、かこさとし作・絵『からすのパンやさん』です。
■カラスのパン屋さん騒動記
1973年から、長く愛されている絵本。
ストーリーはこんな風。
からすのまち、いずみがもりのからすのパンやさんのおうちに、4羽の赤ちゃんが生まれました。その体の色にちなんで、オモチちゃん、レモンちゃん、リンゴちゃん、チョコちゃんと名づけられました。おとうさんとおかあさんは一生懸命働きましたが、赤ちゃんが泣き出すと飛んでいってお世話をするため、パンは黒こげ、半焼き。そんなパンばかり作るので、お客さんが減って貧乏になりました。
やがて、売れないこげたパンや半焼きパンは、子どもたちのおやつになり、なんと、このおやつパンがからすの子ども達の間で評判になりました。おとうさんとおかあさんと子どもたちは、色々な形のパンを作り売り出すと、街中のカラスたちがやってきて、大行列の大人気になり、消防車やパトカーも出動し……。
■奇想天外な形のパンと個性豊かなカラスたち
なんといっても、この絵本の見どころは、色々な形のパンが紹介されているページ。おまめパン、テレビパン、のこぎりパン、ほんパン、かみなりパン、バイオリンパンなど、80種類以上のパンに、子どもたちは興味津々。大人も、こんなパンがあったらいいな、と見ていても楽しいです。
そして、このお話には、パンやさんの家族以外に、たくさんのカラスが登場するのですが、その表情がとても豊か。1羽ずつ丁寧に描かれていて、よく見ると、消防士さんのカラスやテレビ局のカラスなど、お仕事中のカラスをはじめ、ハチマキを巻いていたり、着物を着ていたり、ヘルメットをかぶっていたり、結婚式途中のご一行がいたりと、1羽1羽に、ストーリーを感じます。
また、消防車が出動するところで歌われる「火事だ、火事だ、大火事だ~」の部分は、リズムもよく、読み聞かせをすると、つい、合唱してしまいます。
■発見が尽きないロングセラー
パンやさんの家族が仲良く、力を合わせて、パンを大人気にするところ、おもしろい形のパン、色々な姿のカラスたち。何度読んでも、「あれ、このカラス、変な帽子かぶってるね」だとか「何してるんだろうね」と、発見が尽きません。
からすのパンやさんグッズはたくさん発売されていますし、『からすのパンやさんのパンをつくろう』なんて本も出版されていますので、絵本を読むにとどまらず、世界が広がっていきます。
言い回しなど、40年前の絵本になりますので、少し古いと感じるところもあるかもしれませんが、それでも、そういった部分も含めて、このカラスたちの街のできごとを眺めるのがおもしろいのです。
声に出して読んで楽しい、想像しながら、読み進めることができる、そんな1冊です。