口に入れたときのハイな気分、収集欲をかき立てるパッケージ、なんだったらメッセージ性。連載「スナック・タイム」では、文筆家・甲斐みのりさんが、男の空腹を満たすためだけではない「嗜好品」としての食べものを紹介。第9回は、丸中わさび店の「山そだち」。

コーヒーを砂糖とミルクなしで飲めたとき。初めてひとりで喫茶店に入ったり、誰かにご馳走してあげたとき。自分のために買う花。「今、おとなへの階段をあがった」と、気がついた瞬間、さっきよりさらにくっきり目の前の景色が輪郭を帯びて見え始めた。

ツンと鼻に抜けるわさびの辛味を恋しく思えたときもそうだ。実家暮らしをしていた頃は、寿司も刺身も家族中で私だけが当然のようにわさび抜き。風味を引き出し食欲を刺激する薬味の役目を理解したのは、二十歳を過ぎてからだった。

もなかに、富士山の湧き水が育んだわさび

私と同郷・静岡生まれの友人が、彼の実家近くの小山町で買ってきてくれたのが、すりおろし生わさびを白あんで包んだ、生わさび入りもなか「山そだち」。富士山の湧き水に恵まれた小山町と隣接する御殿場は、日本屈指のわさびの産地で、生わさびやわさび漬けなど、わさびを使った名物が多い。

冷やすと際立つ、あんこの甘さとわさびの辛味

先にも書いたように子どもの頃は、わさびの香りにうっとりすることもなかったけれど、今はすっかりわさびの虜。すりおろしたての生わさびを出す店があれば、それだけで通いたくなるほどだ。そんなわさび好きの私でも、このわさび入りもなかは初めての体験。冷蔵庫で冷やして食べるとより一層、あんこの甘さとわさびの辛味が際立って、それぞれの個性が手と手を取り合い妙味を醸す。

さすが、100年続く老舗わさび農家の味。明治30年頃、伊豆から移住してきた「丸中わさび店」の初代が、小山町で初めてわさび沢を開拓し、栽培でも食生活でも、地元にわさびが根付いていったそう。

よく知ったつもりの土地でも、まだ知らぬ味は色々ある。食べることは毎日必ず重ねる経験。もっと食べたい。もっと知りたい。

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文筆家・#甲斐みのり さんの連載「#スナックタイム」が #ROOMIE でスタートしました。第一回は、#高知 県民の #青春 の味 #マックのポップコーン #やっていく気持ち

ROOMIE(ルーミー)さん(@roomie.jp)がシェアした投稿 – 2017 5月 31 2:53午前 PDT

スナック・タイム」バックナンバー
大阪観光するなら、お土産にキャッチーなあいつ
りんごでしょうか、いいえ、マシュマロ
これはGIFにしたくなる味わいのパッケージだ

山そだち[丸中わさび店]

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