今から約150年以上前に暮らしていた人びとは、1年の季節を24分割にした「二十四節気」と呼ばれる区分けと、そこからさらに細分化された「七十二候」を暮らしに取り入れていた。72個の季節というと、だいたい5日に1つのペース。そのときの旬の食材を食べ、旬の花木を愛でる生活をし、自然の移り変わりとともに今よりずっと細分化された季節の移ろいを感じていたのだ。
七十二候の「意味」や旬の食材を知ることで、普段よりも敏感に季節の変化を意識できる。季節の移ろいを感じ、取り入れてみて、暮らしに深みをもたせよう。
前回の七十二候:7月19日は土用入り。うなぎでスタミナを|七十二候ダイアリー「鷹乃学習」
七十二候:桐始花結(きりはじめてはなをむすぶ)
7月22日~7月27日ごろ
四季:夏 二十四節気:大暑(たいしょ)
「桐」と聞いて思い浮かべるのは、桐箪笥に代表される木材。防湿・防虫効果に優れ、多湿な日本で人々の大切な衣類を守ってきた。日本の木材の中でもっとも軽い。
その桐の木が花を咲かせるのが初夏の頃。梢に淡い紫色の花を付け、実を結びはじめる。
二十四節気では「大暑」。字のとおり、1年でもっとも暑い時期がやってくる。
旬の食材
きゅうりみずみずしく爽やかな食感。存在そのものが涼し気なきゅうり。実際身体を冷やす効果もあるので、暑い日にぴったりの野菜だ。
ほとんどが水で栄養がないともいわれがちだが、そもそもほとんどの野菜は水分を90%程度含んでいる。なにもきゅうりだけが「水ばかり」なわけではない。むしろ淡色野菜の割にはカロテンやカリウム、ビタミン類なども含むバランスの良い野菜なのだ。
うに産卵期を控えた夏頃のものが、実入りがよく美味しい。日本人がうにを食べるようになったのは、なんと数千年も前のこと。縄文時代の遺跡や貝塚からうにの殻が見つかっている。
あのトゲトゲした殻の中に濃厚で美味しい実が入っていることは、今でこそ誰もが知る事実であるが、そんな昔にどういったきっかけで食することになったのか。最初に発見した人に感謝したい。
本日の一句
下宿屋の西日の部屋や夏休み高浜虚子
ちょうど学校が夏休みに入るのもこの時期。小・中・高は8月の下旬まで、大学にいたっては9月末までというところも少なくない。大人にも数年に一度でいいからそれくらい長い休みがいただけないものか…
この句は、夏休みで学生たちが故郷に帰省し、誰もいなくなった下宿屋の寂しさを詠んでいる。賃貸アパートでひとり暮らしをする学生など少なかった時代、下宿の大家たちは掃除でもしながら普段の騒がしさを懐かしんでいたのだろう。
次回は「土潤溽暑(つちうるおいてむしあつし)」。
illustrated by Kimiaki Yaegashi参考文献:白井明大(2012)『日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―』東邦出版.
Japanese pickles,japanese pickled cucumber via Shutterstock
Fish Ayu with Salt being Charcoal Broiled, Local Foods of Tochigi Prefecture in Japan via Shutterstock