今から約150年以上前に暮らしていた人びとは、1年の季節を24分割にした「二十四節気」と呼ばれる区分けと、そこからさらに細分化された「七十二候」を暮らしに取り入れていた。72個の季節というと、だいたい5日に1つのペース。そのときの旬の食材を食べ、旬の花木を愛でる生活をし、自然の移り変わりとともに今よりずっと細分化された季節の移ろいを感じていたのだ。
七十二候の「意味」や旬の食材を知ることで、普段よりも敏感に季節の変化を意識できる。季節の移ろいを感じ、取り入れてみて、暮らしに深みをもたせよう。
前回の七十二候:「菖蒲華」梅雨だからこそ映える美しさ
七十二候:半夏生(はんげしょうず)
7月1日~7月6日ごろ
四季:夏 二十四節気:夏至(げし)
今日から7月。一気に夏らしいイベントが増えることで季節を感じることも多い。
この時期に田畑などにひゅるっと生えはじめるのが、半夏(からすびしゃく)という多年草。地下茎の塊茎は半夏(はんげ)という生薬としても用いられる。
田植えを終わらせて束の間の休息をとる、農業の節目でもある。
旬の食材
オクラ特長は、あのネバネバ。その元になっているのは、コレステロール値や血糖値を下げる働きをもつペクチンと整腸作用などを持つムチンという成分。夏バテ予防にぴったりの食材だ。
形状がスラリとした女性の指に似ていることから「レディースフィンガー」とも呼ばれる。
はも「梅雨の雨を飲んでうまくなる」ともいわれ、梅雨が終わる7月に旬をむかえる。
京都や大阪ではスーパーにも普通に並ぶ庶民の味だが、関東では料理屋で食べる魚という印象。関東在住の人の中には、未だ食す機会がないという人も多い。
非常に生命力が強く、夏の炎天下でも内陸の京都まで生きたまま運ぶことができた数少ない魚。そのため、夏の京料理に欠かせない食材となった。
本日の一句
ゆくもまたかへるも祇園囃子の中橋本多佳子
毎年7月1日から京都で一ヶ月にわたり続く祇園祭。八坂神社の祭礼で日本三大祭のひとつとされる。はもがおいしい時期でもあるため、「はも祭り」と呼ばれることも。
いたるところで「コンチキチン」と祭り囃子が響く街を、心浮きたちながら歩く市民の様子がうかがえるー句。この音が聞こえはじめると、京都にも本格的な夏がやってくる。
次回は「温風至(おんぷういたる)」。
illustrated by Kimiaki Yaegashi参考文献:白井明大(2012)『日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―』東邦出版.
Farm fresh okra on wooden board, whole and sliced via Shutterstock
fresh conger-pike eel fish (daggertooth pike-conger, Indian pike conger, congresox talabonoides) on blue basket in morning market. via Shutterstock