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アートディレクターが目指す、家族のちょうどいい距離感(南青山)|みんなの部屋

2017/06/12 06:00 投稿

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人気連載「みんなの部屋」vol.70。部屋づくりのアイデア、お気に入りの家具やアイテムなどの紹介を通して、リアルでさまざまな「暮らしの在り方」にフォーカスする。

話題のショップやカフェが並ぶ南青山エリアでの暮らしに、憧れを抱く人は多いと思う。大山さん一家が暮らすのは、渋谷駅と表参道駅から徒歩15分ほどの場所にある、築36年のマンション。リノベーションの楽しさと魅力を体現した部屋は、家族との距離感がちょうどいい、遊び心溢れる空間だった。

名前:大山よしたかさん
職業:アートディレクター、プロダクトデザイナー
場所:東京都港区南青山
面積:85.35㎡
購入金額:非公開
築年数:築36年

子どもと過ごす書斎



まるでおもちゃ箱のように、ポップなアイテムが詰まった大山さんのワークスペース。リノベーションをする際、廊下の壁を取り払い、開放感ある書斎を家の中央に作った。IKEAのブランコ「SVAVA(スヴェーヴァ)」がぶら下がっていたり、本棚には絵本やおもちゃなど、お子さんのものと思われるアイテムがぎっしり。ブランコは息子さんの大のお気に入りだ。



息子さんが紙粘土で作った馬

「打ち合わせや撮影などで外出することも多いですが、なるべくここでデザインする日を設けています。僕が仕事をしている時に、後ろで息子が遊んでいたり、宿題をしていたりすることが多いですね。子ども部屋をあえて作らないことで、お互いの温度が感じられる空間が欲しくて作りました。

本棚は息子との共有スペースで、息子が作ったものや、僕がデザインしたものが置いてあります。この本棚を通じて対話をすることもあるんですよ。僕が好きな宇宙や飛行機のおもちゃで息子が遊んだり、収めた本を通してお互いが今どんなことに興味があることを知るツールにもなっています」

開放感があり、人が集まりやすいリビング



大きなソファは、マンション購入時に新調。シンプルでありながら計算しつくされた空間だ。備え付けの建具や間取りは、既存のものを生かしたという。

「バブル期に建てられたマンションらしく、購入時は建具や内装にかなり重厚感があって、ゴテゴテした印象だったんです。もともとの木の質感は残しつつ、壁紙を剥がして躯体部分をあえて出したり、いらないものを削ぎ落として『引き算リノベーション』をしました」

料理好きの奥様がこだわるダイニング・キッチン




リビングとひとつながりのダイニング・キッチンは、料理好きの奥様の希望に合わせてフルリノベーション。見るからに使い勝手のよさそうなワークトップには、パスタマシーンやエスプレッソマシーン、スチームオーブンといったハイスペック家電が並ぶ。

「インテリアを決めるのは僕が担当しましたが、キッチンはすべて妻に任せました。キッチンは妻にとっての聖域。それぞれが好きなようにデザインするパーツを決めることで、リノベーションは円滑に進むというのが持論です(笑)」

この家を選んだ理由

余っている土地がない南青山に、新築マンションはなかなか建たない。仮に建ったとしても、その価格は億を超えると予想される。この街で、なるべく広い家を探していた大山さんが選んだのは、中古マンションをリノベーションするということ。

「エリアを南青山にしたのは、小学校の入学を控えていた息子の生活環境を変えたくなかったからです。となると、仮に新築マンションが見つかったとしても予算が見合わない。リノベーションを前提に2、3ヶ月かけて中古マンション探しをはじめ、ようやく理想の物件を見つけました。新築では無理だったエリアも、中古マンションなら手が届くし、何より自分たちが暮らしやすい空間を作れることが楽しかったですね」

詳しいリノベーションの過程については「リノベーションストーリー」にて。

残念なところ

スイッチが変な場所にある

既存の空間を生かし、引き算をしながら理想の空間を作っていった大山さん。壁を取り払ったのは書斎のみだが、そこに思わぬ落とし穴があったようだ。

「壁を取り払ったことで、その中にあった配電が使えなくなったんです。その影響でスイッチの場所が一部ちょっと変で、部屋から遠い場所にあったりします。最初はちょっと不便かな? と感じましたが、住んでいるうちに慣れました(笑)。この家にとても満足しているので、残念なのはそのくらいですね」

お気に入りのアイテム

大好きなテクノロジーとおもちゃたち



飛行機のデザインにも携わる大山さん。もともとおもちゃとテクノロジーの組みわせが好きということで、書斎の本棚には、大山さんが趣味で集めた外国製のおもちゃやプラモデルなどが並ぶ。

フジドリームエアラインズ(FDA)の飛行機は、大山さんがデザインしたもの。

ブランディングを手伝っている、バーミキュラの炊飯器

「手前味噌ですが、自分が携わったアイテムにはやっぱり愛着があります。バーミキュラの炊飯器は、妻も気に入ってくれているみたいです」

ホームパーティーに対応する、可動式テーブル

モルタルで作ったカウンターを囲むように特注で作った、可動式テーブル。いろいろな形に配置できるので、家族の食事はもちろん、友人を招いたパーティーにも大活躍する。

壁一面のホワイトボード



「家で一番無駄なスペースは廊下だと思うので、なくしたかったものの1つですね。壁の大きなホワイトボードは、家族の伝言板や、子どものお絵かきスペースになっています」

暮らしのアイデア

見せるもの、隠すものにメリハリをつける



もともと収納スペースが充実していたこの物件。バブル期らしく、しっかりとした立派な設えだったため、そのまま生かしたという。リビングは、やんちゃ盛りの小学1年生の男の子がいるとは思えないほど、生活感を感じさせないのは、その収納力にあるようだ。

「収納量はかなり意識しましたね。おもちゃやゲームで遊んでも、遊び終わったら決まったスペースにしまう。そのスペースがきちんとあれば部屋はそんなに散らからないものです。反対に、書斎は見せることを意識したディスプレイにしています」

これからの暮らし

中古マンション購入のきっかけは、息子さんの小学校進学にくわえ、自身の仕事の独立だったという。

「住宅ローンを組むなら、サラリーマンのほうがは有利なので、独立前に購入を決意しました。独立をしたからには好きなことを、好きな人と仕事がしたいと思っています。独立した時、人を雇うことも考えたのですが、雇用関係はなんだか肌に合わなくて。

家族の関係もちょっとそれに似ていて、同じ空間に住んでいても自由でいいと思うんです。それぞれが好きなことを追求し、共有できる部分があればよくて。それは希薄な関係ではなく、尊重し合うということだと思います。この部屋はあえて仕切らないことで、それぞれが別々の場所にいても、お互いの体温が感じられる、ちょうどいい距離感なんです」

今、航空宇宙産業にも仕事の幅を広げている大山さん。壮大なプロジェクトは、心地よい家族の距離感がある、この場所から生まれるのかもしれない。

Photographed by Kenya Chiba

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