今から約150年以上前に暮らしていた人びとは、1年の季節を24分割にした「二十四節気」と呼ばれる区分けと、そこからさらに細分化された「七十二候」を暮らしに取り入れていた。72個の季節というと、だいたい5日に1つのペース。そのときの旬の食材を食べ、旬の花木を愛でる生活をし、自然の移り変わりとともに今よりずっと細分化された季節の移ろいを感じていたのだ。
七十二候の「意味」や旬の食材を知ることで、普段よりも敏感に季節の変化を意識できる。季節の移ろいを感じ、取り入れてみて、暮らしに深みをもたせよう。
前回の七十二候:「蟷螂生」網戸に張り付いたカマキリの卵が孵化
七十二候:腐草為蛍(ふそうほたるとなる)
6月10日~6月15日ごろ
四季:夏 二十四節気:芒種(ぼうしゅ)
そろそろ水辺に蛍が舞い始める季節。昔は、腐った草が蛍に生まれ変わると信じられていたことから、この名称が付いたという。
東京も梅雨入りし、ジメジメしてくるこの時期。「足立区生物園」やよみうりランド内の「聖地公園」など、東京でも数か所で蛍にまつわるイベントが開催される。
旬の食材
トマト年間通じて出回るトマトだが、夏に食べるものが一番おいしい。タキイ種苗が2016年に行ったアンケートでは、子ども・大人いずれも「好きな野菜」1位を獲得した。
フレッシュなまま食べるのも夏らしいが、スパイスで煮詰めるインド料理チャツネにするのもおすすめ。
スルメイカお酒に合い、焼いてもおいしい、日本人にとって古くから食されてきたイカ。特に「スルメイカ」は、誰でも一度は食べたことがあるくらい一般的な食べ物だ。
世界中で消費されるイカの約半分は日本での消費。そのくらい日本人はイカが好きだが、一番イカを好んで消費しているのは、「鯨」なんだとか。
本日の一句
かたまるや散るや蛍の川の上夏目漱石
夏の風物詩・蛍を確認できるスポットは、いまや減少してきている。この句が詠まれた明治の頃は、この時期、川沿いに多く集まっていたことがうかがえる。
また、蛍が日本で浸透してきたのは『日本書紀』が出された720年頃といわれる。里山保護などの活動も各地で行われているが、長く日本の夏の風景に寄り添ってきた蛍の住みやすい環境が増えていくことを期待したい。
次回は「梅子黄(うめのみきなり)」。
illustrated by Kimiaki Yaegashi参考文献:白井明大(2012)『日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―』東邦出版.
Tomatoes on plate image via Shutterstock
Cooking ingredient series japanese common squid image via Shutterstock