今から約150年以上前に暮らしていた人びとは、1年の季節を24分割にした「二十四節気」と呼ばれる区分けと、そこからさらに細分化された「七十二候」を暮らしに取り入れていた。72個の季節というと、だいたい5日に1つのペース。そのときの旬の食材を食べ、旬の花木を愛でる生活をし、自然の移り変わりとともに今よりずっと細分化された季節の移ろいを感じていたのだ。
七十二候の「意味」や旬の食材を知ることで、普段よりも敏感に季節の変化を意識できる。季節の移ろいを感じ、取り入れてみて、暮らしに深みをもたせよう。
前回の七十二候:「牡丹華」春最後の候には牡丹が開花する
七十二候:蛙始鳴(かえるはじめてなく)
5月5日~9日ごろ
四季:夏 二十四節気:立夏(りっか)
街のいたるところで蛙が鳴き始め、夏の訪れを感じさせる季節。夕暮れ時の田んぼ道で聞こえてくる蛙の鳴き声は、どこか風情がある。一方で、何を訴えるべく、そこまで大声で鳴いているのかとも考える。
芥川龍之介の寓話「蛙」では、池の蛙が大学教授のような、哲学的な議論を戦わせている様子が描かれている。読み進めると、蛇に食べられるという結末までも哲学的な解釈をする蛙。この時期、草むらや田んぼから聞こてくえる鳴き声は何を議論しているのか、想像してみても楽しい。
旬の食材
金目鯛煮付けにして食べるとおいしい、高級魚。名前に「鯛」と入っているが、マダイとは種類の異なる魚だ。
特に静岡県の伊豆下田では漁獲量が多く、毎年6月には「きんめ祭り」というイベントも開催されている。
ニンジン子どもの嫌いな食べ物としてよく登場するニンジン。
落語でたまに出てくる「ニンジン」は、「唐人参」という江戸時代に使用されていた薬用のニンジンを指していることが多い。
本日の一句
おそるべき 君等の乳房 夏来る西東三鬼
暑くなってきて、肌の露出が多くなってくる女性の姿を目の当たりにし「おそるべき 君等の乳房」と表現。2017年の今でも通ずる、男性の普遍的な部分が出ている一句である。
「おそるべき」を「畏るべき」と解釈される場合もある。下品な気持ちではなく、畏敬の念なのかもしれない。
ちなみに名前の「三鬼」は、「サンキュー」をもじったものだという。
次回は「蚯蚓出(みみずいずる)」。
illustrated by Kimiaki Yaegashi参考文献:白井明大(2012)『日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―』東邦出版.
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