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「自分が心地いいこと」を重視した、本屋さんのDIY術(世田谷区深沢)|みんなの部屋

2017/03/30 06:00 投稿

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人気連載「みんなの部屋」vol.63。部屋づくりのアイディア、お気に入りの家具やアイテムなどの紹介を通して、リアルでさまざまな「暮らしの在り方」にフォーカスする。

駒沢公園にほど近い、レトロなマンションの一角にある本屋「Snow Shoveling Books & Gallery」。オーナーの中村秀一さんは、同じマンション内の部屋を借り、住居として利用している。2カ月かけて自分でリフォームした空間には、中村さんならではの“心地よく暮らす”こだわりが詰まっていた。

名前:中村秀一さん
職業:本屋「Snow Shoveling Books & Gallery」オーナー
場所:東京都世田谷区深沢
面積:1LDK(元々は2DK) 30㎡程度
家賃:非公開
築年数:約60年

お気に入りの場所

建設当時のままの窓


中村さんが一番気に入っているのが、壁一面にわたる大きな窓。あえてカーテンはつけず、窓からの眺望を楽しんでいる。

「太陽の光がたっぷり差し込むので、気持ちいいんです。このあたりは1964年東京オリンピックで整備された街ですが、建てられた当時は富士山が見えたかもしれませんね」

DIYで造り付けしたダイニングテーブル


限られたスペースを有効利用しようと、DIYしたダイニングテーブル。WOODPROで古材の足場板を購入し、キッチンとリビングルームの間にある柱を囲むようにして取り付けた。本を収納する棚が付いているのがニクい。

ロッキングチェアを置いたリビングルーム


リビングにいるときは、いつもここに座っているという中村さん。他にソファもあるが、ロッキングチェアに座って本を読んだり、部屋に飾ったアートを眺めたりするのが、なにより落ち着くそう。

「リサイクルショップで見つけたのですが、カーペットの柄のような布地など、少しダサくて味のあるところが気に入っています(笑)」

この部屋に決めた理由

中村さんがこの部屋を借りたのは1年前。店舗にトイレがなく、イベント開催時や撮影で貸し出す際に不便だったことから、同じマンション内で空きが出たらすぐに知らせてくれるよう、不動産会社に頼んでおいたという。

通常なら不動産会社が傷んだ部分を修繕して次の借主に引き渡すが、自分でリフォームすることを交渉し、修繕費分を家賃からマイナスしてもらった。その結果、都心ではありえないほどのリーズナブルな家賃で借りることができている。

「最初は、店の水まわり機能のためだけに借りようとしていたのですが、せっかくなので有効活用しようと、自分好みにDIYすることにしたんです。実はマンションで暮らすのは初めてで。これまではずっと、住み心地がよい一軒家を借りていました。まだマンションにフィットしていない感じはしますが、ここでの暮らしも気に入っています」

残念なところ

リフォームだけした状態のバスルーム

唯一、以前の住人がリフォームしていたバスルーム。

「できれば黒のタイルを貼って、メタリックの蛇口に変えたりしたいのですが、そこまでの余力がなくて……そのまま使っています」

スイッチがないリビングルームの照明

「なぜかリビングにスイッチがなくて、こうやって電球を回して点灯してます(笑)。以前の住人は、リモコン式のものを使っていたのかもしれません」

お気に入りのアイテム

イラストレーター・江夏潤一さんによるキャンディボックス

リビングの棚に飾られているキャンディボックスは、イラストレーターの江夏(こうか)潤一さんによる一点物。鮮やかな色合いが魅力的。

10代の頃から愛用している、アウトドア用ガスバーナー


スウェーデンのオプティマス製のガスバーナーは、10代の頃から愛用。メンテナンスをしながら、大切に使い続けている。

「キャンプの時にこのストーブで火をおこし、コーヒーを入れると格別なんです」

大竹伸朗さんのユニークピース


アートに造詣が深い中村さん。家の中には様々なアーティストの作品が飾られている。リビングのソファに無造作に置かれているのは、“トルコ”の文字が印象的な、大竹伸朗さんのリングファイルの作品。限定250部の中の1点で、手書きのナンバーを記されている特別なもの。

アウトドアで活躍する「PEACE DOMESTIC OVEN」


満足げな表情

現在は製造終了している、日本製の直火型オーブン「PEACE DOMESTIC OVEN」は、このネーミングや色合いが大のお気に入りだという。

「これでグラタンを焼くと、愛情が込められるというか、すごくおいしいんです。キャンプに持っていけば話題の的ですし、見た目もすごく気に入っています」

暮らしのアイデア

とにかく“気分がいい”部屋であることを優先して、モノの配置を考える

床の張替えから壁や天井のペンキ塗り、テーブルや棚の製作など、リフォームにかかった期間は約2カ月。「カッコつけた部屋は落ち着かないし、とにかく自分が住んでいて気分がよいことを最優先しました」という中村さんの言葉どおり、居心地抜群の空間に仕上がっている。

例えば、寝室のベッドの位置。普通なら部屋の隅に寄せ、スペースを多くとろうと考えがちだが、中村さんは「部屋の真ん中で眠ったほうが気持ちいい」とベッドを部屋の中央に配置している。


リビングルームは、座っていることが多いロッキングチェアを中心に考え、視線の先にくるようにアート作品を配置している。壁ではなく、アート作品を床に置いて楽しむのも中村さん流で、視界に入りやすい窓の下にも置かれている。

「右を向けば好きなEdward Hopperの作品が眺められ、左を向けば窓から望む空と共にアート作品が眺められる。ここに座ったときに、どうしたら心地いい時間が過ごせるかを考えて、飾る場所を決めています」


玄関を入ってすぐに目に入る壁面には、安西水丸さんの色彩豊かな作品が。

「安西さんが大好きで、最近飼いはじめたネコの名前を“水丸”にしたくらいです(笑)」

これからの暮らし

中村さんはブックショップを始める前、グラフィックデザイナーとして働いていた。もともと本屋という空間が好きだったことから、2012年に「Snow Shoveling Books & Gallery」をスタートした。

「本屋にいると自分が何に興味があるのか、何が好きかという軸に気が付けますし、頭がよくなった気がするし(笑)。その軸を中心に自分の世界がインタラクティブに広がっていくと思っています。

10年後くらいには、僕は海外のどこかで暮らしていたいと考えていて、その時この部屋は、Airbnbなどで貸し出したいと考えてるんです。本好きな旅人が、ここに置いてある本や音楽、アートに触れてくれたら嬉しいですね」

番外編:DIY成功の秘訣は、目標とストーリーをはっきりさせること

中村さんがDIYを始める時に気をつけたことは、具体的な目標を決めることだという。

「『◯◯にある△△ホテルの部屋を目指したい』など、何を目指したいのか明確にしたほうがいいと思います。『××っぽい雰囲気にしたい』というのは、失敗しやすい気がしますね」

具体的な目標を設定したら、次に決めるのが「主役」。中村さんの場合は、ロッキングチェアを主役にリビングの家具やモノを配置した。自分が目指す世界のディテールを追求することが大切と言う中村さんが参考にしたのは、写真共有サービス・Pinterest。自分のイメージに近い部屋の画像を探し、その画像の何に惹かれるのかを追求して、イメージを膨らませていったそうだ。


DIY前の部屋の様子

リフォーム前は和室があり、いかにも“昭和に建てられたマンション”だった。




キッチンは既存の棚を活用したり、東急ハンズで購入した豆電気を取り付けたり、調味料を同じガラス容器に移し替えた。寝室の壁には、本棚と書き物ができる小さな机を、足場板古材を使って取り付け、トイレはメキシコの建築家ルイス・バラガン設計の建築をイメージした色にペインティング。本やレコード、雑貨などを飾るリビングルームの棚は、足場板古材と発泡スチロールのブロックを重ねてDIYしたもの。

家全体の完璧な統一感は、“まずイメージをきちんと固める”ことで生まれているようだ。


「Snow Shoveling Books & Gallery」は、御自宅と近しい雰囲気の素敵な本屋さん

Text by Rino Oguchi, Photographed by Kayoko Yamamoto

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