「タルマーリー」オーナーシェフの渡邊格さんと、販売や企画などを担当する女将の麻里子さんのご家族だ。
岡山、鳥取と移転し、こだわりを深めていく
photo:Kazue Kawase(YUKAI)
ともに東京出身のご夫妻。元々は千葉県いすみ市で開業したが、東日本大震災と福島第一原発事故の後、岡山県に移転。そこで天然麹菌の自家採取に成功してことをきっかけに「地域の天然菌×天然水×自然栽培原料」に対するこだわりを求め、さらに新規事業の野生酵母だけで発酵させるクラフトビール製造の実現を果たすため、鳥取へ移転してきた。
いま運営しているこの店舗は、できる限り自分たちでDIYして作り上げたという。
廃園後8年の保育園を自分たちの手で改装
元は、廃園になって8年という保育園。写真からも、長い間使われていなかった雰囲気が感じ取れる。
床を剥がし、土間を造る。剥がした床材は、壁に利用。
工夫してリメイクすることこそが、DIYの醍醐味だ。
乱石の貼り付けはセンスも必要。
だんだんと保育園の面影が消え、新たな姿を現し始める……。
照明の傘にペンキを塗るのは子供たちの仕事。その甲斐があって、かわいらしい照明が付いた廊下に。
壁もいい風合いが出ている。
photo:Kazue Kawase(YUKAI)
保育園の無機質だった廊下が、木のぬくもりを感じるカウンタースペースに変身!
統一感のあるライトも味わい深い印象を与えている。
カフェの入り口には、廃材を利用した看板。クラスの札をイメージさせ、ほんの少しだけ保育園の名残りを感じる。
既存の建物をうまく利用し、かわいらしい雰囲気を残しつつ完成したタルマーリーの外観。青々とした木々に囲まれ、元保育園だけあって建物の前には広い庭も。限りなく広がる自然を独り占めしているかのごとく、贅沢な空間が誕生した。
「今ここで、タルマーリーにしかつくれないパンとビール」
せっかくなので、こんなステキな空間で作られているパンやビール、カフェも紹介したい。
純粋培養菌を一切使用していないパン自然栽培し、自家製粉した小麦を使っているため、小麦粉、塩、酵母、水というシンプルな材料だけで、驚くほどのおいしさにでき上がるのだそう。
写真を見てるだけでいい香りが漂ってくるようだ。
野生の菌を自家培養して発酵させた酒種、レーズン酵母、ルヴァン、ビール酵母の4種類を使い分け、酵母や製法によって食感や味わいの違いが楽しめる。
水にも酵母にも、サーバーにもこだわり抜いたクラフトビール原料の大半を占める水は智頭町の天然水だけを使い、ビールの出来を左右する酵母は野生酵母のみで醸造したクラフトビール。副材料の大麦や蜂蜜、フルーツなどはなるべく近隣で採れる食材を使用するこだわり。クラフトビールならではの、いろんなタイプのビールを醸造しているが、カフェでは常時5種類のビールを提供している。
なんと、このビールサーバーもDIYしたのだとか。バーをしている私としては、ぜひとも作って欲しい代物だ。
カフェカフェは、新緑の頃の景色と同じ緑の壁で落ち着く空間。
ここで販売されているピザは、自家製ビール酵母を使ったピザ生地なのだそう。サンドイッチやスイーツ、スープなどもありメニューも豊富だ。
これからもこの場所で
タルマーリーが鳥取県智頭町に移転して来たことによって、ここでの自然栽培の普及活動が広がった結果、この地域の原料でパンやビールが作れるようになってきた。里山の恵みを最大限に活かした加工と、それを楽しむ場づくりが地域に人々の熱意に支えられることで、地域内の循環が実現されていく。
タルマーリー住所:鳥取県八頭郡智頭町大背214-1
TEL&FAX:0858-71-0106
定休日:火曜・水曜・木曜
営業時間:10時~16時ラストオーダー
※パンの販売は売り切れ次第終了
月曜はパン製造お休み、カフェは営業
この記事を執筆していく上で、どんどんタルマーリーの魅力に引き込まれていった。自分たちのことだけを考えるのではなく地域のことを考えた結果、みんなが幸せになれる。だから、地域の人たちも受け入れてくれたのだろう。みんなの協力があってこそ、美味しく楽しい場所が生まれた。
ぜひ一度行ってみたくなる場所だ。
[タルマーリー]