キッチンにあるその包丁、いつどこで手に入れたものだろうか。なんとなくずっと使っている。そんな人も多いかもしれない。

一年前まで私もそのひとりだった。そしてずっとキャベツの千切りが太かった。素人の料理の腕なんてそんなものだろうと思っていた。でも断言しよう、「料理の腕は包丁の質で変わる」と。ちゃんと選んだ包丁を使ったキャベツの千切りの切れ味、スピード、仕上がり、そして気分。全然違った。腕が原因だったのではない。包丁だったのだ。

「そういえば、包丁ときちんと向き合ったことないな……」少しでもそう思ったなら、合羽橋道具街へ。「釜浅商店」にMY包丁を見つけにいってみよう。

「良理道具」を扱うという老舗、釜浅商店とは?

初代熊澤巳之助が、前身である「熊沢鋳物店」を創業したのが明治41年。その後屋号を「釜浅商店」と改め、100年以上も合羽橋で続く老舗だ。そこで長年引き継がれてきた想いが、「良理道具(りょうりどうぐ)」というひとつの言葉に託されている。

良い道具には、良い理(ことわり)があります。
それは長い時間で培われた普遍的なかたち。
例えば庖丁の刃は繊維を断ち切るため
曲線を描きながら先へと鋭く尖ります。
良理道具には料理を美味しくするかたちがあります。
釜浅商店についてより)

中華包丁に鱧(はも)専用?こんなにもあった包丁の種類

釜浅商店は、プロの料理人が通う品揃え豊富な料理道具の専門店。ありとあらゆる用途の包丁が並ぶため、これは何用? と見ているだけでも楽しめるはずだ。

数ある包丁の一部だが、特別に紹介していこう。

和包丁

「片刃」で、繊維を傷つけず断面を美しく仕上げられるのが和包丁。用途によって、細かく使い分ける。


出刃、相出刃、身おろし:魚を捌く用。厚い刃が特長。


柳刃、タコ引、フグ引:刺身用。刃渡りが長いのは、一度で引き切れるように。


鎌型薄刃、東型薄刃、ムキモノ:野菜用。ただ切るだけでなく繊細に切る。


切付:寒天などを使って冷やし固めた、寄せもの・流しものを切り分ける時に。


鱧切:鱧専用。重さで小骨を切る。

洋包丁

「両刃」で、素早く均一に切ることができる。一般的に家庭で使われるのはこの洋包丁だ。


牛刀:名前は「牛刀」だが、野菜も切れる万能な1本。


三徳:「牛刀」と並ぶ万能選手。1本持つなら、まずはこれ。


骨すき・ガラすき:鶏肉や牛肉の解体に使われるため、先が鋭い。

番外編

一般的な家庭にはないような、見たことのない専門的な包丁にもお目にかかれる。


麵切:そば屋やうどん屋で見かけるアレだ。


中華包丁:中華料理はほぼこれ1本で済むらしい。

「MY包丁」を選ぶ方法

持って、切って、しっくりきた1本を

包丁を購入しようと訪れた釜浅商店で「どう選んだらいいですか」と正直に聞いてみたところ、「とにかく持って切る動作をしてみてください」とのアドバイス。

包丁の種類と予算をお店のスタッフに伝えると、まな板代わりの大きな台の上に何本か持ってきてくれる。トントンといつもの動作をしてみると、これかなという1本がわかるはずだ。刃や柄の素材などで変わってくる微妙な違いなども教えてくれるので、包丁のマメ知識も習得しながらお気に入りの1本を探すことができる。

職人への敬意を表すノーブランド

釜浅商店の包丁は、「無名品」。市販の包丁には刃もしくは柄に屋号などが入っているが、それがないのだ。

ただそれは、包丁がつくられる各工程で携わる多くの職人さんへの敬意の表れ。本来ならその1本をつくったすべての職人さんの名を刻みたい、そんな想いが無名という形になったのだ。

銘入れでMY包丁感アップ

※庖丁の種類により、銘入れ方法が変わります(手彫り、機械彫り)

釜浅商店では、購入した包丁に無料で名前を入れてくれる。これだという1本が決まったら、ぜひお願いしよう。自分の名前が入るだけで「MY包丁感」がグッと高まるはず。

最初の1本を買うなら「三徳」がおすすめだけれど、もしあなたが「毎日お刺身を食べる」というなら刺身用の「柳刃」を購入してもいいし、「中華を極めたい!」というなら「中華包丁」だっていいかもしれない。あなたのMY包丁なのだから。

見ているだけでも新しい発見のある合羽橋の専門店へ。MY包丁の相談に一度訪ねてみてはどうだろうか。

釜浅商店
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