弱冠19歳の時に『マイ・マザー』(2009)で衝撃の監督デビューを果たしたドランは、その後も生き急ぐかのように作品を発表し続け、『Mommy/マミー』(2014)では巨匠ジャン=リュック・ゴダールと並んでカンヌ国際映画祭審査員特別賞に輝いた。27歳にして既に6作目となる本作ではカンヌ国際映画祭グランプリを受賞するなど、まさに時代の寵児として注目されている。
主人公は自身に迫る死を告げるために、12年ぶりに帰郷したアラサーの人気作家ルイ。映画はルイと彼を迎える家族(母、兄、妹、義姉)が実家で過ごす一日を、家族ゆえの複雑な感情と共に映し出す。
これまでも母と子の関係を生々しく描いてきたドランだが、ジャン=リュック・ラガルスの戯曲を原作にした本作では、主人公とそれぞれの登場人物の会話を主軸に、家族の愛とは何なのか、その答えに迫っている。
ドランが原作を最初に手にしたのは20歳のころ。興味を持てずにしまい込んでいたが、時を経て改めて読んでみると、「嘘、秘密、表情、葛藤、沈黙のすべて」がそろっていることに気付き、映画化を決断した。その心境の変化について、「わからないけど、年齢かな。19、20歳と25歳の違い。仕事をしていると駆け足で人生を送るからかもね」と振り返っている。
すれ違う家族の姿という本作のテーマは、観る者の心に冷たい手で触れる。怒りや悲しみ、憎しみまで、家族がぶつけ合うむき出しの感情を他人事とは思えない人も少なくないだろう。主人公と同年代のドランだからこそ描けるリアルさと、昼下がりから夕方までの美しい光を帯びた、どこか幻想的な映像のコントラストにも注目。
『たかが世界の終わり』監督・脚本:グザヴィエ・ドラン
原作:ジャン=リュック・ラガルス
出演:ギャスパー・ウリエル、レア・セドゥ、マリオン・コティヤール、ヴァンサン・カッセル、ナタリー・バイ
配給:ギャガ
©Shayne Laverdiere, Sons of Manual
2017年2月11日より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて順次公開
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