というわけで、大人も子どもも楽しめる絵本の紹介をしていきたいと思います。第6回は、酒井駒子作・絵『よるくま』です。
酒井駒子さんのやさしいタッチの絵と親子の愛情を感じることができる絵本。眠る前に読みたい、子どもに読んであげたい、心がほっこりする1冊。ストーリーはこんな風。
男の子が眠る前、ベッドに入ってお母さんに「ママ、あのね、きのうのよるね、うんとよなかに かわいいこがきたんだよ」と話します。「あらそう。どんなこがきたのかな?」とお母さんが聞きます。それは、お母さんを探しにきたくまの子の「よるくま」でした。
男の子とよくるまは、よるくまのお母さんを一緒に探すため、お店屋さん、公園など、夜の街を探します。よるくまのおうちにも戻ってみたけれど、やっぱり、よるくまのお母さんはいません。とうとう、よるくまは泣き出してしまいました。そのとき、ながれぼしが流れ、「たすけて、ながれぼし」とお願いすると……。お母さんを見つけることができました。お母さんはお魚釣りのお仕事をしていたのでした。よるくまのお母さんは、「ああ、あったかいねぇ」とよるくまと男の子を抱っこして、うちに帰り、男の子とよるくまは安心して眠りました……。
お母さんを探すよるくまのお話を、男の子が語るかわいらしい作品です。
よるくまを助けてあげるやさしい気持ち、お母さんを探すよるくまの不安な気持ち、お母さんと会えたときの安心する気持ちが表現されていて、男の子とよるくまのことを、思わず、ぎゅっと抱きしめてあげたくなります。
親子の愛情を確認できるストーリーは、ワーキングママの応援本とも言えるかもしれません。よるくまを置いて、お仕事に出掛けるお母さんくま。でも、いつでも、よるくまのことを忘れたことはなく、子どもを抱っこすると「あたたかいねぇ」と喜びと愛情を感じられる瞬間が表現されています。その逆に、ワーキングママを持つ子どもたちに、ママは近くにいないけど、お仕事しているんだね、もうすぐ会えるね、ママもあなたといる時間は嬉しいんだよ、というメッセージを伝えてくれます。
最後は「おやすみ」のひとことで締めくくられており、この絵本を読んで、目を閉じ、眠るのにちょうどいいのです。
普段、酒井駒子さんが描く子どもの絵は、子どもと大人を併せ持つような何かを秘めた美しさがあります。よるくま以外にも、たくさんの著書や挿絵を担当された作品がありますし、絵本だけでなく、その美しく気品があり、どこか影の部分も秘めている、独特の世界を堪能してみるのもよいかもしれません。
今夜はほっこり、眠りましょう。
酒井駒子作・絵『よるくま』