れおまま 本の館

「介護現場は、なぜ辛いのか」

2016/05/18 10:54 投稿

コメント:2

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読了。著者は本岡類さん。本来は作家であるが、ご両親の介護をきっかけにヘルパー2級を取得し、「取材も兼ねて」非常勤として特養ホームで働いたという、その体験を綴っている。
私の周囲にも介護系の職員が多数おり、皆一様に「きつい」「給料安い」「辞めたい」と口にするし、実際離職した者もいる。そんな中で、私は「そんなに介護現場って大変なのか」と多少疑問符がつく感じで見ていた。
そんな折り、この現場体験記の本を見つけて、どれだけ大変なものか知りたくて購入した。

著者は週3回の非常勤勤務ではあるものの、時給は850円。働く内容は正規職員と同じである。

軽度〜重度はあるものの、入所者は全員「認知症」である。入浴介助、食事介助、見守りの他に職員がやることは山ほどある。
トイレ介助の途中で逃げ出し糞を垂れ流しながら歩く人、立ったままオムツ交換をせねばならない人、気に入らないことがあると「わざと」味噌汁を床にぶちまける人、ただ壁に向かってじーっとしている人etc...
職員の方も手が足りないから、どうしたって入所者のケアが疎かになったりもする。食事の誤配、「散歩に行きたい」と訴えられても叶えてやれないもどかしさ、デイサービスなどでは時間通りにお迎えに行くために猛スピードでの走行、疲れ切った後での長い会議...。職員もヘトヘトである。

ヘルパー資格も大手スクールで取得するとなると9万程度かかり、しかも「就職先斡旋」やら「丁寧な指導」などと謳っていても、それは入学者を多く入れるための策であると思っておいた方がいいらしい。「入ってみたらビックリ!」はよくあることだと。

給料についても本の中に多少書かれていた。某女性の初年度給与は、月額手取りで12万円・ボーナスなし。高級介護老人ホームのような施設では、22万ほどの給料を手にすることができる場合もあるらしいが、介護職は給与が昇給がさほどないという。先ほどの女性は、月5回の夜勤が入るようになって、やっと手取り13万になったとか。

それでいて慢性的に職員不足の施設と、働き場所を見つけられない人たちの間でしっかりと「需要と供給」が出来上がっていたり、施設を退職した者も結局は別の施設で働くという「介護職以外での働き場所が見つけられない」現象が起きるのだという。

著者は半年は務めたいと思っていたらしいが、上司との「介護」についてぶつかり、5ヶ月で退職することになる。

この本を読んでいて浮かんだのは、「戦争」「余裕のなさ」というイメージだった。これは介護施設がどうにか改善しようにも、根本の国の施策が変わらない限り、「3K」と呼ばれるこの職場の「辛さ」も改善されないのだろう。施設内で何かを改善しようとすると、そこに「責任」と「誰かへの負担」が生ずる。著者も何度も改善を訴えたが叶えられることはなかった。
入所者が悪い、職員が悪いという問題ではない。入所者は私たちの未来の姿なのだし、職員は現在子ども世代の未来の姿でもある。

職員のストレス、不満は、更に弱者である入所者へ向かう。どんなに理性を保とうとしても、時には声を荒げ、時には入所者の訴えを無視する。尿で汚れたままのシーツを交換もせずに放置する。
そして、そんな大戦争の特養ホームに、何百という入所待ちの待機老人がいるのだ。

互いに辛さを抱えながら介護し、介護されるなら、死ぬときはスパッと死にたいもんだと思った次第。

コメント

わるつ
No.1 (2016/05/18 12:18)
コメント、そして長文失礼します。

この問題、前々から話題に上がるのに
解決する予定が全く無いですね。

介護職の方…私の友人にもいますが
皆、口を揃えて言っています。
「人が足りない」「給料が安い」と。

これから65歳以上の方がどんどん増えていきます。
ただでさえ深刻な人手不足、
これ以上悪化しないことを祈るばかりです。
れお (著者)
No.2 (2016/05/19 11:21)
>>1
長文とは思わないが(苦笑)

この本を読むと、なぜ「辞めたい」と思うのかが本当によく分かります。
全く人手が足りない中で、意思疎通ができない人や子どもがえりしている人を始終「見守り」という名の「監視」をしなくてはならない。
オムツ交換の時に、口の中におしっこが飛び込んでくるなんていうのは日常茶飯事らしい。

介護現場だけでどうこうできる問題じゃない。政府がきちんと動かないとどうにもならない。
その政府を動かすためには、やはり私たちの「清き一票」が効果的なんだろうかね。
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