北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
■ラーメン活動月報(2月)
□告知スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
『老舗』北島秀一
ラーマガのレビューなどでも書いているが、ラーメンを食べる杯数が減ったこの1年ほどは、敢えて新店追っかけを減らして老舗再食に注力している。もともと自分の根っこがリピーターでありリピートそのものが楽しくもあるし、また昔食べた老舗が既に20年以上の時間を経ていつまで食べられるかと危惧する部分もある。そして、老舗を再食する事で自分がラーメンを食べて来た約30年間、ラーメンが、そして自分自身の感じ方がどう変わって来たかを再確認する意味もある。
実際「老舗」と言うのは不思議な物だと思う。ラーメンの味のインパクトやバランス、あるいは使っている素材などで言えば現在最先端のラーメンの多くに軍配が上がる筈だし、実際に例えば旨味要素が強すぎるとか、麺の風味はさほど強くないとか、今のラーメンが一生懸命改良を加えて来た「弱点」を抱えているにも関わらず食べるとウマイし、実際に今でも大勢のお客に支持されているケースも多い。
理由は幾つかあろうが、一番大きいのは「安心感」であろう。「いつものあそこに行けばいつものアレが食える」と言う安心感は、実は外食、特にいわゆるB級グルメではかなりの比重を占めると思う。ラーメンの場合、「シェフの気まぐれによる日替わりラーメン」よりも、やはり求められるのはいつもの味。そう考えると、長くその地で営業し、十年一日のように安定した(ある意味枯れた)ラーメンを出し続ける老舗は非常に貴重な存在だ。そしてその安心感に裏打ちされた「空気」こそが、何より重要なのかも知れない。ある老舗が、諸事情でそのまま移転しても、残念ながら移転先で支持されないケースも散見される事を思えば、料理も人も建物も、老舗を構築する重要な要素なのかも知れない。
これはまだ個人的な考察できちんと検証していないが、1995年前後の「インターネット革命」の前と後では、おそらく「老舗」のできあがり方は違っているのではないかと予測している。この当時創業したお店は生き残っていればそろそろ20年。競争の激しいこの業界ではとっくに「老舗」と呼ばれていいように思うが、例えば「青葉」「武蔵」「くじら軒」と、「ホープ軒」「春木屋」「大勝軒」などでは、単に営業年数の差だけではない違いがどこかにあるように思う。「インターネット後」のお店が今後本当の意味で老舗になるのか、実は自分にとってかなり楽しみなテーマだったりするのだ。【ラーマガ016号(2014.3)より転載】
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は今年2月、錦糸町に移転オープンした新店「麺屋中川會」の「濃厚魚介つけめん」を山路と山本が食べて、語ります。
「濃厚魚介つけめん」800円