北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
■異論激論
(山路力也/山本剛志/小林孝充)
□告知スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
「で、年越しに何を食べるかだが。」山路力也
あと十日もすれば2014年も終わってしまう。毎年この時期が来ると感じることだが、本当に一年が経つのが早いこと。「光陰矢の如し」とは良く言ったものだと思う。
今年はレギュラーの雑誌連載や新聞連載などの紙媒体に、テレビやインターネットプログラムなど映像媒体も多々あったが、ウェブでの原稿執筆や情報発信の仕事が多かった。逆に書籍やラーメンムックなどの仕事は一切しなかった。元々インターネットのラーメンサイトから世に出て来た私とすれば、古巣へ戻って来たような感覚もなくはないのだが、やはり世の中の紙媒体へのニーズが落ち込んでいることを体感する。
今年は毎年出版されている著名ラーメン評論家各氏のガイド本が一冊も出なかった年だ。落ち着いて考えたらこの十数年で初めてのことではなかったか。しかしある意味それは当然とも言えて、これまでのラーメンムックやラーメン本を手にした時、なんだか似た様なものばかりが並んでいて、作り手としての矜持に欠けるものが多かったような気がするのは、私が作り手側にいるからだというわけではないだろう。消費者もバカではないわけで、スマートフォンでちょっと調べれば出て来るような情報ばかりのラーメン本にお金は使わない。であるならば、「ラーメンWalker」なり「TRY」が手元にあればもう十分過ぎる時代になってしまったのだ。
そんな紙が売れなくなった今の時代、主戦場を紙からウェブに移して情報発信をしていくのかと問われれば、私の答えは「No」である。生まれもっての天の邪鬼な性格である上に、私はウェブから出て来た人間ではあるが、元来本や雑誌などいつまでも手元に残る紙媒体が好きなのだ。そしてラーメン本が売れなくなった理由は、もちろんスマートフォンの普及なども大きいとは思うが、その本の内容そのものが今の時代やニーズに合致していないからだと考えているのだ。簡単にいえば、消費者が買いたいと思えるような本やムックがないから売れないのだ。
話は少し変わるが、私の初の書籍である「ラーメンマップ千葉」を世に出してくれて、その後も私のアイディアや企画を形にしてくれてきた出版社が今年なくなってしまった。自分の非力さを悔いると共に、私に声をかけてくれたその出版社には感謝の気持ちでいっぱいである。インターネット全盛の今の時代であっても、この出版社のように紙媒体にこだわり続けて散っていった会社は決して少なくない。しかし、今もなお闘っている出版社はまだまだある。
そこで私は来年に向けて、敢えて紙媒体で新しい仕掛けをいくつか考えている。書籍や雑誌がまだまだやれることはあるはずだ。インターネットには決して真似の出来ない、書籍や雑誌でなければ出来ない情報発信の形に真剣に取り組もうと思っている。もちろんウェブでの情報発信も継続していくが、来年は紙媒体で今のネット全盛の時代に闘いを挑みたいと考えている。
と、来年に向けての秘かな決意を語ったところで、重要なのは大晦日に何を食べるかである。2001年より「年越しラーメン」の普及を掲げて、毎年大晦日にラーメンイベントを十年間開催して来た私が言うのもなんだが、大晦日はラーメンではなくてやはり日本蕎麦でしょう?ラーメン好きであっても、江戸時代から続く日本の文化も大切にしたいものだ。やはり冷たいせいろではなく、温かい汁蕎麦がいいな。復活した神田の薮にでも買いに行こうかな。
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は12月11日にリニューアルオープンした『御徒町らーめん横丁』の中から『チラナイサクラ』の「中華そば」を山路と山本が食べて、語ります。
「中華そば」750円