北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
東京 大八車@桜新町「中濃にぼし麺」
■クロスコラム
■告知/スケジュール
□編集後記
■巻頭コラム
「全日本・食サミット」山本剛志
2012年、日本の食と食文化の担い手である料理人を中心に、日本にあるオールジャンルの食文化発展などを目的に「全日本・食学会」が設立された。同学会では2013年度に「だし」をテーマに、日本料理の「だし」だけでなく、各国料理の基本にあたる液体を研究対象にしてきた。この6月にその集大成としての「第1回全日本・食サミット」が京都で開催されたので訪問し、3つのセミナーを受講した。
最初は大阪うどんの老舗「道頓堀今井」と、讃岐うどんを大阪に持ち込んだ「釜たけうどん」による「うどんとだしの相性」。「今井」は、サバ節やウルメ節、昆布をメインにした濃い「だし」が主役、逆に「釜たけ」は麺ありきで、そこに負けない為に「だし」には当初イリコを入れていた。その麺とだしを入れ替えて印象が大きく変わる事を、実食で確認した。
次に、大阪のコナモンと「だし文化」の関連について。こちらは冒頭しか受講できなかったが、千利休にルーツを持つお好み焼きを、粉を溶く「だし」から細かく、昆布に入れる水の違いから解説された。
で、最後はラーメン。龍旗信店主の松原氏が、日本のラーメンのだしを「スープ+たれ+香味油」と定義。世界に広がるラーメン店の状況を説明。現在ラーメン専門店が少ない中東でも、可能性があるのではないかと提案した。松原氏がロンドンやドバイなど海外で作ったラーメンを、会場の専門学校生が作り、受講者が試食した。
豚を使わず鶏とムール貝で作った「鶏白湯ラーメン」は想像していたが、味噌・昆布・椎茸・野菜に、イギリスで入手した酵母「マーマイト」を活用した「ビーガンハラル味噌ラーメン」には、独自の発想と完成度の高さに驚いた。最後に提供された「珈琲冷麺」はデザートっぽいものかと思っていたら、鶏ベースのスープにコーヒーの香りが乗りながら、一体化された冷やしラーメンにまとめられている。
フレンチの三國氏や中華の脇屋氏といった著名な料理人の中に、ラーメン職人が並んでいる事は感慨深い。しかし、松原氏の思いはそこで留まるものではなく、「調理師専門学校に今はない『ラーメン専攻』があってもいいのではないか」と、熱く語ってくれた。
今号から3号に亘り掲載する「拉麺人インタビュー」に、松原氏に登場していただいた。「海外でラーメンを作る理由」は、30号で掲載予定なので、そちらを是非ご覧ください。
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は昭和24年創業、東京を代表する老舗店『中華そば春木屋 荻窪本店』の「中華そば」を三人が食べて、語ります。
「中華そば」800円