北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
桂花ラーメン 東口駅前店@新宿「太肉麺」
■クロスコラム
■告知/スケジュール
□編集後記
■巻頭コラム
「ラーメンとかき氷」山路力也
こう見えて無類のかき氷好きの私。雑誌でも何度もかき氷の特集を企画したり、色々なお店の取材もさせて頂いたことがあるのだが、その時にかき氷の奥深い世界に触れてからというもの、ますます面白く感じるようになってきた。そこにきてここ数年のかき氷ブームもあって、新店が続々と登場してラーメンなみに追いかけるような状態になっている。
かき氷の面白さや奥深さをかき氷に興味が無い人に伝えるのはとても難しい。しかしラーメン好きの方に伝えるのは比較的簡単だ。皆さんがラーメンに感じる面白さや楽しさのポイント、それをそのままかき氷に置き換えてみて欲しい。それがかき氷の魅力そのものなのだ。
かき氷は氷とシロップの相性が重要で、氷だけが良くてもダメだしシロップだけが美味しくてもダメ。氷も純氷と天然氷で味が違うし、天然氷でも氷室によって異なる。さらに削り方にも色々あるし、削る機械にも種類がある。シロップもすべて天然素材にこだわる店もあれば、既製品を使ったり混ぜるケースもある。その組み合わせは無限大で、その組み合わせは店主さんの思い一つで決まる。700円〜1,000円という価格帯はカキゴオラーからすれば当たり前の価格だが、かき氷に思い入れの無い人からすれば「かき氷はもっと安い食べ物」と思われている…。どうです、どこかで聞いた様な話でしょう?
食べ手に目を転じてみれば、カキゴオラーと呼ばれるかき氷好きは常に情報交換をしており、旬の素材を使った限定かき氷を求めては列を成し、新しい店が出来たと聞けば我先にと足を運び、店内で連食をし、自分のブログやSNSで俄評論家となりかき氷について熱く語る。カキゴオラーの中には数多く食べている影響力のあるカキゴオリストがいて、かき氷の専門ブログを開設したり本を出したりしている。さらに毎年「かきコレ」というかき氷イベントがあり、人気かき氷店が一同に会してカキゴオラーはそのかき氷を食べに集まる。かき氷に思い入れの無い人から「毎日かき氷食べていて飽きないの?」「一日3杯もかき氷食べるの?」「行列に並んでまでかき氷食べるの?」「冬なのにかき氷食べるの?」などと言われてしまう…。どうです、どれも思い当たるような話ばかりでしょう?
構造的にあまりにも似ているラーメンとかき氷の文化。ラーメン店主がかき氷に魅了されるのも当然で、「ねいろ屋」「KABOちゃん」などはラーメン好きなら誰もが知っている店だが、かき氷好きのあいだでも知らなければモグリと言われるほどの人気店。夏場などはラーメン好きとかき氷好きが列に混在していたりもする。その流れを受けて、今年いくつかの人気ラーメン店がかき氷をメニューに並べるべく準備中とも聞く。
しかし、かき氷はラーメン同様に簡単そうに見えて実に奥が深い世界。素人が片手間でやろうとすると痛い目に遭う。氷を削ってシロップをかければかき氷らしいものは出来るが、それはせいぜい祭りの縁日レベルでしかない。ならばどうすればかき氷は素人のラーメン店主が美味しいかき氷を作れるのか? これも答えは簡単、ラーメンに置き換えてみればいいだけのことだ。素人が美味しいラーメンを作るには何が必要か。食材や機器の扱い方、試行錯誤、経験、食べ歩き、オペレーション、そして何よりもラーメンを好きだという思いではなかろうか。かき氷もまったく同じだ。
かき氷専門店の方数名にに「どうしたら素人が美味しいかき氷を作れるようになりますか?」と尋ねた時の答え。「まずはどれだけ削ったかですよね。私は三年間毎日削っていてもいまだに理想にたどり着けていません」「やっぱりどれだけかき氷が好きか、愛があるかじゃないですか?」ね、やっぱりラーメンと同じでしょ?
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は6月25日、新横浜ラーメン博物館に期間限定店としてオープンした『らーめん無垢 ツヴァイテ』の「無垢ツヴァイテラーメン」を三人が食べて、語ります。
「無垢ツヴァイテラーメン」1,200円