北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
■連載コラム(第34回)
『ラーメンの憂鬱』〜学ばない人たち(山路力也)
『教養としてのラーメン』〜戦後ラーメン史(9)~96年組が広げたラーメンの世界~(山本剛志)
□告知/スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
『一般人とマニアの温度差』北島秀一
少し前、夕刻の池袋を通った際に、「無敵家」に長蛇の列が出来ているのを目撃した。いやもちろんこのお店が常に行列のある人気店なのは知っていたが、この時は夕食時に近いとは言え30人以上の並び。思わず帰宅してから知り合いらに「今、無敵家さんってこのくらい普通に並ぶの?」と確認してしまった。回答は「うん大体そんな感じ」で、この日が特に多いわけではなさそうだった。
そして「無敵家」と言えば、反面マニアやブロガーからは特に評価は受けていないお店でもある。ブログでの記事などもあまり見ないし、マスコミなどでも「行列店」「人気店」と紹介はされても、評論家などが選ぶ場合はまず出てはこない。
どのような世界でも、マニア層と一般層の乖離はよくある事だ。様々なお店を食べ続けて行くと、「より普通な物」では満足は行かず、「より変わった物」「より個性的な物」を求めて行く。それ自体は特に悪くはないが、そこにマニア独特の妙な特権意識が混ざる場合がまれにあり、そうなると「あんな店に行列が出来るとかどうかしてる」などと、実に恥ずかしい事を言い出すようになる。
まあ、これがマニアであるなら自分が食べたいものを好きに食べ、世間から冷笑されない範囲で個人の責任で発言すれば良いと思うが、問題は我々である。もともとラーメンについて今マスコミで発言している「評論家」の多くは食べ手のマニア上がり。提供側の経験値を持つ人間もいるにはいるが、少数だ。つまり、常に自制と自省を持ってラーメンに接していないと、先述のような恥ずかしい思考に陥る危険性も増えてくる。結果的に「世間の大多数が求めていない情報」ばかりを発信しはじめないよう、本当に気をつけなきゃと思う。
マニアックな世界での今の大きなラーメントレンドと言えば「清湯」と「煮干し」あたりだろうと思うが、それが世間の求めるラーメンに本当に合致しているのかどうか。あるいは、合致していない事を充分承知の上で、「なぜ今このラーメンを勧めるのか」の理由付けを充分に考えておかないと、ただのマニアの独りよがりになってしまう。「評論家」を続けていく上で、私が最も気をつけなきゃなと思っている事を再認識する事になった。(ラーマガ025号より転載)
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は新横浜ラーメン博物館に3月1日オープンした『らーめん味楽 利尻島』の「焼き醤油らーめん」を、山路と山本が食べて、語ります。