北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
■ラーメン活動月報(2月)
□告知/スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
『ラーメンは採点競技じゃない』山本剛志
私が普段聞いているラジオ番組「東京ポッド許可局」で、面白い論が展開されていた。バスケットボールや野球、お笑いの世界の変革について触れ、技術の進歩が才能の差を埋め、それを飛び越える新たな才能によって、また新しい世界が作られるという話だった。これはラーメンの世界でも言える事で、「豚骨魚介」や「鶏白湯」など、それまでになかったラーメンが話題を集めると、それを再現する技術が作られ、多くのお店で提供される事になる。その広がりを、食べ手の側が「マタオマ系」と呼んでいるのではないだろうか。
そのラジオ番組の中でもう一つ、気になる指摘があった「M-1グランプリ以降、お笑いの質が変わった」というものである。本来採点競技ではない「お笑い」が、その場で審査される事により、笑いそのものよりもキャラクターで笑いを取っていく時代になったという指摘である。これもラーメン界に対する重要な指摘を含んでいると感じた。
ラーメンに限らず、飲食業はそもそも採点されるものではなく、お客を全力でもてなし、料理を提供するものだと思う(本来はその姿こそが「一期一会」を意味するもので、食べ手の側から「一期一会」を使う事には違和感を感じる)。2000年頃に隆盛を極めた「個人が作るラーメンのホームページ」の中には、食べたラーメンを採点しているものもあったが、それはその人の「点数」でしかなかった。それを大きく変えたのは、2005年にサービス開始した「食べログ」である。レビュワーの点数を総合して点数化する事によって、飲食業が「採点競技」へと変貌していった。あるラーメンを2人が食べ、一人が「100点」、もう一人が「40点」と評したからといって、そのラーメンが「70点」になる事には違和感がある。食べログ側もそれを理解していて、個別の採点を独自のロジックで点数に変換しているわけだが、そのロジックが公開されていない事で、更に不信感を高めているケースも見受けられる。
ラーメンが採点競技だと思う人が増えれば増える程、流行をトレースする技術に長けたラーメン店が「名店」と評価される状況になるかもしれないが、私はその立場には立たず、ラーメンの多様性を支えているラーメン店を語っていきたいと思う。
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は昨年12月にオープンした「自家製麺 啜乱会」の「らーめん醤油 清」を山路と山本が食べて、語ります。
「らーめん醤油 清(きよい)」850円
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