ラーメンマガジン「ラーマガ」

ラーメンレビュー 山本増刊38号

2016/11/26 14:00 投稿

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  • 山本剛志のら~マニア共和国

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■「ラーマガ」本誌に載せきれなかったレビューを掲載する「ラーメンレビュー増刊号」です

 「ラーマガ」本誌では、各号で7件の個別レビューを掲載しています。遠征や連食などで、そこに収まらない私のレビューを、随時「ら~マニア共和国」で掲載します。

 今回は今週末限定の「金乃武蔵」をはじめ、期間限定品を計5軒レビュー。全編を無料公開です。ラーマガ本誌と合わせてお楽しみください。

□目次

1.「金乃武蔵」レビュー

 ・麺屋武蔵神山@神田

2.期間限定ラーメンレビュー


 ・食堂七彩@都立家政
 ・マタドール@北千住
 ・魚露温麺凪@新宿
 ・厳哲@早稲田


1.「金乃武蔵」レビュー
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【麺屋武蔵二天@池袋】
「金乃薬膳ら~麺」2,160円
※11/24(木)~11/27(日)、各日10食限定

 麺屋武蔵の20周年を記念し、毎月各店舗で販売する「金乃武蔵」シリーズの第11弾。毎月様々な食材を使って新しい取り組みを見せているが、今回は麺屋武蔵二天から、「薬膳」をテーマにした一杯が登場。

 「五臓六腑に染みわたる」という表現を使うが、その五臓六腑によいとされている食材・薬草を集めて一杯を構成。今回は薬膳メニュー開発を手掛ける「株式会社 五七」の協力も得たもの。

 スープは鼈(スッポン)を丸ごと一匹使ったもの。これまでも「スッポンラーメン」を食べた事はあるが、それらとは一線を画す奥深いもの。最大の特徴は、牛豚鶏だけでなく、金華ハムを使ってベースのスープを取っている事。そこに鼈や冬虫夏草・鹿角霊芝・朝鮮人参といった薬膳の食材を加えて鍋ごと蒸したもの。ブレンダーを使って半濁のスープに仕上げている。このスープが唇に清冽さを、舌に滑らかさを、そして内臓に悦びを与えてくれる。麺にも冬虫夏草の粉末を練り込み、茹で湯にもそのエキスを加えていて、啜るほどに薬膳の香りが広がっていく。

 具では鼈の身を団子状にした揚げものがメイン。揚げ物が売りの二天ならでは。肉を叩いて骨を外しているので、ストレスなく食べられるのが嬉しい。そこに、鼈の皮の部分の湯引きが乗る。

 ほんのりと内臓から温まる一杯は、薬膳の効果を心の底から実感させてくれる。

食材の 魅力一杯 薫らせる


麺屋武蔵 二天
東京都豊島区東池袋1-2-4
各線「池袋」駅から徒歩3分


2.期間限定ラーメンレビュー
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【食堂七彩@都立家政】
「味噌らーめん 能代ver.」820円
※期間限定

 八丁堀の「麺や七彩」が話題を集めているが、その出発店にあたるのが都立家政の「食堂七彩」。こちらでも細かいスパンで限定メニューを登場させているが、今回の限定は「能代」の二文字が気になった。このメニュー、これまでも何度か提供していたようだがタイミングが合わなかったので、この機会に訪問。昨年現在のこの店では、東京の味噌「江戸甘」を使った味噌ラーメンを冬季限定メニューで販売しているが、こちらは能代で平日昼のみ営業ながら行列必至の名店「十八番」のインスパイアだというから驚いた。

 スープはじんわりとした口当たりに、十八番よりもやや力強さを感じる味噌ダレが主張している。スープの底に一味唐辛子や黒胡椒が残っているあたりが、十八番の作り方を彷彿とさせる。そして、酸味の正体は無添加の瀬戸内レモン。味噌に負けずに爽やかさをプラスしていて、その欠片が乗っているので絞る事で酸味をプラスできる。具にはチャーシューと海苔、柔らかくして味付けも加えられたメンマがポイント。ナッツの欠片が乗っているのも十八番のスタイル。地方で味を守り続けている老舗のスタイルを継承しているが、そのスタイル自体が今でも新しい。麺は「稲庭中華麺」をしっかり茹でていて、もちろん十八番の麺とは異なるのだが、その滑らかさがスープに馴染んでいる。無添加のレモンがなくなり次第終了との事なので、この機会を逃さずに食べてほしい。

北の風 味噌を育み 麺を生む

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食堂 七彩
東京都中野区鷺宮3-1-12
西武新宿線「都立家政」駅から徒歩2分


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【マタドール@北千住】
「羅臼と鮭節のひやあつ」1,200円
※12/20まで、昼夜各10食限定

 「新小麦麺スタンプラリー」という企画が始まっている。支那そばや創業者である佐野実氏の足跡を追って、ラーメン店主らが夏にその食材を学んできたとの事で、今回のコラボはその成果を限定ラーメンの形にしたものだという。その参加店のひとつ、マタドールの一杯を試食させていただく機会をいただいたので食べてきました。

 「春よ恋」の新小麦を98%、「ロイヤルストーン」と「美彩粉」を1%ずつブレンドした中細麺。麺をしっかり茹でて平ザルで上げた後、一度締めてから羅臼昆布と鮭節を使ったスープの中へ入れた「ひやあつ」。この食べ方はスープの温度を下げてしまう課題がある一方で、麺とスープの素性を明らかにする食べ方でもある。スープを熱めにして丼もしっかり加熱する事で温度が下がり過ぎないようにはしているが、「後半ぬるくなる事」「無化調である事」を注文した人に告知しているという。麺はしなやかな食感の中に強さも感じられて啜り甲斐があるもので、スープは羅臼昆布の滑らかさと鮭節の力強い食感が両立している。具には焼牛の他、加熱した千寿葱に羅臼昆布塩をかけたもの、鮭節を浸した醤油をかけたお浸しの三点を別皿で用意している。スープの食材を具の味付けにも使用する事で、別皿ながら一体感のあるものになっている。

 「ひやあつ」は、武内さんや北島さんも好んで食べていたスタイル。そんな事を思い出しながら、佐野さんが愛した食材たちを啜りあげた。


ひやあつが 麺とスープの 真価出す


牛骨らぁ麺 マタドール
東京都足立区千住東2-4-17
各線「北千住」駅から徒歩10分


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【魚露温麺 凪@新宿】
「佐野さんを偲ぶいいちこ麺」1,010円
※12/20まで、14時から限定20食

 こちらも「新小麦スタンプラリー」参加店。昼過ぎの時間帯で、14時からの限定で確実に残っていると考えて訪問。「春よ恋」をメインに道産の新小麦をブレンドした中細麺を自社で打ち出している。この麺が力強いが香りも漂わせていて、シャッキリした存在感もはっきりと示している。スープには共通食材である鮭節と羅臼昆布に、鮭のアラやホタテの貝柱も使っていて、魚介系の旨みを存分に発揮したスープになっている。大きな丼を使っていて、たっぷりのスープの中を麺が泳ぐスタイル。仕上げに振りかけているのは、鍋にかけてアルコールを飛ばした焼酎「いいちこ」。これも佐野実さんの大好物だったもの。魚介系の食材がじんわりした旨みを出しつつ、いいちこの香りと甘さが楽しいアクセントになっている。

 別皿には削った鮭節。この鮭節をスープと交互に口に含んでもいいし、スープに乗せてかき混ぜれば、鮭節の味が徐々に強くなって楽しめる。

寒晴に 焼酎香り 立ち上る

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魚露温麺 凪
東京都新宿区西新宿7-19-2
各線「新宿」駅から徒歩10分


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【厳哲@早稲田】
「広島」1,300円
※1月下旬まで、火~木の夜の部限定(年末年始は休止期間あり)

 最近何度か訪問している「厳哲」で、開店以来の冬季メニューの「広島」。修業していた「麺哲」でも提供していた人気メニューと言う事もあり、早めに食べようと思ってはいたがなかなか食べられなかった一品。夜の部ということで、日本酒と、2種類のチャーシューに鶏、そしてメンマやネギなどが乗った「盛り合わせ」を楽しんでから、「広島」を注文。

 鶏ベースの塩味スープに牡蠣を加えていて、「鮪塩」の牡蠣バージョンともいえる見た目が、うっすらした白いスープは独特。口にすれば牡蠣の旨みがじわっとスープに染みだしてきて、最後まで飽きる事はない。具にはもちろんたっぷりの5個乗った大ぶりの牡蠣。これを口にしてからスープを含むと楽しい。そしてチャーシューも3枚乗っているのでこちらの味が口の中に残る事で、スープを立体的に楽しめる。水菜とネギで口内をリフレッシュでき、しっかり茹でつつ力強い麺が、スープに馴染んで一気に完食させてくれる。冬の限定ということで1月までの提供予定だが、年末年始は別の限定の為提供されない日もある。これを食べたい人は事前のチェックが必須。

広島の 月夜に牡蠣で 春を呼ぶ

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ラーメン 厳哲
東京都新宿区西早稲田1-10-4
都営荒川線「早稲田」駅より徒歩2分、東京メトロ線「早稲田」駅より徒歩6分


■編集後記

 期間限定品のレビューは、タイミングが遅れてしまうと皆さんへの周知にならない点もあってなかなかアップできないんですが、それでもレビューを書いておくのは「今後への記録として」という面もあります。今回紹介した中では、七彩の「味噌らーめん能代ver.」と、厳哲の「広島」は、繰り返し何度か登場しています。その時にマイナーチェンジしている可能性もありますが、その時の参考にもなれば幸いです。


1d12777c7c29bf73cd6d25efb0e1b67a4b35bee3山本剛志:ラーメン評論家、ラーメン王。1969年生まれ。東京都出身、東京都在住。TVチャンピオン第6回ラーメン王。ぐるなび「メシコレ」キュレーター。「ラーメンwalker」百麺人。

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