■「ラーマガ」本誌に載せきれなかったレビューを掲載する「ラーメンレビュー増刊号」です
「ラーマガ」本誌では、各号で7件の個別レビューを掲載しています。遠征や連食などで、そこに収まらない私のレビューを、随時「ら~マニア共和国」で掲載します。
今回は巻頭コラムで「バーミヤン」の新作ラーメン発表会の様子、この夏の冷やし3杯のレビューを無料公開。そして東海遠征から2杯、千葉県京葉地区から4杯をレビューしています。ラーマガ本誌と合わせてお楽しみください。
□目次
1.巻頭コラム
「バーミヤンがラーメンに本気出してきた」
2.この夏の冷やしレビューは無料公開!第六弾は東京の山形冷やし!
<レビュー増刊31号で「ととこ@神保町」「楽農園@神田」のレビューを無料公開>
・河北や@神田
・桃山@大手町
・プルーカフェ@銀座一丁目
3.東海遠征完全版
4.千葉県レビュー総まとめ~京葉編~
1.巻頭レビュー
「バーミヤンがラーメンに本気出してきた」
全国に330店舗を展開する、すかいらーく系列の中華料理チェーン「バーミヤン」。これまでは各種の中華料理に合う「バーミヤンラーメン」を提供してきたが、一部店舗を除き、9/8(木)から11/23(水)まで、3種類のラーメンを加え「三大ラーメン祭り」キャンペーンを開始すると発表しました。
プレス向け試食会に参加する機会を得たので、3種類のラーメンを紹介します。写真は左がプレスリリース、右が現品になります。
「博多風とんこつラーメン」699円(税抜)
スープは豚頭などを使って長時間煮込んだもので、ラーメン専門店をかなり意識してきいる。鶏ガラスープをブレンドしているそうだが、動物系の臭いは控えめにして、スープに入れる前の豚頭や鶏ガラの下処理をしっかりしていると思われる。麺は26番手の角麺を使用。加水率を抑えながら伸びづらい麺になるように工夫したとの事。食感とコシ、スープの絡みを意識したとのこと。
驚いたのは、「替玉」ができ、麺の固さも注文できるようにした点。博多ラーメンの特徴はその2点にもあるわけだが、ファミレスというオペレーションの中では苦労が多いかもしれない。
厚切りチャーシューはトロトロ感が強く、脂好きには好適な印象。味付けが濃いと、角煮のようなイメージに近くなるかも。紅生姜は好みを分けるということで別皿での提供。
プレスリリースによると「博多ラーメンの有名店を食べ歩き、地元を凌ぐとんこつラーメンを追究するために試作を重ねた」ということ。幅広い客層に受け入れられる豚骨スープにまとめられていて、麺の工夫にも着目できる。一方で、「博多ラーメンの有名店を凌いだか?」と言われると、まだまだ博多には凄いラーメンは多いし、全国的には濃厚さや滑らかさで上を行く店も多い。様々なラーメンを用意したバーミヤンだから、もっと尖った印象を与えるラーメンも観てみたかったかも。
「野菜たっぷり水炊き鶏白湯ラーメン」799円(税抜)
バーミヤンが出してきた鶏白湯は「水炊き風」ということで、鶏ガラや丸鶏を合わせて煮込んだ白濁スープに、鶏油も加えてやや黄色みがかったスープに仕上げている。そしてとろとろの食感を強く出している点が独特。鶏のゼラチン成分がとろみを増しているとのこと。
トッピングに鶏チャーシューだけでなく、レタスなどの生野菜をたっぷり乗せてきたところがポイント。ラーメン専門店には入りづらいけど、ファミレスならば入れる女性層をメインターゲットにしている様子。柚子皮と柚子胡椒を別皿で提供していて、味変要素にも使えるようにしている。
鶏白湯ベースのラーメンを出す専門店も多い中、そこが出すラーメンと同じであれば意味がない。女性、特に主婦層に受け入れられそうな、野菜と鶏白湯の組み合わせがなかなか意欲的に感じられた。このメニューに限り、「フルーツオーギョーチ」をセットにできるのも女性向けの一環か。
「炙り叉焼と黒マー油の味噌ラーメン」699円(税抜)
味噌ダレには、米味噌、豆味噌、麦味噌の3種類をブレンド。札幌ラーメンの伝統的製法である、鍋で味噌ダレと動物系のスープ、モヤシを中華鍋で炒めて、麺に合わせたもの。なので、丼の縁にはスープから発生した泡がついていて丼も熱く、確かに札幌ラーメンで見かけるスタイル。旨みと甘さのバランスがよく、塩分もそれなりに感じさせる。
そこにコクを感じさせるのはニンニクに青ネギやエシャロットも加えて仕上げたマー油。ネギの効果か、見た目の黒さほどのニンニクの重たさや匂いは控えめで、香ばしさもプラスしている感じ。麺も札幌ラーメンを思わせる、黄色い太麺。炙ったチャーシューも、火を通したスープやモヤシともマッチしている。
3品の中では一番、ラーメン専門店で出ているラーメンに近いものを感じた。この味噌味のスープにマッチするのがご飯、という事でライス付のセットを訴求している。
そんなわけで、ラーメン3品を食べてみての感想。セントラルキッチンの制約がありながら、ラーメン専門店に追いつこうする意欲を感じた他、「三大ラーメンフェア」というネーミングに感慨深いものを感じた。一般的に「三大ラーメン」といえば「醤油・塩・味噌」と思われていそうだが、「とんこつ・鶏白湯・味噌」という並びは、今のラーメンシーンを映している。
その中で、それぞれに違うセットメニューを出したり、野菜を増やすなどして、ラーメン専門店との棲み分けを狙っているような感じもした。また、最近では回転寿司チェーンが「ラーメン」「油そば」を提供して、ファミレス化を狙っている中で、中華ファミレスからの一歩踏み出した戦略にも思えた。
この流れでやってほしいのは、専門店に学んだ「つけ麺」の販売。最近はラーメン専門店で「つけ麺」を頼む家族連れが多い。子供につけ麺を食べさせると、食べるペースが遅くても麺が伸びないし、残しても親が続きを食べられる。ファミレスが「つけ麺」のバリエーションを示す可能性もあるのではないか。
…という話はメニュー開発担当の方にもお話ししたので、もしかしたら来年あたり、バーミヤンで「つけ麺フェア」が始まるかもしれません(笑)
バーミヤン 品川グランドコモンズ店
東京都港区港南2-16-2 太陽生命品川ビル3F
各線「品川」駅から徒歩4分
2.この夏の冷やしレビューは無料公開!第六弾は東京の山形冷やし!
【河北や@神田】
「肉中華(冷たい)」580円
神田駅北口から大通り沿いに歩いて道沿いにある、山形肉そばをメインにした店。地酒やつまみメニューも豊富に用意していて、夜は呑める店としている。実は一度訪問したが呑み会の貸切営業で断られ、夏休みで振られての連敗からのリベンジ。昼はセルフ式で、椅子こそあるが立ち食い蕎麦店のような雰囲気。
食券機のボタンには「肉中華」とだけ書かれているので、温かいのしかないかなと思ったが、「どちらにしますか?」と聞かれたので「冷やし」で注文。呼ばれて取りに行った丼もしっかりと冷たい。旨みのある鶏ベースのスープはキンキンというほど冷たくはなかったが、氷が乗っている事で徐々に冷やされて満足。麺はしっかり茹でられて固さもなく、チャーシュー代わりの鶏肉には、コリコリした食感のヒネ鶏を使い、しっかりした味付けがスープや麺とのコントラストを発揮していた。
山形県河北地方に広がる「鶏中華」のイメージを守る一杯になっていて、値ごろな一杯はなかなか好印象。機会があれば、ここで呑みながら山形の色々な味を楽しみ、締めに温かい肉中華も食べてみたいところ。
山形の 色々な味 店にあり
河北や
東京都千代田区神田錦町1-2
各線「神田」駅から徒歩8分
【桃山@大手町】
「中華ラーメン(冷)」600円+「かき揚げ」200円
先ほどの「河北や」からも徒歩で数分。街角に佇む蕎麦屋さんといった印象の店構えだが、店内にはパネル式の最新食券機を備えている。こちらは山形県東根市に本店を置き、天童市では「山形肉そば」と「東京極太つけ麺」の店を展開。この店では肉そば、つけそばなどの蕎麦メニューの他、温冷の「中華ラーメン」を用意。冷たい方で注文したが、サイドメニューに天婦羅をサジェストしてきたので、思わずかき揚げを追加。席に着くと、お冷やと揚げた蕎麦を用意してくれる。
スープは鶏の旨みを強く感じて、旨みはしっかりとしている。ただ、キンキンに冷やしている訳ではなく、氷も乗っていないので冷たさ的にはもう少しほしいかな、と思える。麺は極太でかなり縮れたインパクトあるもの。黄色さがいかにも中華麺という感じで、黒く極太のこの店の蕎麦とのコントラストが形成されている。啜るごとにスープもたっぷり掬い上げてくれる。肉はひな鶏を使っていて柔らかい。
サイドメニューのかき揚げは別皿で分厚く、山形名物のゲソ天も一本追加。この分量ならば納得できる。ラーメンも開店当初よりは値上げしたようだが、600円ならば十分に嬉しい範囲。夜の部はつまみも色々用意しているようなので、何人かで呑みに来たい店です。
山形の 麺の力で 引っ張ろう
桃山 大手町店
東京都千代田区内神田1-4-2
各線「大手町」駅から徒歩5分
【プルーカフェ@銀座一丁目】
「山形水ラーメン」900円
銀座一丁目の昭和通り沿いに店を構えるカフェバーながら、山形の冷やしラーメンを提供する事で人気を集めてきた店。ちなみに冷たくない「山形ラーメン」や、油そばやトマトラーメン、ロコモコや豆乳カレーなど、フードメニューが非常に多い。開店直後に訪問した時に食べた「山形水ラーメン」をまた注文。初訪時の写真が残ってなかったこともあるので。
スープのメインは魚介系素材で、醤油もしっかり感じるもの。そこにオリーブオイルをかけていて、太麺も含めて、物足りなさは全くない。たっぷりのネギに、メンマ、チャーシュー、ゆで卵がトッピングに使われている。
ただ、このラーメンは「山形の冷やしラーメンをヒントに創作したオリジナルの味」であり、山形の冷やしラーメンを代表するか?と言われると疑問符がつく。出汁を凍らせた氷を乗せる所も独特で、味が薄まらないメリットはあるが、最初に濃く感じたままで、麺を啜っていくうちに「もう少し薄くならないかな?」と考えるようになった。そこで、お冷やに入っている大きな氷をラーメンに入れてみたら、冷たくなってやや薄くなってちょうどいい感じになった。ただ、お冷やの水が冷たくないので、氷をそこに使ってしまうと、お冷やがぬるくなってしまう問題点もある。
とにもかくにも、「山形の味」を代表する店というよりは、「山形の味をヒントに個性ある冷やしを提供する店」と認識しておいた方がいいと思える。
カフェだけど フードは色々 そろえてる
プルーカフェ
東京都中央区銀座1-14-9
東京メトロ「銀座一丁目」駅から徒歩2分