北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
■ラーメン活動月報(8月)
□告知/スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
『ハラールラーメンへの課題』山本剛志
外国人観光客の増加に伴い、ラーメン店でもそこへの対応が求められている。そんな中、イスラム教徒が禁止されている食材(ハラーム)を使わずに作られた「ハラール料理」への関心が集まっている。
国内でも「ハラールラーメン」を看板にするラーメン店が登場しているが、ハラールを徹底しようとすると、様々な壁に突き当たる事になる。例えばラーメンで頻繁に使われている「豚」がハラームとして禁じられているだけでなく、食肉として使われる鶏や牛については「餌もハラールである事」「イスラム教徒が定められた方法で屠殺する事」「豚と一緒に輸送・保管してはならない」など、細かなルールが定められている。一方で、魚介類はそのままではハラルフードであり、加工や保存に留意してハラール認証を得て、イスラム圏に売り込む動きもみられる。
また、アルコール類も禁忌であるが、ラーメンに欠かせない「醤油」は自然醸造時にアルコールを発生させている。日本ハラール協会は2011年、マレーシアのイスラム教委員会に提案して、「製造時に発生する自然発酵アルコール成分は問題ない」とする回答を得た。国内でも、各種ハラール認証団体によって認証された「ハラール醤油」が発売されている。
しかし、上記の回答やハラール認証は、その認証団体の基準によるものであって、その基準は様々。統一基準を示せればいいのだが、信心という内心の問題である以上、それを強引に統一させることはできない。そして、特定のメニューをムスリム対応にしても、他のメニューにアルコールや豚肉が入っていたらNGという人もいれば、そのメニューに豚肉が使われていなければOKという人もいる。
現時点で、日本のラーメン店ができる対応としては「豚肉やアルコールを使用していない料理の明示」など、イスラム教徒の食事における宗教的な要求を理解する「イスラムフレンドリー」を根付かせていく事だと言える。外国人観光客の食事への要求はイスラム教徒に限らない。ベジタリアンやヴィーガンへの対応においても同様の事が言える。スープに動物系の旨みが求められる現状において、実践している店が多くない分、対応できる店は外国人観光客へもPRできる事になる。一人でも多くの人に「日本には美味しいラーメンがある」と実感してほしいし、食にタブーを持たない人とも、一緒に笑顔になれる事が一番だと思う。
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は昨年浜松町にオープンした「中華そば 琳久」の「醤油らーめん」を山路と山本が食べて、語ります。
「醤油らーめん」750円