北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
■ラーメン活動月報(5月)
□告知スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
『11ヶ月で閉館したラーメン店集合施設』山本剛志
5月26日、北海道のラーメン店集合施設「札幌すすきのラーメン館」の閉館が発表された。去年の6月、全国から9軒のラーメン店を集めて開館したものの客足が伸びず、他の飲食店を集めたテナントビルに衣替えする事になった。「ラーマガ91号」「ラーマガ94号」の連載コラムで集合施設についてまとめたが、11ヶ月での閉館は、これまでの集合施設に比べても明らかに短い。これより短いケースは、トレーラーハウスを集めて建物を建てられない「市街化調整区域」に立ち上げた「つくばラーメン村」「横浜ラーメンパーク」だけである。
理由はいくつか考えられる。ラーメン館があった「南6条西4丁目」は、ススキノの南外れ。飲食店はもう少し北に集中していて、このエリアは風俗店が目立つ一角。しかも隣にはソープランド。観光客が気軽に食事するエリアとは言い難かった。大通りに看板を掲げていたものの、建物は奥に入った所にあったのも厳しかった。
また、運営していた不動産会社ではこの集合施設を「ラーメンテーマパーク」と自称していたが、実際には「テーマ」がなかった。新横浜ラーメン博物館が「昭和33年の世界」を標榜した事で「ラーメン波止場」「ラーメン街道」「ラーメン劇場」といったテーマが曲がりなりにも設定されていったが、ここで「すすきの」を感じさせるものは、エレベーターホールに貼られたかつての札幌の写真だけ。不動産会社の社員が、外回りの合間にラーメン館のスタッフをしていたようだが、揃いのハッピを着るわけでもなく、スーツ姿に名札だけでは「テーマパーク感」はなくなる一方。空き席を使って社員同士が打ち合わせしていたのには幻滅してしまった。
「誰にラーメンを食べてもらうか」での迷走もあった。当初はススキノに集まる観光客を当てにしていたようだが、観光客が求める「札幌ラーメン」を提供する店がなかった。そもそも、外国人観光客は有名な「ラーメン横丁」で食べるケースが多く、南6条までは流れてこない。食券機に英語や中国語の案内を入れる事も大事だが、外国人観光客を勧誘する動きをしなければ意味がない。
致命的だったのは、ラーメン店を1階から3階までに配置していた事。1階にラーメン店があるのに、3階まで昇る人は少なくなる。しかも、2階3階では高額紙幣が使えず、いちいち1階まで降りて両替する必要があった。
あまりの不振ぶりに、開館直後から営業時間を一部店舗が変更したが、その案内が掲示されていなかったり、施設全体が夜だけの営業になるなど、運営面でも迷走も激しかった。ラーメン館はHP、twitter、Facebookで情報発信していたが、いずれも途中で更新が止まっていて、3月で閉店した店が最後まで残っていたりする上、今回の閉館についてどこにも書かれていない。SNSを放置しておいて客が来るわけもない。
今後は飲食店を集めたテナントビルになるというが、1階にはラーメン店3軒が残るという。そもそも、昨年開館したのも「ラーメンテーマパーク」ではなく「ラーメン店9軒を集めたテナントビル」にすぎなかったのではないか。多くのラーメン店に迷惑をかけた、この運営会社には反省を求めたい。
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は4月27日に新しいコンセプトでオープンした「博多一風堂 ルミネエスト新宿店」の「1/2香菜担々麺」を山路と山本が食べて、語ります。
「1/2香菜担々麺」800円
※香菜は別器で提供