北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
■連載コラム(第24回)
『ラーメンの憂鬱』〜ラーメンに必要な人間力(山路力也)
『教養としてのラーメン』〜ラーメン店集合施設興亡史(2)(山本剛志)
□告知スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
「具材の意味は?」北島秀一
我々は、限定で毎回ご担当の店主に「NAKED」と言う超難問を突きつけ、ご苦労をかけている。回を重ねつつ「具材がなくても成立するラーメン」から「具材があると邪魔になるラーメン」まで非常に尖った企画を推進している身で何だが、では逆に「具材とは何ぞや」と少し考えてみた。
一般的な「ネギ」「メンマ」「チャーシュー」「味玉」などの具材の役割は明確だ。薬味であったり彩りであったり、箸休め、舌・食感のリフレッシュ、あるいは「メイン」を担当したり、である。麺とスープだけではどうしても一本調子になる所を、様々な具材が変化をつけ、ラーメンを「丼一杯のフルコース」たらしめているのだ。
更に、ラーメンの兄弟分の中には「アクセント」を超え、「具材がなければ成立しない」モノもある。長崎ちゃんぽん、タンメン、サンマー麺などがそれだ。具材とスープが渾然一体となり、ほぼ不可分だと言っていい。特にちゃんぽんとタンメンは、調理工程から言っても完全に具材ありきになっている。
これらの麺料理の歴史を紐解くと、特に「長崎ちゃんぽん」について興味を引かれる記述があった。長崎ちゃんぽんが誕生したのは明治32年、長崎「四海樓」の初代陳平順氏である事はあまりに有名だが、その陳氏が周囲の若い留学生のひどい食生活を見て、安くて栄養たっぷりの料理を考案したのがキッカケだと言う。そう言う意味では、若者や学生に「腹一杯食えよ」とあのボリュームを提供した大勝軒の山岸マスターや、二郎の山田総帥と同じ思いから生まれたと言えそうだ。
そう言えば子どもの頃インスタントラーメンを作ろうとすると、必ず親に「冷蔵庫に野菜があるからそれも使いなさいよ」と言われたのを思い出す。今でこそアクセント、彩りにも重点が置かれる具材だが、もともとは「栄養」と言う大きな意味があったのかも。だとしたら「具なし」を極めるNAKEDは、飽食の時代だからこそ許される贅沢なのかも知れない。【ラーマガ012号より転載】
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は今年4月、東陽町にオープンした「武道家 賢斗」の「ラーメン」を、山路と山本が食べて、語ります。