黒歴史の祭壇

魔王と百合と、勇者と側近。

2016/09/22 11:35 投稿

  • タグ:
  • 百合
  • 魔王
  • 勇者
  • ファンタジー


勇者
魔王
側近

側近
「ご報告します! ただいま勇者が魔王様のもとへ全速力で向かってきているそうです。
 もはや、この王の間のつくのは時間の問題かと!」

魔王
「へえ、あの勇者が。
 自力でここまでやるとは中々頑張るのね。因みに彼女の仲間達はどうなっているのかしら?」

側近
「魔道士のマドーは自分の魔力が暴走して四天王のゲンブと共に消滅。戦士のシセンは魔物の血が覚醒させ、四天王のビャッコと相打ち。
 武闘家のナグルーは日課の正拳突きトレーニングの為、一時的にパーティーから離脱。聖職者のセントはお祈りの時間ということでお祈り中にございます」

魔王
「前半はともかく、後半の二人はどうして今ここに来たのかしら」

側近
「調べによれば時計の設定を、二人とも間違えていたそうです」

魔王
「無意味に奇跡的ね。
 まあ、いいわ。こちらとしては勇者が一人で来てくれたほうが有り難いものね――なんて言っていたら、丁度来たかしら」

勇者
「辿り着きましたよ、魔王。遂に貴方の所に」

魔王
「ふふ、よく来たわ。勇者。歓迎してあげる」

側近
「それでは、紅茶をどうぞ」

勇者
「おぉ、ありがとうございます」

魔王
「ふふ、私の側近が淹れる紅茶は美味なものよ」

勇者
「確かに、これは美味しい――ってちがーう!
 歓迎ってそういう歓迎ですかっ。普通叩きのめすとかそういう意味では無いんですか! 何、普通に歓迎しちゃってんですか!」

魔王
「駄目よ、勇者。
 変に裏があると思うのは、人間のよくない所なのだから」

勇者
「くっ、変に徳の高い存在みたいに」

魔王
「位は高いわよ」

勇者
「知ってます!
 もう、何なんでしょう。折角ここまで頑張ってきたというのに色々台無しですよ。もうちょっとシリアスな雰囲気にしてください」

魔王
「ゴゴゴゴゴゴ」

勇者
「魔王が口で威圧感を出そうとしないでください……」

側近
「ゴゴゴゴゴゴ」

勇者
「本人じゃなければいいってわけでもないですからね!?」

魔王
「わがままね」

勇者
「貴方は気ままですよね」

側近
「私は、昔のあだ名がまままでした」

勇者
「その情報いりませんからね?」

魔王
「ところで勇者。
 私って、貴方のことを愛してるのだけれど――」

勇者
「何をさらっと、突然且つビックリな情報を告げてるんですか!?」

魔王
「私達結婚しない?」

勇者
「しませんよ!?」

魔王
「しない?」

勇者
「頬を赤らめながら後ろの部分だけを言わないで下さい、意味深に聞こえます!」

魔王
「っ、振られたわね。
 側近、私ちょっと自室にこもるから勇者の相手をしてあげてくれる?」

側近
「お任せください、魔王様」

勇者
「いやいやいや、待って下さい!
 振られたからって引きこもろうとしないでっ。それと側近、貴方はそれでいいのですか!」

側近
「私にとっては魔王様の決定こそが全て。
 魔王様が言うのであれば、自らの名前を全裸の変態に変えることも厭いません」

勇者
「流石にそれは普通に断って下さい!
 って、魔王。話してる間にいなくなろうとしないで!」

魔王
「振った女を引き留めるなんて、貴方も中々に酷い女よね」

勇者
「私が悪女みたいに言うのはやめてくれませんか」

魔王
「貴方って、本当に最低の屑だわ!」

勇者
「悪化してますからねっ!?」

魔王
「じゃあ、付き合ってくれるということ?」

勇者
「話が完全に変わってる気がします!」

魔王
「……流石は勇者。随分と手強いわね」

勇者
「あの、そろそろ本当に戦ってくれませんか。
 いい加減、腹が立ってきましたから」

魔王
「あらあら、それはいけないわ。
 そういう時は深呼吸をしてリラックスしなきゃ」

勇者
「それには及びません。
 この怒りを力に変えて、私はここで貴方を討ち滅ぼすのですからっ」

魔王
「深呼吸は嫌? じゃあ、人工呼吸でも」

勇者
「討ち滅ぼすくだり聞いてました!?」

魔王
「一回殺すくらいなら許可するけれど」

勇者
「許可しないで抵抗してくださいませんか」

魔王
「へえ、勇者は相手が抵抗しているのを無理矢理するのが好きなのね。メモしておきましょう」

勇者
「間違った情報を書き記すのはやめましょう」

魔王
「じゃあ、本当の性癖は?」

勇者
「私は、そのえっと……って言いませんからね!?」

魔王
「惜しかったわね」

勇者
「もう、貴方は一体何なんですか……」

魔王
「魔王だけど?」

勇者
「それは知ってます!」

側近
「側近ですが」

勇者
「それも知ってますから!」

魔王
「なら、私が逆に貴方に性癖を教える所からね」

勇者
「戦う所からです!」

魔王
「ベッドの上で?」

勇者
「王の間で!」

魔王
「嫌ね、勇者は見られながらするのが好きな露出狂なのかしら。
 でも、貴方がしたいというのなら私は一向に構わないわ」

勇者
「いや、構いましょう!? そこは止めましょう!?
 じゃなくてっ、そんなことはどうでも良くて!」

魔王
「どうでもいい? つまり、私とキスをしてもいいと」

勇者
「だから違います!
 戦いです、戦い。ラストバトル! 国を、世界を守るための! それを始めましょう!」

魔王
「えー」

勇者
「えーじゃないです!
 もう、そっちがやる気が無いというのならこっちから行きますよ!」

魔王
「なら、どうぞ?」

勇者
「くらいなさい、ファイアーソード!」

側近
「ぐわぁぁ!! 私の内蔵が溶けるぅー!」

勇者
「うわぁぁ!? 思いの外グロテスクなことにー!?」

側近
「はぁはぁ……中々やりますね。流石は勇者。ここまで来ただけのことはあります」

勇者
「くっ、貴方は。魔王の最後の盾ということですか」

側近
「えぇ、私は側近ですからね。
 魔王様に放たれる攻撃は全て私が受けきる。それこそ私の務めです」

勇者
「敵ながら感服せざるを得ない心構えです。
 ですが、貴方に構っている暇はありません。一瞬でカタをつけます。フレイムセイバー!」

側近
「ぐふぁぁ!? ぐぅっ、まだですっ」

勇者
「なっ、これをくらってまだ立っていられるというのですか!」

魔王
「ふふふ、無駄よ勇者。私の側近は無限に蘇生する力を持っている。その上、どM! 貴方では、その男には勝てないわ」

勇者
「あの、強調する所間違ってませんか? しかも、何だか私はどMには勝てない人みたいになってるじゃないですか」

魔王
「事実を述べただけよ。それよりほら、そこの私の側近が新たな攻撃を求めてるわよ」

側近
「はぁはぁ、もっと……もっと来て下さい!」

勇者
「嫌ですよ! 完全にテンション上がっちゃってるじゃないですか!」

魔王
「貴方が上げたんじゃない」

勇者
「そうですけど、私は側近さんがどMだなんて知らなかったしこんなの事故みたいなものでしょう!?」

魔王
「事故を起こしても責任は負うものだと思うけれど」

勇者
「ぐぬぬ、確かにその通りですが。一体、どう責任をとれば」

魔王
「私の嫁になればいいのよ、勇者」

勇者
「どうして貴方に責任を取らなければいけないんですか!」

魔王
「私は魔王。彼は側近。私の一声で全ては丸く収まるのよ」

勇者
「っ、権力を笠に着て!」

魔王
「貴方はドレスを着ましょうねー」

勇者
「ナチュラルに服を脱がそうとするのはやめてください!」

魔王
「じゃあ、ドラマチックに?」

勇者
「そうでもなくて!」

側近
「カメラの準備は万端です、魔王様!」

勇者
「貴方も切り替え早いですね!? というか、それこの世界にあっていいアイテムなんですか!?」

魔王
「魔王の魔力を持ってすれば異世界の道具を持ち込むことも可能ということよ」

勇者
「無理矢理こじつけなくていいです!」

魔王
「じゃあ、貴方を餌付けして懐かせて。最終的に種付けでもしましょうか」

勇者
「やめてください、それだと18禁になってしまいます!」

側近
「ご心配なく、編集で上手いことギリギリそうならないように工夫を凝らしますから」

勇者
「そういう問題ではなく!」

魔王
「分かったわ。貴方が言いたいのはこういうことね。
 私達はまだ関係が浅い。なのに、恋人になるなんて気が早いのだと。
 ごめんなさい、私ってば少し急いてしまっていたのね。そうよね、愛はゆっくり育まなきゃ」

勇者
「あの、悟った感じで語ってもらった所悪いんですが全体的に違います」

魔王
「なら、まずはどこから始めるのがいいのかしら。えっち?」

勇者
「数秒前にさっき自分で言ったことを、思い出して下さいませんか!?」

魔王
「えっち?」

勇者
「そこじゃありません!」

魔王
「魔王、私も実は貴方のことがずっと前から好きだった。
 そう、貴方は覚えていないかもしれませんが私達は幼馴染だったのです。
 小さい頃、北の外れの村でよく遊んだ少女がいたでしょう。あれは私だったのです――の所かしら」

勇者
「私の台詞を丸ごと捏造しないでください!」

魔王
「すき、の所かしら?」

勇者
「私、それも言ってませんよね!?」

魔王
「何を言っているの。
 これは貴方の台詞の三つ目の"叩きのめす"の"す"と最初の台詞の"辿り着きました"の"き"を合わせて作られた、歴とした貴方の言葉よ」

勇者
「それは果たして歴としたと言えるようなものなんでしょうか」

魔王
「えぇ!」

勇者
「無駄に清々しい笑顔!」

側近
「はいっ!」

勇者
「貴方はもう帰って下さい!」

魔王
「えっ、勇者。それってもしかして。私と二人きりになりたいということ?」

勇者
「1対1で世界の命運をかけた戦いをしたいだけです」

側近
「いけませんよ、勇者。それなら私を倒してからにしてもらわなければ」

勇者
「満面の笑みで前に出てこないで下さい、気持ち悪いです」

側近
「気持ち悪い、ですか。心地よい響きです」

魔王
「ふふ、私の側近は言葉責めにも対応しているわ」

勇者
「なんでそこ誇らしげ!?」

魔王
「配下の大事な長所だからね」

側近
「魔王様……」

勇者
「あの、すこぶるマゾヒストなのって長所なのですか……?」

魔王
「見ようによっては」

側近
「おぉ、魔王様はやはり寛大ですね! 海のように心が広い!」

勇者
「私の器が小さいみたいになってる!?」

側近
「胸も小さめですしね」

勇者
「殺しますよ、側近」

側近
「どうぞ!」

勇者
「喜び勇んで両手を広げるのをやめなさい!」

魔王
「大丈夫よ、勇者。私は小ぶりで、でも形の良い貴方の胸が誰の胸よりも好きなのだから」

勇者
「ここには変態しかいないんですか」

魔王
「変態ではないわ。これは愛ゆえの感情の昂ぶりがもたらす性的興奮によるものよ」

勇者
「やっぱり変態ですよね!?」

側近
「今の、もうちょっと蔑んだ眼で今度は私にお願いします」

勇者
「うるさい!」

側近
「ぐふぁっ!?」

魔王
「そういえばなのだけれど」

勇者
「今度は何ですか?」

魔王
「貴方は魔王さえ倒せればそれでいいのよね」

勇者
「そうですけど、それがどうかしたんですか?」

魔王
「いつでも押し倒して頂戴」

勇者
「その倒すじゃありませんから!」

魔王
「知っていたけれど」

勇者
「なら言わないで下さい!」

魔王
「まあまあ。私に良い考えがあるのよ」

勇者
「良い考え? 邪(よこしま)な考えではなく?」

魔王
「えぇ、ストライプな考えでは無いわ」

勇者
「そっちのよこしまじゃありませんからね」

魔王
「ふふ。因みに封印でもいい?」

勇者
「え? ま、まあそうですね。状況によってはそれでもいいでしょう。
 魔王を倒すといえば、打ち倒すか封印の二択ですし。封印のパターンもそれなりにありますから」

魔王
「そう、良かった。
 じゃあ、大事なことを言うからよーく聞いておいてちょうだいね。私、今から魔王をやめるわ」

勇者
「え、あ、は?」

側近
「ま、魔王様!?」

魔王
「で、次の魔王は貴方よ側近」

側近
「なっ、私が魔王――」

魔王
「――はい、封印」

側近
「ぎょわぁぁぁーー!!」

勇者
「あ、あ……」

魔王
「良い封印されっぷりだったわね。
 さて、それじゃあ行きましょうか。勇者」

勇者
「え、いや、えぇ!?
 ど、どどどどういうことですかこれは!?」

魔王
「え? 魔王をやめて、魔王を指名して、魔王を封印しただけだけど?
 これで晴れて、私は魔王じゃなくなって勇者と敵対せずに済むし魔王は封印出来たしで一件落着じゃない?」

勇者
「む、無茶苦茶です!」

魔王
「ふふ、そう思うのなら私を無茶苦茶にしてもいいのよ」

勇者
「どういう流れですか! というか良いんですか!?
 側近さん、あんな感じで封印しちゃって!」

魔王
「あぁ、あの封印空間はどMには最高の作りになってるから。むしろ楽しんでると思うわよ」

勇者
「何ですか、その酷く恐ろしげな空間は」

魔王
「今度遊びに行ってみる?」

勇者
「行きません!」

魔王
「じゃあ、どこに行きましょうか?」

勇者
「何処にって、えーっと……」

魔王
「もしかして勇者。貴方、帰る場所が無いの?」

勇者
「思えば、故郷は山賊に焼き払われ、その後は仲間達と各地を転々としていたから自分の家というものがありませんね……」

魔王
「……しょうのない子ね。
 町外れに家でも建てて二人でひっそりと暮らしましょう」

勇者
「魔王……って、なんで私が魔王と二人で暮らさなきゃ行けないんですか!」

魔王
「だからもう魔王じゃないってば」

勇者
「そういう問題ではありません!」

魔王
「でも、住む所も無いんでしょ?
 その上、魔王もいなくなっちゃったんじゃ勇者なんていても意味無いわよ?」

勇者
「ぐぅ……」

魔王
「大丈夫、優しくするから」

勇者
「だから、意味深な言い方はやめてください!」

魔王
「大事にするから」

勇者
「魔王……」

魔王
「元、魔王よ」

勇者
「……背に腹は変えられません。
 少しだけお世話になります、元魔王」

魔王
「ふふ、子供は男の子か女の子。どっちがいいかしらね」

勇者
「いや、女同士でどうやって産むつもりですか!?」

魔王
「もちろん、私のマジカル元魔王ぱわぁで」

勇者
「急に一人で放浪の旅をしたくなってきました」

魔王
「駄目よ。もう、離さないんだから。
 それに、さっきのお世話になりますって言葉で契約が完了したわ」

勇者
「へ?」

魔王
「私と貴方はこれから一生5m程しか離れられない。そういう魔法がかかったのよ」

勇者
「え、ええぇ!?
 何ですかそれ! その、トイレとかお風呂とかどうするんですか!?」

魔王
「一緒に入るしかないでしょ。ぽっ」

勇者
「ぽっ、じゃありませんよ! 解除してください、今すぐその魔法を!」

魔王
「ごめんなさい、術者がしなないと解除出来ないタイプの魔法なのよねこれ」

勇者
「だったら今すぐ貴方を殺します!」

魔王
「まあ! 勇者ってば何の抵抗もしない優しい魔物を。魔王でもない優しい魔物を無残に慈悲なく殺すというの? なんて非道なのかしら」

勇者
「ぐぅぅぅ」

魔王
「無理よね、そんなこと出来ないわよね。それじゃあ行きましょうか。私達の素敵な旅路へ!」

勇者
「一瞬でも、気を許してしまった私が馬鹿でした……」

魔王
「その後、魔王と勇者が本当の絆で結ばれるまでそう時間はかからなかった。二人の愛は永遠となり、それこそが真に世界を本当の平和に導いたのだった」

勇者
「勝手なエピローグを挿入しないで下さい!」


コメント

コメントはまだありません
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事