nimrod(プラミクP)のブロマガ

【レビュー】ラプラタ沖海戦

2015/07/13 22:25 投稿

コメント:4

  • タグ:
  • 小説
  • レビュー
  • ダドリー・ポープ
  • ポケット戦艦
  • シュペー
  • エクゼター
  • エイジャックス
  • アキリーズ

●ハヤカワ文庫NF ダドリー・ポープ(著) 内藤一郎(訳)


第二次大戦開戦当時のいわゆる通商破壊戦に従事したポケット戦艦、アドミラル・グラフ・シュペー号の活躍とその終焉を描いたノンフィクション。

ポケット戦艦というのは英軍側が付けた渾名で、独軍のカテゴリーでは装甲艦(パンツァーシッフェ)という艦種になっているが、他国の持たない独特な艦種である。
船体サイズ的には重巡洋艦並だが、主砲と装甲が戦艦並といったユニークで強力なところが特徴。 装甲を犠牲にしていないのが巡洋戦艦との違いといえるだろうか。

このような艦種が生まれた理由は、第一次大戦の敗戦により、ドイツが保有艦艇の数量(排水トン数)を厳しく制限されてしまった為で、比較的小型で重武装な艦艇を建造するしかなかったことが主である。

もっとも、ヒトラー自身が海軍戦略に疎かったことで、空・陸軍に比べると非常に貧弱な装備を持って戦わなければならなかったのがドイツ海軍の悲劇ではあるが、開戦があと数年遅れたとしても、艦艇というのは建造に数年掛かるので、あまり大勢に影響は無かったような気もする。

日本や英国のような島国は、何処へ行くにも海を渡るしかないので、必然的に海軍偏重になったともいえるし・・・


通商破壊戦というのは、敵国の輸送船を襲って撃沈あるいは拿捕する戦法で、現代で言えばテロに近い戦闘方法といえるかもしれない。 しかし、上記のとおり貧弱な海軍しか持たないドイツには唯一取り得る有効な戦略で、艦艇が少ないことが逆に強みともなる(大海に紛れれば搜索が極めて困難)、弱者故の戦法とも言える。


Die Admiral Graf Spee

この本の前半はシュペーによる通商破壊戦の様子をわりとのんびりと描いたもので、次々と商船が餌食になるが、当時はいきなり砲撃したり雷撃したりするするわけではなく、相手に警告して乗員を避難(ときには収容)させた後に撃沈(主に爆弾を仕掛けて沈める)するという、極めて人道的(?)な戦闘行動に終始している。 その為、死者はまったく出ない(!)。

後半は、タイトル通りラプラタ沖での英海軍G部隊(エクゼター、エイジャックス、アキリーズ)との激しい戦闘が描かれるが、ドイツ側の戦闘記録は破棄されてしまった為、英軍側のみの描写となっている。
レーダーが実用化される前の、光学照準のみの砲撃(実際には初歩的な計算機による補正があるが)にも関わらず、的確に命中させるシュペーに比べ、数で勝り、おまけに水偵まで出していながら致命傷を与えることのできない英軍側。



HMS Exeter

エクゼターはすべての砲が沈黙し、辛うじて推進力だけは失っていない状態。 他の2隻の軽巡は命中弾は喰らっているものの、航行に支障はない状態。 シュペーの方は命中弾は受けているもののさすがに戦艦、ほとんどの弾は装甲で弾き返していた(と思われていた)。

この時点で戦闘は終了し、シュペーはウルグアイのモンテビデオ港に退避するのだが、やはりドイツ側の戦闘記録が失われているため、何故、残ったエイジャックスとアキリーズを屠らずに戦場を去ったのかは、この本では謎のようになっている。



HMS Ajax

また、肝心のシュペーの自沈に至る経緯も、英国の情報操作による勝利・・・港外に強力な英国艦隊が待ち構えている(実際には傷ついたエイジャックスとアキリーズしか居なかった)という色合いが濃いが、実際には英軍側の砲弾がシュペーの燃料処理システム(ポケット戦艦に共通する弱点)を破壊して、航行不能になっていたのが真実であり、モンテビデオで修理を受けられなかった同艦としては、自沈以外の選択肢が無かったのである。



HMNZS Achilles

そういうわけで、ノンフィクションとしては最後の詰めが甘く、今となっては真実を伝えているとは言い難いのが残念だが、執筆時期(1956年)を考えるとやむを得ないだろう。


コメント

nimrod(プラミクP) (著者)
No.2 (2015/07/16 13:16)
>>1
結局、これ以降に出た出版物でも真実を伝えているものは少ないようで(海外には未翻訳のものがあるのかもしれませんが)、「ラングスドルフやる気ねぇ」とか「イギリスの情報戦にまんまと引っ掛かってやんの」みたいな誤解が生じているのは、シュペー乗組員全員の名誉のためにも残念なことです。

私も、このレビューを書くにあたってWikiを調べていなければ、同様の間違いを犯していたと思うので、真実の歴史を知るためにも、ドイツ側の記録を加えた改訂版を出して欲しいですね。

シェーアの本は同艦の艦長が書いた本ですよね? これも昔読んだ記憶がありますが、内容はすっかり忘れてしまいましたw。
蒼月
No.3 (2015/07/16 23:10)
>>2
シェアーは通商破壊戦当時の艦長が書いていたと思います。出てこないから断言出来ませんが^_^;
玉子を大量に鹵獲して玉子三昧しか覚えてません^_^
nimrod(プラミクP) (著者)
No.4 (2015/07/17 14:20)
>>3
>玉子三昧
あー、そんな話があったようなw
しかし、アカデミーのシュペーは押さえておけばよかったなぁ...orz。
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事