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「筋トレは基盤が9割」の続きです!(#1,#2)

 

このシリーズでは、近年の研究で言われる「筋トレのBig Rocks=大きな岩」って考え方をもとに、「筋力を爆上げするために最も大事な要素」をピックアップし、重要なものから順番に解説しております。

 

つまり、「いかに強くなるか?」って話をずっと書いてるわけですが、ここまで読んできた方はおわかりのとおり、筋力ってのは意外とロマンがない作業だったりします。ひたすら重いものを持ち上げ、地味に繰り返し、体の反応を待つ……って感じで、めちゃくちゃ退屈なプロセスなんですよね。

 

が、見方を変えてみれば、その「退屈さ」を戦略にさえ変えることができれば、確実に筋力は強くなれるってことでもあります。そこで今回のテーマは、筋力アップにおいて3つ目に大事な「期分け・漸進・テクニック」を見てみましょう。

 

 

 

期分け・漸進・テクニックとは?

まずは言葉を簡単に説明しましょう。「期分け・漸進・テクニック」ってのは、簡単に言いますと、以下のような考え方を意味しております。

 

 

1. 期分け(ピリオダイゼーション)

こいつは、筋トレの刺激に「時期」をつくる方法のことです。 トレーニングを「量を増やす時期」「重さを上げる時期」「休む時期」に分けて、 それぞれの目的に合わせて体を適応させていくのがメインのゴールで、これによって筋力が上がらなくなる状態を防ぎ、長期的により強くなることを目指すわけです。 “冬に土を耕し、春に種をまき、夏に実を育てる”ようなイメージっすね。

 

2. 漸進(プログレッシブ・オーバーロード)

筋肉にかかる負荷を少しずつ増やしていく方法のことです。 単に重さを上げるだけじゃなくて、「回数」「セット数」「密度(休憩の短縮)」などでも強度を上げていくのがメインのやり方で、体に「これまでより少しきつい刺激」を与え続けて成長を促すわけです。 

 

3. テクニック

動作の精度と効率を高める力の使い方のことです。 正確なフォームは筋力アップに絶対必要で、怪我を防ぐだけでなく、より多くの筋線維を動員できるようになるため、 同じ努力量でより大きな成果を生んでくれますんで。これにより神経的なコントロール能力を上達させるのが大きな目的であります。言い換えると、“同じ力でも、刀をまっすぐ振れば斬れ味が変わる”ような状態を目指すわけです。

 

 

ということで、「期分け・漸進・テクニック」の定義は以上です。言ってみれば、前回までの「努力」と「負荷・頻度・量」を車の燃料だとするならば、「期分け・漸進・テクニック」はナビみたいなものだとお考えください。どんなに燃料を積んでいても、ナビが狂っていたら目的地にはたどり着けないですからね。

 

では、筋トレの“ナビ”をどう設計すれば、最短ルートで強くなれるのかってことで、順を追って見ていきましょうー。

 

 

 

ナビ1.期分け(ピリオダイゼーション)

まず最初に押さえたいのが、「ピリオダイゼーション(期分け)」です。簡単にいえば「トレーニングを季節のようにサイクルさせる仕組み」でして、ズールドス博士はこれを「線形」「非線形」「統合型」の3タイプに分類しておられます。

 

 

線形の期分け:段階的に重くしていく

最も伝統的なのがこの手法で、俗に線形モデルと言われております。考え方は簡単で、

 

  1. 最初の数週間はボリューム(セット数・回数)を多く、重さは軽めにする。

  2. でもって、徐々にボリュームを下げながら、負荷(%1RM)を上げていく。

 

みたいになります。たとえば、最初の4週間は「10回×3セット(70%1RM)」を行い、次の4週間で「6回×4セット(80%1RM)」、最後の4週間では「3回×5セット(90%1RM)」をやる……という感じっすね。

 

この手法のメリットは、シンプルで扱いやすいところで、初心者〜中級者にとても向いております。ただし、単調になりやすいので、長期的には刺激の新鮮さを失うという弱点もありますね。

 

 

非線形の期分け:毎週、負荷を切り替える

次に「非線形」モデルですが、こちらは“毎週の天気がコロコロ変わる”タイプのトレーニングを意味します。たとえば、

 

  • 月曜:重い重量で3回×5セット(強度重視)

  • 水曜:中重量で6回×4セット(バランス)

  • 金曜:軽めで10回×3セット(ボリューム重視)

 

というように、週の中で重さと回数を変動させるわけです。これによって体への刺激が多様になり、適応の停滞を防ぎやすくなるし、精神的にも飽きにくいのが魅力っすね

 

あるメタ分析(R)では、非線形モデルは線形モデルより平均して5%ほど強さの伸びが高いとも報告されてまして、ちゃんと精度が高めのデータで効果が実証されているあたりもポイントでしょう。とはいえ、どちらが優れているかというより、「どちらを長く続けられるか」が重要なんで、そこは注意してくださいませ。

 

 

統合型の期分け:最強のハイブリッド

上記のポイントをふまえて、私が最も推奨したいのは、線形×非線形のハイブリッドモデルであります。ざっくり言うと、「全体の流れは線形」しつつ「1週間の中では非線形」にするってやり方でして、たとえば、

 

  • 全体(3〜5か月単位)では:少しずつ重くしていく(線形)

  • 週の中では:日によって刺激を変える(非線形)

 

みたいな感じです。このような“統合型”は、全体の方向性を持ちながら、日々の変化で飽きや停滞を防ぐことができまして、個人的にはベストなんじゃないかなーと思っております。

 

個人的には、20週間のプログラムを「ボリューム期 → ピーク期 → デロード」みたいに3ブロックに分けて、それぞれのブロック内では毎週、軽・中・重の日を配置していくのが良いのではないかと思う次第です。「線形でマクロを動かし、非線形でミクロを動かす」って感じで考えておくのがお勧めっすね。

 

ということで、ピリオダイゼーションの順番を考えると、

  1. まず“量”で筋肉を作り、
  2. つぎに“強度”で神経を鍛え、
  3. そして“休息”でその成果を固定する。

 

みたいになります。この順番を守るのがピリオダイゼーションの真髄でして、なにせ筋肉も神経も同時には育たないので、「全部一度にやろう」とするとどれも中途半端になっちゃうんですよね。