第2巻のレビューも折り返し地点です。本当は連続更新したかったのですが、こちらの「バーチャル将棋アイドル・神薙紗津姫 イラストコンテスト」の準備などもあってできませんでした(多数のご応募、お待ちしております)。
第三局 素敵な一日
今回の話を要約すると、桂香先輩とのデートです。将棋ばっかりのこの作品にも、やっとラノベらしい華やかなシーンが出てきた感があります。もっとも桂香にはデートという意識はなくて、単に仲のいい後輩と息抜きに遊ぶという気持ちなのですが。それよりもさっそく面白いセリフが飛び出しました。先に待っていた歩に彼女は言います。
「うーん。しっかりしてるわ。あゆむくんと話していると、たまに同学年の男子か、それよりも上の男の子と話してる感覚になる時があるの。精神年齢が高いのかな」
いやまったくです。こんな中一どこにいるんだってくらい言葉遣いが丁寧で礼儀正しい。もちろん年相応に女の子にドキドキする描写もあるんですが、ラノベの主人公としては結構異色ですよね。
さて、ふたりが最初に向かった先はゲームセンター。そこでプロ棋士に勝ったコンピュータが搭載されているという将棋ゲームを目にします。この作品世界でも、電王戦的な棋戦が開催されていて、すでにプロが負けているようです。そんなコンピュータ将棋について歩の気持ちはというと。
ただ、どういうやり方だったとしても、将棋というゲームが多くの人に認知されて人気が出るのは良いことだと思っていた。最近盛り上がりを見せているプロ棋士対コンピュータ戦は、マイナスな面もあるだろうが、確実にプラスの面もある。将棋に限ったことではないが、裾野を広げなければ、待っているのは廃れる未来だけだ。
ここまでの考えを持っている中一も、なかなかいないでしょう。というより、これは作者さんの強い主張と見るのが適切でしょうか。もちろん私も同意です。ふたりは今日は将棋のことは忘れるという約束なので、この将棋ゲームには挑戦しないのですが、意外な人物が挑戦したりして笑いました。ここらへんは実際に読んでのお楽しみで。
あとはずっと爽やかなデート描写。当然ながらラッキースケベ的な展開はありません。まさに清く正しいお付き合い! そして締めは桂香の父親である大橋名人が出演している将棋祭り会場へ。将棋のことを忘れるという約束も、名人の魅力の前には意味をなさないのです。こういうところでさりげなく、名人がいかに特別なのかを描くのがいいですね。
将棋祭りの司会は恰幅のいい関西弁の棋士……絶対に神吉宏充七段がモデルでしょう。本当に随所で将棋ファンを楽しませてくれます。その後、この司会の棋士の薦めもあって、歩と桂香はペアで大橋名人に挑戦することに。いわゆるお好み対局なのでわりとすぐに終わりますが、それでも名人のすごさを見せるいいシーンでした。それにしても貴重なデートが結局は将棋で終わるというのは、なんともこの作品らしいです。
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