【本格将棋ラノベ】俺の棒銀と女王の穴熊

俺の棒銀と女王の穴熊【3】 Vol.18

2013/10/07 18:00 投稿

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     ☆

 雲もまばらな青空の下、将棋部プラス一名は観光客で賑わう往来を軽やかに進む。
 海水浴場まではほんのわずかの距離だ。子供連れやカップルもちらほらと見えてきて、楽しそうな会話が聞こえてくる。誰もが健やかな夏を満喫している。
 宿でレンタルしたビーチパラソルを抱える来是は、前を歩く紗津姫をじっと見つめていた。
 いつも慎ましかった彼女が、ついにその肌を、セクシーにもほどがあるボディをあらわにするときが来たのだ。今から頭が沸騰しそうだった。
 しかし、あまり浮かれてもいられない。
 こんな魅力的な女性を、男どもが放っておくわけがない。必ず、彼女に言い寄る奴は現れる。その心構えでいなければならないだろう……。
「気合入ってますねえ、春張くん」
 金子は意味ありげな笑みを浮かべている。
「まあ、いろいろな。お互い、トラブルに気をつけて楽しく遊ぼうぜ」
「トラブルですかあ。場合によっちゃ、歓迎できるトラブルもあるんじゃ」
「そんなもんあるのか?」
「いえ、適当に言ってみただけです。むふふ」
 雑談を交わしているうちに、大勢の人で賑わうビーチが目に入った。白い砂浜がところどころ、人工的なビーチパラソルやビニールシートのカラーで彩られている。
「うわ、さすがに混んでるわね」
 依恋が小さな溜息をついた。
 芋を洗うような、とまではいかないものの、かなりの人出。必然的に、紗津姫に注目する男も多くなる。ますます油断してはいられないと、来是は腹に力を入れた。
「じゃあ、またあとで。場所を取っておいてくれますか?」
「はい! おまかせを」
 紗津姫たちは向こうにある女子更衣室へ向かった。
 残された男性陣は、一足早く砂浜に足を踏み入れる。どうにか空いている場所を見繕うと、ビーチパラソルとビニールシートをセットした。
 来是と関根はスポッと服を脱ぐ。現地で着替えるのは面倒なのでズボンの下に海パンを履いてきたのだ。
「いいねえ。女子小学生の水着姿は……」
 関根の視線の先は見ないようにした。
「部長の行動に注意を払ったほうがいい気がしてきましたよ」
「眺めているだけだから安心しろ。ロリは遠くにありて思うもの、だ」
 そして――歓喜の時がはじまる。
「お待たせしました」
 柔らかい声が背中にかかる。振り返ると、肌色の桃源郷が広がっていた。
 桃源郷の中心には、世界自然遺産に指定すべき双子の巨峰がそびえている。目の前の空間を圧迫するほどのそのボリュームに、来是は我を忘れて見入った。
 紗津姫が身につけているのは、正面から見るとワンピースだが、背後から見るとビキニのように紐だけが見える、モノキニと呼ばれるタイプの純白水着だ。それでいて前面の露出はかなり多い。これまでベールに隠されていた深い深い谷間が、その下のダイヤの形に切り取られたウエスト部分が、真夏の太陽のサポートを受けて、目もくらむほどに輝いていた。
 紗津姫はその一大スペクタクルを後輩に見せつけながら、ほんの少し頬を染めていた。去年は水着を着なかったというから、こんな風に男の前で肌をさらすのは、おそらく初めてのことに違いなかった。
「もうちょっとおとなしめかと思ったら、紗津姫ちゃんってなかなか大胆ね!」
「こういうのが流行りだって、店員さんがおすすめしてくれたんです。摩子ちゃんはスポーティーでカッコいいですね」
 出水はスポーツジムで見られるようなフィットネス水着。見た目の美しさよりも機能性を重視したそれは、彼女のほっそりしたスタイルに似合っていた。
 そして――。
「どう? 遠慮なく見とれるがいいわ」
 依恋は花柄のホルターネックビキニ。紗津姫には及ばないものの、高校生の平均を遙かに上回るサイズのバストが、たっぷりと強調されている。加えてぴっちりしたボトム部分も、セクシーレベルを一段階アップさせていた。
 いつぞやの和服のとき以上だ。こうまでこの幼馴染に見とれてしまったのは、初めてかもしれなかった……。
「アイドルグループのグラビア撮影って言われても、全然不思議じゃないですねえ」
 事前に依恋から聞いたとおり、スクール水着を着用した金子は、いろんな意味で四人の中では差別化が図られていた。強すぎる刺激をやわらげる緩衝材になりそうである。
 さてそれより、これからどうすればいいのか。先輩の水着が楽しみ、それだけを考えていて具体的な行動を何ひとつ考えてはいなかった。
 先輩を楽しませる最善手は何か――と思っていた矢先。
「来是、泳ごうよ!」
 依恋が力強く手を引っ張る。砂浜が照り返す陽光で、天真爛漫な笑顔がいっそう華やかにきらめいていた。そして一歩ごとに無防備に揺れまくるバスト。
 背後で微笑む紗津姫を振り返りながらも――依恋の魅力に抗えず引っ張られる自分に、来是は形容しがたい感情を抱いていた。

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