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夕食後に女子三人も順番に入浴して、寝間着姿になった。
「碧山さん、ネグリジェとはまたセクシーな!」
「ふふん、あたしだから似合うのよ。金子さんはまあ、なんというかユニークね」
「そうでしょうそうでしょう? ネットだけで売っていた限定品なんですよー」
金子は美少年のアニメキャラ(しかもふたり)がプリントされたパジャマである。そういった嗜好を持つ女性のためのニッチな商品なのだろう。
「紗津姫さんは紗津姫さんで、野暮ったすぎるわよ。単なるピンク一色だなんて」
「家でしか着ないから、どうしても適当に選んじゃいますね。……でも今は私が目立っちゃダメでしょう?」
「それは、まあ」
一部よくわからない会話があるのはおいといて、来是は紗津姫で存分に目の保養をさせてもらった。パジャマに包まれた大きすぎるバストは、もう破壊力ありすぎだった。下手したら全裸よりもエロい。
ああ、もっと見ていたい。しかし当然、その願いは叶わない。
「紗津姫さんは金子さんと一緒に、前みたいに和室で寝てね」
「わかりました」
「き、来是はあたしの部屋よ。いいわね?」
「おおお? なんて大胆、剛胆!」
「妙な勘違いしないでくれよ。寝床まで一緒ってわけじゃないんだから」
「なあんだ、てっきり勝負を仕掛けるつもりなのかと」
「なんの勝負だ?」
今日一日で、金子由良という女の子の人となりがだいぶわかってきた。地味なルックスとは裏腹に、場を賑やかにさせる才能がある。思いついたようにBLネタを絡めてくるのが困りものだが、将棋部の仲間としては申し分ない。今後もいい付き合いができそうだ。
二階の依恋の部屋に移動する。
依恋が来是用の布団を運び込み、自分のベッドの側に敷く。来是は毛布の中に下半身を潜り込ませると、携帯電話を取り出した。
「何をやってるの?」
「将棋アプリだよ。毎日実戦形式の詰将棋が更新されててさ」
「へえ、ちょっと見せて」
「あ、おい」
依恋が近づいて端末を覗き込んできた。
「そんなにくっつくなよ」
「こうしないと見られないじゃないの」
グッと体に当たってくる。ネグリジェの内側の、紗津姫ほどのボリュームではないものの充分に大きい、とても柔らかいふたつの球体が。しかし依恋はまるで意に介していない風だ。
いくらただの幼馴染とはいえ――おっぱいはおっぱいなのだ。こうも密着されては気恥ずかしい。
「これ、最初は飛車を切るんじゃないの? 玉は下段に落とせってやつ」
「そ、そうか? ……あ、本当だ」
「えへへ。最近は毎晩詰将棋をやってるのよ。頭の体操にもいいわよね」
「俺は7手詰が限度だよ。でも先輩だったら、もっと長くてもあっさり解けちまうんだろうな」
「……紗津姫さんの話は別にいいじゃない」
依恋は密着したまま離れようとしない。
もうお互い子供ではないのだから、人に見られたら誤解されるようなことはやめるべきだ。しかしその感情とは別に――純粋に気持ちいい。
もうちょっとこのままで、などと思ってしまう。少なくとも迷惑だからと振り払うようなことではない。
依恋は本当に女らしい体つきに成長している。最近は性格のほうも、だんだんと女らしいものを身につけようとしていて。ちょっと前からは想像もできないほど、可愛いやつに――。
「って、何を考えているんだ俺は」
「どうしたの?」
「どーもしない」
「……言いたいことがあるなら言ったら?」
依恋の言葉は、少し遠慮がちだった。
「別に言いたいことなんて……いや、あるか」
「え?」
「今日はありがとうな。いろいろ世話してくれて」
「……っ! と、当然よ。ホストとして当たり前のことをしただけなんだから。お礼を言われるようなことじゃないわ」
依恋の頬は瞬時に紅潮する。ふいに褒められると慌てふためくところも、妙に可愛らしく思った。
……どうやら認めなければいけない。
依恋は可愛いやつだ。紗津姫とはタイプが違うが、彼女に匹敵するほど、女の子としての魅力を備えつつある。そう思うと、体に当たる胸の膨らみが、ことさら意識されて仕方がなかった。
「あー、明日は朝八時から勉強開始だっけ? そろそろ寝ようぜ」
アプリを終了する。来是は依恋から顔を背けて、全身を布団に潜り込ませた。
「まだ寝るには早いのに」
依恋はなんだか不満そうで、しばらく電気を消さずにいた。それからベッドの上で美容体操を始めて、少し熱っぽい吐息とギシギシいう音が響いていた。
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