【学園魔法ラノベ】オンリー☆ローリー!

オンリー☆ローリー!〈2〉 Vol.8

2014/02/24 18:00 投稿

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「まず言っておきたいのだが、私個人としては、君の境遇に同情はしていない。一般人が我々魔法使いの世界に巻き込まれるという事態は、特に珍しくないのでな」
「……まあ、そんなことは期待していませんでしたけど。よくあることなんですか」
「神楽だって、もともとは魔法と縁もゆかりもない一般家庭の生まれなんだぜ。とある不幸な事件がきっかけで魔力に目覚め、以来IMPOの戦士になった」
 その不幸な事件とやらには触れないほうがいいのだろう。それよりもさっそく聞きたいことが浮上してきた。
「魔力って、ある日突然目覚めるようなものなんですか? ……僕にはそういう才能はないって、前に先生言ってましたけど」
「うん、自分でも知らないうちに魔力の片鱗を秘めている人間は多いんだ。それが強烈な魔法を目の当たりにするだとか魔力を浴びるだとか、いろんなきっかけでスイッチが入ってしまうわけ」
 メルティは言うまでもなく、父親が魔法の研究者だったから、幼い頃から魔法は日常だった。崇城も両親がIMPOだから、魔法の存在を疑問に思ったことはないと語っていた。
 しかしこの雪街のようなケースもあるのだ。本人の意思とは無関係に、得体の知れない魔法の世界に引き込まれた人は他にも大勢いる。
 自分だけが特別数奇な運命を辿ったわけではない。そう思うと、少し複雑だった。
「それからの人生は、当人次第だね。自分の魔法を一生秘密にして、変わらず一般人として過ごすか。せっかくの力をどうにか役立てようと頑張るか。神楽は後者だったわけだ」
「私には選択の余地はなかったからな。だが場合によっては、そのタイプがもっともわずらわしい」
「というと……」
「自分には誰かを守る使命があるなどと勘違いして、半端な実力を振りかざすような輩だ。我々にとっては邪魔でしかないし、時として対立することもある。そうなれば、無駄に血が流れる」
 実際にそういうことがあったのだろう。だから先回りして言っておく。
「ぼ、僕はそんな大それたことは考えてませんから」
「ああ。《エターナルガード》と《ピュアハート》。君がメルティから与えられたというアイテムは、報告のとおりだとすれば確かに驚異的だ。しかしIMPOに仇なそうというのでなければ静観するつもりでいる」
「そうしていただければ……。あれ、ピュアハートの効力が発揮されたことはまだないはずだよな。そもそもピュアハートのこと、崇城さんに話したっけ?」
「そ、そんなことはどうでもいいでしょ! 話の腰を折らないで!」
 崇城の思わぬ迫力にたじろいでいると、雪街はメルティに鋭い視線を向ける。
「お前はこの少年を使って、娯楽に興じたいそうだな」
「うん。人を楽しませるのは、気持ちのいいことだよ。君らには縁のないことだろうけど」
「繰り返すが、我々の邪魔にならないのであれば静観する。……大五郎殿。メルティに監視をつけるというのは、IMPO発足以来のルーティンワークらしいですが」
「おう、最初にその任務に就いたのは俺だ。あれから五十ウン年、こいつに振り回された同胞は数知れないぜ」
「しかし、その同胞に危害を加えたことはない」
「朱美嬢ちゃんをカウントしないならな。くく」
 ニタニタする一本杉に、ぷるぷると怒りを抑える崇城。何の言葉もかけてやれないのが辛かった。
「……今の我々に、余計なリソースを割いている余裕はない。もはやこれ以上監視する必要もないと思うのですが」
「俺ぁ反対しないぜ。一度として犯罪行為に手を染めた形跡がないのは確かだし、不老長寿の謎も解けたしな。この坊主と嬢ちゃんのおかげで」
「そういうわけだ、朱美。任務を途中放棄したことで負い目を感じていたかもしれないが、任務そのものがなくなれば、もう思い煩うことはないだろう?」
 雪街の目元が、わずかに優しくなった気がする。崇城にとっても予想しえない展開だっただろう。まばたきを繰り返し、先ほどの怒りとは違う感情で頬を紅潮させていた。
「そ、それは……ありがとうございます。でも本部の了解は得られるのでしょうか」
「そこをどうにかするのが管理職の役目だ。若いお前は目の前のことに集中すればいい」
「……はい!」
 崇城は威勢よく頷く。
 彼女の重荷が、ひとつ取れた。それだけを理解した零次は、気の利いた言葉のひとつでもかけようと思った。そして彼女との距離を縮めるチャンスに……。
 と、メルティがムギュッと腕にしがみついてきた。
「えへへ。うっとうしい監視がなくなってよかったね」
「いや、僕には関係ないことでしょう?」
「大ありだよ。ラブホに入るとこを見られるとか、お互い恥ずかしいだろ?」
「入りませんよ! み、みなさん誤解しないでください! 僕と先生はそんなんじゃないですから!」
「いいんじゃないの。あなたたち、本当に似合いのカップルだから!」
 冷たすぎる視線を向けられ、零次はもう泣きたくなった。

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