本連載を初めてお読みになる方は<孫子の投資法その1>を先にご覧くださ
い。 http://okuchika.jugem.jp/?eid=4482
■ものまねこそ成長の原動力である
◎敵の状況を知って、味方の事情も知っていれば100回戦っても何の危険もない。逆に敵をよく知らなく、味方の事情も知らなければ、戦うたびにとても危険だ。
現代は、インターネットをはじめとする通信網によって瞬時に情報が飛び交う時代です。しかし、「情報」というものはどの時代においても勝負を決する極めて重要な要素であり、孫子の時代においてもその事実は変わりませんでした。
現在、敵に関する情報収集の重要性はよく認識されていて、頻繁に行われます。大企業などでは、多額の費用をかけて調査会社やコンサル会社に、競合他社や 業界の情報を集めるよう依頼します。しかし、その高価な情報が「勝利=企業の競争力を高める」ために有効活用されているかどうかはかなり疑問です。
特に、競合他社の長所はなかなか自社の戦力に組み入れることができません。なぜなら、相手の長所を取り入れるということは、少なくともその部分においては相手が自分よりも優れているということを認めることだからです。
よく、中国や韓国は日本の物まねをして成長したといわれます。確かに、彼らは日本の模倣をしてきましたが、それは彼らが「日本(人)は自分たちよりも優 れている」ということをごく当たり前のこととして受け入れていたからです。逆に日本が中国や韓国の物まねをすることを考えてみれば(そのような必要がある かどうかは別にして・・・)、模倣することの心理的抵抗の大きさがよくわかると思います。
バフェットの投資先の一つであるウォルマートの創業者サム・ウォルトンは、物まねの天才として有名です。米国の片田舎でたった1軒の店をスタートしてか ら、とにかく競合他社の店舗を徹底研究し、その内容を詳細にメモに取りました。そしてその優れた内容を、自分の店ですべて実行したことがウォルマート大躍 進の原動力です。
まだウォルマートがちっぽけな企業グループだった時に、当時の米国小売界の巨人Kマートの会長に頭を下げて、何回も教えを乞うたのですが、そのKマート の会長に「サムのウォルマートは、今は取るに足らない存在だが将来恐ろしい敵になる」と言わしめたエピソードもあります。
また、戦後の日本の軌跡の成長=高度成長においても、欧米の模倣が重要な役割を果たしました。ところがバブル経済の頃から「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などとおだてられたこともあって、日本の模倣する力は急速に衰えてしまいます。
それに対して、当時経済が行き詰っていた米国は、プライドをかなぐり捨て、躍進を続ける日本企業に教えを乞いました。カイゼンやカンバン方式(ジャス ト・イン・タイム)は、米国のビジネス界でも普遍的な言葉です。実際、ウォルマートのロジスティクス(物流戦略)はカンバン方式に基づいています。
米国勢は、日本の製造業の優れたシステムを学び、それを小売り・サービス業に応用することによって復活を遂げたのです。
ところが、日本の小売り・サービス業の大部分は、島国日本の中で(製造業が海外で稼いでくれるおかげで)潤っていたため、すぐ隣にある世界中の企業の垂涎の的である素晴らしいシステムから学ぶことはほとんどありませんでした。
最近バフェットの投資先であり、世界・米国を代表する企業であるコカ・コーラ、IBM、アメックスなどの経営内容を検証しましたが、「素晴らしい」の一 言に尽きます。大変残念なことですが、サービス・小売り、そして金融分野での米国勢に太刀打ちできる日本企業は今のところありません。
しかし日本でも、サム・ウォルトンのようなハングリーな経営者が競争相手の米国企業にくらいついてその長所を吸収し、最終的には競争相手を蹴散らす勝者になることを期待します。
■自分を知ることが一番難しい
「自分を知ることが一番難しい」というのは多くの方が実感するところだと思いますが、会社(企業組織)においても同じです。社長(マネージャー)は孤独な仕事だといわれますが、それは部下が社長(マネーシャー)に腹を割ってざっくばらんに話をするのが難しいからです。
上司の機嫌を損ねたくない部下は、社長(マネーシャー)に心地の良い情報だけを伝えがちですが、それでは自ら(自分の会社)を正確に把握するのは困難です。全体像を知るためには、部下に「都合の悪い情報」も包み隠さず報告させる必要があるのです。
バフェットは、買収先の企業運営に口を出さないことで有名ですが、何もしないわけではありません。買収先企業の社長には、定期的に詳細な報告を求め、状況はすべて把握しています。
大事なのは、どのような悪い内容の報告を受けても、傘下企業の社長を非難したり小言を言ったりすることが無い点です。バフェットも人間ですから腹に据え かねることもあるでしょうが、もしそこで傘下企業の社長を叱ってしまったら、次から悪い内容の報告をしなくなるので、じっと耐えて「建設的な解決策」を 「提案」として部下の社長に伝えます。
バフェットは、「どのような問題にも解決策はあるが、問題そのものの存在を知らなければ解決しようが無い」と言います。<自ら(の問題)をきちんと認識してこそ、勝利できる>と理解している点で、バフェットは<孫子の教えをマスターしている>と言えるかもしれません。
(大原浩)
☆8月26日に「バフェットに学ぶ【永久不滅投資法】」-損を出さないで永遠に資産を増やすことは可能か-(同友館)が発刊されます。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4496050803/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=7399&creativeASIN=4496050803&linkCode=as2&tag=iforum-22
☆BIg tomorrow 9月号(7月25日発売)に、「バフェット流」に関するインタビュー記事が掲載されています(評判がよかったとのことで、9月18日発売の増刊号に再掲載予定です)。
☆「メビウスの資産倍増計画」に出演しました。テーマはスバリ「バフェット」です。
https://www.youtube.com/watch?v=jBqdgHgBd78&feature=youtu.be
【大原浩のバフェットの本】
★日本株で成功する バフェット流投資術 (日本実業出版社)
★企業情報を読み解け! バフェット流<日本株>必勝法=永久保有銘柄を見抜く18のポイント(日本実業出版社)
★『勝ち組投資家は5年単位でマネーを動かす』(PHP研究所)
★「バフェットからの手紙」に学ぶ(2014)大原浩著 昇龍社<Kindle版>
★「バフェットからの手紙」に学ぶ(2013)大原浩著 昇龍社<Kindle版>
http://goo.gl/iz1GUV
★GINZAX30社! 大原浩著 昇龍社<Kindle版>
上巻
下巻
GINZAXグローバル経済・投資研究会・代表大原浩著
*ブログ「大原浩の金融・経済地動説」http://www.actiblog.com/ohara/
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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■ものまねこそ成長の原動力である
◎敵の状況を知って、味方の事情も知っていれば100回戦っても何の危険もない。逆に敵をよく知らなく、味方の事情も知らなければ、戦うたびにとても危険だ。
現代は、インターネットをはじめとする通信網によって瞬時に情報が飛び交う時代です。しかし、「情報」というものはどの時代においても勝負を決する極めて重要な要素であり、孫子の時代においてもその事実は変わりませんでした。
現在、敵に関する情報収集の重要性はよく認識されていて、頻繁に行われます。大企業などでは、多額の費用をかけて調査会社やコンサル会社に、競合他社や 業界の情報を集めるよう依頼します。しかし、その高価な情報が「勝利=企業の競争力を高める」ために有効活用されているかどうかはかなり疑問です。
特に、競合他社の長所はなかなか自社の戦力に組み入れることができません。なぜなら、相手の長所を取り入れるということは、少なくともその部分においては相手が自分よりも優れているということを認めることだからです。
よく、中国や韓国は日本の物まねをして成長したといわれます。確かに、彼らは日本の模倣をしてきましたが、それは彼らが「日本(人)は自分たちよりも優 れている」ということをごく当たり前のこととして受け入れていたからです。逆に日本が中国や韓国の物まねをすることを考えてみれば(そのような必要がある かどうかは別にして・・・)、模倣することの心理的抵抗の大きさがよくわかると思います。
バフェットの投資先の一つであるウォルマートの創業者サム・ウォルトンは、物まねの天才として有名です。米国の片田舎でたった1軒の店をスタートしてか ら、とにかく競合他社の店舗を徹底研究し、その内容を詳細にメモに取りました。そしてその優れた内容を、自分の店ですべて実行したことがウォルマート大躍 進の原動力です。
まだウォルマートがちっぽけな企業グループだった時に、当時の米国小売界の巨人Kマートの会長に頭を下げて、何回も教えを乞うたのですが、そのKマート の会長に「サムのウォルマートは、今は取るに足らない存在だが将来恐ろしい敵になる」と言わしめたエピソードもあります。
また、戦後の日本の軌跡の成長=高度成長においても、欧米の模倣が重要な役割を果たしました。ところがバブル経済の頃から「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などとおだてられたこともあって、日本の模倣する力は急速に衰えてしまいます。
それに対して、当時経済が行き詰っていた米国は、プライドをかなぐり捨て、躍進を続ける日本企業に教えを乞いました。カイゼンやカンバン方式(ジャス ト・イン・タイム)は、米国のビジネス界でも普遍的な言葉です。実際、ウォルマートのロジスティクス(物流戦略)はカンバン方式に基づいています。
米国勢は、日本の製造業の優れたシステムを学び、それを小売り・サービス業に応用することによって復活を遂げたのです。
ところが、日本の小売り・サービス業の大部分は、島国日本の中で(製造業が海外で稼いでくれるおかげで)潤っていたため、すぐ隣にある世界中の企業の垂涎の的である素晴らしいシステムから学ぶことはほとんどありませんでした。
最近バフェットの投資先であり、世界・米国を代表する企業であるコカ・コーラ、IBM、アメックスなどの経営内容を検証しましたが、「素晴らしい」の一 言に尽きます。大変残念なことですが、サービス・小売り、そして金融分野での米国勢に太刀打ちできる日本企業は今のところありません。
しかし日本でも、サム・ウォルトンのようなハングリーな経営者が競争相手の米国企業にくらいついてその長所を吸収し、最終的には競争相手を蹴散らす勝者になることを期待します。
■自分を知ることが一番難しい
「自分を知ることが一番難しい」というのは多くの方が実感するところだと思いますが、会社(企業組織)においても同じです。社長(マネージャー)は孤独な仕事だといわれますが、それは部下が社長(マネーシャー)に腹を割ってざっくばらんに話をするのが難しいからです。
上司の機嫌を損ねたくない部下は、社長(マネーシャー)に心地の良い情報だけを伝えがちですが、それでは自ら(自分の会社)を正確に把握するのは困難です。全体像を知るためには、部下に「都合の悪い情報」も包み隠さず報告させる必要があるのです。
バフェットは、買収先の企業運営に口を出さないことで有名ですが、何もしないわけではありません。買収先企業の社長には、定期的に詳細な報告を求め、状況はすべて把握しています。
大事なのは、どのような悪い内容の報告を受けても、傘下企業の社長を非難したり小言を言ったりすることが無い点です。バフェットも人間ですから腹に据え かねることもあるでしょうが、もしそこで傘下企業の社長を叱ってしまったら、次から悪い内容の報告をしなくなるので、じっと耐えて「建設的な解決策」を 「提案」として部下の社長に伝えます。
バフェットは、「どのような問題にも解決策はあるが、問題そのものの存在を知らなければ解決しようが無い」と言います。<自ら(の問題)をきちんと認識してこそ、勝利できる>と理解している点で、バフェットは<孫子の教えをマスターしている>と言えるかもしれません。
(大原浩)
☆8月26日に「バフェットに学ぶ【永久不滅投資法】」-損を出さないで永遠に資産を増やすことは可能か-(同友館)が発刊されます。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4496050803/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=7399&creativeASIN=4496050803&linkCode=as2&tag=iforum-22
☆BIg tomorrow 9月号(7月25日発売)に、「バフェット流」に関するインタビュー記事が掲載されています(評判がよかったとのことで、9月18日発売の増刊号に再掲載予定です)。
☆「メビウスの資産倍増計画」に出演しました。テーマはスバリ「バフェット」です。
https://www.youtube.com/watch?v=jBqdgHgBd78&feature=youtu.be
【大原浩のバフェットの本】
★日本株で成功する バフェット流投資術 (日本実業出版社)
★企業情報を読み解け! バフェット流<日本株>必勝法=永久保有銘柄を見抜く18のポイント(日本実業出版社)
★『勝ち組投資家は5年単位でマネーを動かす』(PHP研究所)
★「バフェットからの手紙」に学ぶ(2014)大原浩著 昇龍社<Kindle版>
★「バフェットからの手紙」に学ぶ(2013)大原浩著 昇龍社<Kindle版>
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★GINZAX30社! 大原浩著 昇龍社<Kindle版>
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GINZAXグローバル経済・投資研究会・代表大原浩著
*ブログ「大原浩の金融・経済地動説」http://www.actiblog.com/ohara/
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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