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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『攻殻機動隊』解説:意味深な会話と背景から、緻密な世界観を読み解く」

2019/05/15 07:00 投稿

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岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/05/15

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2019/04/28配信「『攻殻機動隊講座』第2話徹底解説 無料公開は初です!」の内容をご紹介します。
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2019/04/28の内容一覧


『攻殻機動隊講座』第4回:第2話 SUPER SPARTAN

 さて、この「02 SUPER SPARTAN」というのは、雑誌に連載していた時の実質的な第1話だったんですね。
 単行本化された時に、描き下ろしとして、この前のエピソードがいろいろ付いたんですけども、これが第1話だったので、作者としても、まだまだ手探りでサイバーパンク表現というのを模索しています。

(パネルを見せる。2ページ目)
 「フチコマ、確認(インフォメーション)は!?」と少佐が聞くと、それとは別に、「バトー」という、彼女が一番信頼している部下が近づいてきて、合図をします。

 この合図というのは何かというと「今ここで話すことを部長には一切聞かれたくない、知られたくないから、接続していいか?」というのを指で合図しているんですね。
 それに対して、少佐は目線で「OK」と言っているので、バトーは首の後ろからケーブルを出して、彼女はうなじを開く。このうなじに有線ケーブルを差し込むんですね。

 この「有線ケーブル同士の接続」というのは、まあ「無線のWi-Fiは盗聴されやすい」みたいなことをよくいいますけど、それと似たようなものですね。
 この世界においても、こういった有線ケーブルで直に繋ぐことこそが最もセキュリティの高い通信方法だというおとがわかります。
 ただ、後になって、この『攻殻機動隊』には、こんなシーン、一切出てきません。ということは、やっぱり作者自身も「ネットのセキュリティとは何か?」ということについて、この時には、まだそんなに考えてなかったんですね。
 純粋に、ずーっと無線で話しているところに、こういう表現を入れると、「ああ、一旦、他の人間には聞こえない裏のやり取りをするんだな」というのが絵としてわかりやすく成立するからやっているわけです。

 では、次の段に行きます。はい、これも後の『攻殻機動隊』ではあんまり出てこないシーンなんですけども。コードをうなじに差し込まれた少佐が「うン!」と声を上げます。


草薙素子:うン!
バトー:いやらしい声だすな、気色悪い。
草薙素子:この前埋め込んだ聴覚素子(デバイス)が接触不良なのよ! で?
バトー:公安部(ポリコ)のサル部長はキレモノのクソ野郎だ。取り引きに賛成は3、反対2、棄権1。


 ということで、バトーが皆の意見を素子に知らせます。
 これは何かというと、「要求した予算を通したとしても、公安部の部長というのは、あいつは頭がキレるやり手だ。だから、結局、俺達は彼に利用されることになる。たとえ自分達が望んでいた部隊の創設が出来たとしても、あの部長と取り引きするのはやめた方がいい」ということを、皆の意見として言ってるんですね。

 さっき言った「ちょっと珍しい」というのは何かと言うと、こういう「身体に埋め込まられたデバイスが接触不良を起こしている」という表現は、ここから後の『攻殻機動隊』では、ほとんど出てこないんですね。初期の『攻殻機動隊』にのみ……というか、この第2話のみ、接触不良云々の話が出てきちゃうんです。
 「この前埋め込んだ聴覚デバイスが接触不良だ」ということは、つまり「少佐とバトーとが有線で会話するための端子が接触不良を起こしている」と言ってるんですね。

 これを見ると、本当にこのページ、丸々半分を使って「セキュリティとは何か?」というのをやってるんですね。
 この『攻殻機動隊』の後のエピソード、第2話や第3話では「相手に嘘の現実を見せる」ということをする時に、この首の後ろの接触端子を使う場合が多いんです。
 なので、ここで1回、それを見せるということをやってます。

 さて、続くセリフ。


草薙素子:正式な特殊部隊の設立を内務大臣(ボス)に申請するには、公安部の「協力」も必要だわ。
バトー:奴は我々に独立より「専属」を望んでいる。
草薙素子:だったら、なおさら退けない事ぐらい奴も計算づくよ。


 というようなことで、荒巻と取り引きをするかしないかで、部下とトップとの間で話をしているんですね。
 あの、別に草薙素子というのは、部下の多数決によって意見を変えたりしない。ただ単に、意見として聞いているだけなんですよ。
 草薙素子の考えとしては「正式に特殊部隊を作るんだったら、大臣の許可が降りて、予算が降りるだけは済まない。そうではなくて、公安部のキレモノのサル部長、この人の協力も必要だ。だから、協力するフリをしよう」と言っているわけです。
 でも、彼女が信頼しているバトーは「いや、あいつは我々を独立部隊として泳がすつもりはない。専属して自分の下に組み込むつもりだ」と言って、反対している。
 そんなやりとりがあります。

 2人がこんなやりとりを交わしている間に、このフチコマというロボットは、ずーっと、さっき命じられた予算が通ったどうかの確認作業をさせられているわけですね。

(パネルを見せる。3ページ目)
 「国家審議委員会に予算通過のレポートあり。再度確認──」と。この「再度確認」というのは「2回確認した」という意味です。
 フチコマがレポートを見つけました。「特殊部隊設立のための予算というのが、ちゃんと通過してます」ということをフチコマが確認したので、この瞬間、草薙素子はサル部長との取り引きに乗るわけですね。
 「よし! 桜の24時間監視は中止。ヌードバーに連れてってやるぞ!」と。ここらへんはもう、単なる勢いで言ってるってやつです。別に、ヌードバーに行くわけでもなんでもないです。

 ということで、フチコマに乗る。
 前かがみに乗って、ここにスロットルがあって、サドルがあって、燃料タンクみたいなものがあるという。この乗り方でわかる通り、実はこのフチコマというのは、ここではバイクのアナロジーなんですね。

 後のエピソードには、いろんなもののアナロジーとして出てくるんですけども、第1回の段階では、まだまだ、このフチコマっていうのは、作者自身が大好きなバイクのアナロジーとして出来ています。
 こういうふうに、上半身をもたれ掛けるように乗って、背中の方に接触端子がぐっと近づいてくる。さっきやった首筋の1箇所だけで繋がるのではなく、脊髄に到るところまで全部繋がる。そんな「巨大なコンセントがフチコマの方から近づいてきて、草薙素子の首の後ろから脊髄の真ん中辺まで、いろんなところでガチャっと繋がる」というシーンがあります。あんまりそれを細かく描くとグロくなるので、見せてないんですよね。
 その後、蓋が閉まりつつあって、車輪が回って、ガーッと走り出す。「退屈で死ぬかと思った」というようなことを部下たちは言っています。
 「暖機しておきゃよかったな」と。この「暖機」というのは、「エンジンを予め掛けておいて温める」ということなんですけど。そういうふうな部下たちのちょっとした軽口とかも出しながら、ようやっと動くシーンに行きます。

 このマンガにおいて、こういった「動くシーンが出てくるまでの会話」が割りと重要なんですね。
 そこまでで、ほぼ設定説明をやってしまって、そこから先は走りながらの説明になるので。
 ここから先は、ここまでの話と流れが違ってきます。ここまでは止まったフレームの中でのお互いの会話ですけども、ここから先は、動いている絵の中でのセリフのやり取りになります。

(パネルを見せる。4ページ目)
 ということで、まだ日本には存在ない「新居浜」というところを走っているわけですね。

 なぜ、こういう描き方をするのかというと。この風景、山みたいに見えるけれども、木が1本も生えてません。縁が削られたようになっているんですね。

 実は、この『攻殻機動隊』というのは、10年か20年前に世界大戦があった後の世界なんですね。その世界大戦で、日本は核攻撃を受けるかなんかして、首都である東京がなくなってしまった。

(続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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