岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/03/15

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2019/02/17配信「『ファースト・マン』は後々評価されるが、今は当たらない理由」の内容をご紹介します。
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2019/02/17の内容一覧


月軌道ランデブーを実験するためのジェミニ計画

 こいつは、僕が昔、プロデュースした『王立科学博物館』という食玩シリーズの中に出てくるジェミニ8号のフィギュアです。
(模型を見せる)
 こういうふうに、2つのフィギュアがくっついてるんですけど。前にある細長いやつが「アジェナ衛星」です。
 後ろにあるのが「ジェミニ8号」、後にニール・アームストロングが乗り込むやつで、こいつはアジェナ衛星の後ろの部分にガチャンとドッキングできるようになっています。
 こうやって、一緒に近くの距離を飛ぶランデブーをした後に、ガッチャンコとドッキングする。これがジェミニ計画の最大の目的だったんですね。

 というのも、月軌道ランデブー方式というのは「月の衛星軌道まで行って、それまで重たかった地球から持ってきた宇宙船のほとんどを置いて、軽い軽い月着陸船だけで月面に降り、もう一度、月面から上がって来て、月の周回軌道を秒速何キロかで回っている司令船に近づいてドッキングしなきゃいけない」という、もうメチャクチャ難しいことをやろうとしているわけなんです。
 だから、そのための訓練とか実験のために、このジェミニ宇宙船でのテスト飛行というのが絶対に必要だったんですね。
 まあメチャクチャ難しいし面倒臭いです。ランデブーに関してはそのうち機会があったら、「なぜ面倒臭いのか?」も話したいと思いますけども。たぶん、それは、ニール・アームストロングよりもっと厄介な男、バズ・オルドリンを説明する時に話すことになると思います。
 このバズ・オルドリンというのは、ランデブー・ドッキングの専門家なんですね。
 友達の家に遊びに行った時、奥さんから「主人はまだ帰ってません」と、遠回しに「だから帰ってください」と言われた時、バズ・オルドリンは「まだ帰ってないんですか? ……それでは奥さん」と、そのままその家に居座って、奥さんに対して4時間の間、ランデブーとドッキングの数学的講義を始めたそうなんです(笑)。
 奥さんは「帰ってよー!」と思ってるのに、バズは講義を始めたら、相手が聞いていようと聞いてまいと関係ないと。「おい、それ、聞いたことがあるぞ。それ、宮崎駿と同じだよ!」という、まあ、そんな男だったんですけど。
 そのうち、そういうことで話そうと思います。

 さて、人が乗る最初のジェミニ宇宙船、ジェミニ3号は、1965年になって、やっと打ち上がりました。
 船長はガス・グリソムです。
 なぜかというと、ジェミニ宇宙船は、「オリジナル・セブン」という、NASAのマーキュリー計画のテストパイロットとして最初に選ばれた7人の宇宙飛行士の1人、ガス・グリソムが自分で開発して設計した宇宙船だったんですね。
 だから、みんなは「ガス・モービル」と言っていたくらいです。バットマンの乗る車である「バット・モービル」と同じように「ガスが作った宇宙船だ」と。
 ちなみに、ガス・グリソムは、そのままアポロ宇宙船の設計にも参加していました。

 だから、ニュー・ナインと呼ばれたニール・アームストロング達第2期メンバーは、みんなピンと来ました。
 「ああ、そうか。NASAは第1期の宇宙飛行士のジョン・グレンが引退してしまった今、国民的英雄であるガス・グリソムを月着陸の船長に決めたんだ」と。
 これは、その通りです。NASAの上層部では、すでに「月着陸を行うのは、まあガス・グリソムだろうな」と決めていたんです。
 彼が一番、いわば先輩だし、貢献度が高いし、ジェミニ宇宙船の開発にも宇宙飛行士としてはただ1人で参加して作ってるし、設計に関わっているし、アポロ宇宙船もガス・グリソムが作ったようなもんだし、と。
 「だから、彼こそが月着陸の人類第1号にふさわしい」と考えていたので、ジェミニの有人飛行の最初のパイロットにも選んだんですね。
 「ジェミニ計画で最初に飛行させて、ジェミニの後半でも、もう1回また飛行させて、アポロ1号のパイロットにも指名して、アポロ8号9号10号あたりの、実際に月面に着陸する宇宙船にもガス・グリソムを乗せよう」と考えていたんです。

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