岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/02/28
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この記事は、SBクリエイティブから発売された岡田斗司夫の『スター・ウォーズに学ぶ「国家・正義・民主主義」 岡田斗司夫の空想政治教室』から、一部抜粋してお届けします。
政治ニュースを追い掛けても政治はわからない
私には今の日本の政治がわかりません。実は興味がないんです。
でも、「政治」について、私に解説してほしいとよく頼まれます。
確かに、最近はものすごい勢いで国内外の政治が動いています。
アメリカでは、泡沫候補だと思われていたトランプが共和党の大統領候補になりました。世界中でテロが続発していますし、トルコではクーデター未遂が起こりました。
日本国内でも、参院選や都知事選と選挙が続きました。アベノミクスは続けるのか修整するのか、憲法改正はするのかしないのか。
そんなニュースが連日新聞やテレビを賑わせています。いったいどういう仕組みで、こういう事象が起こっているんでしょう?
くり返しますが、私は政治がわかりません。池上彰さんの政治知識を10段階評価で10とすれば、ニュースをそこそこ見ている人は6か7かな。私はせいぜい2か3くらいでしょう。
あ、でも現実の政治を解説するのではなく、私の得意なマンガやアニメで例えてみ ることはできるかもしれない――。
とは言っても、政治の本質がわかっていないと例え話もできません。
私は、自分がよくわかっていないことについて考える時、「そもそも、これは何なのか?」を問いかける癖を付けています。個々の事象を追い掛けることも重要なんですが、その一段、二段深いところに何があるのかを見極めないと、結局ニュースに振り回されるだけになっちゃうんですね。
本質を考える際に役立つ1つの方法は、物事を要素に分解するということ。
きれいに分解できなくてもかまいません。だけど、無理矢理にでも要素に分解してみることで、考えを先に進めることができるんですよ。
じゃあ、政治とはそもそも何のために行われるのでしょうか?
とりあえず私は、政治の役割を「正義」、「分配」、「救済」、「保障」、「祭祀」に分解してみました。1つずつ見ていきましょう。
「正義」がなければ、国民はついてこない
まず、政治には「正義」が求められます。
正義が何なのかは、ここでは問題にしません。大事なのは、国民が自分たちの属している国家や組織が正しいと感じられるかどうかです。
19世紀、ドイツ南部のバイエルン王国には、ルートヴィヒ2世という王様がいました。ルートヴィヒ2世はとにかく音楽と建築が大好き。作曲家のワーグナーを招いたり、ノイシュバンシュタイン城を建てたことで有名です。それだけならいいんですが、ルートヴィヒ2世の趣味は度が過ぎていました。文明化された時代にはまったく不要な、中世騎士道物語に出てくる城を山の上にいくつも建てて、バイエルン王国の国家財政を傾けてしまったんです。
ある日、ルートヴィヒ2世の水死体が湖に浮かんでいるのが発見されました。彼の死の真相は謎のままですが、まあ趣味で国を傾けた王様を臣下が暗殺しちゃったと考えてほぼ間違いないでしょう。絶対権力者である王様であっても、臣下や国民に正当性、つまり「正義」を納得させることができなければ、誰も付いてきてくれません。
どんな国であっても、国を統治する者は、自分たちのやっていることは正しいと常にアピールしなければならないんです。独裁制である北朝鮮だって、ミサイル発射をするたびに国民にアピールしていますよね。独裁制はうまくいっている時は効率的に物事がスピーディに決まるというメリットもありますが、統治者に対して反対意見があっても表明できませんから不満がたまっていく。
民主制では、政権を握っている側の正義を、反対勢力が攻撃します。多様な「正義」を戦わせて 議論できる民主制だと、無限に議論が続いたり、反論や説得やらで物事が遅々として進まず非効率 ではありますが、多くの人が「正義」を納得しや すいという点でマシな仕組みだと私は思っています。
メリットとデメリットを「分配」する
次は「分配」です。
一番わかりやすいのは、税金ですね。国民からお金を集めて、共同で使う設備を作ったり、貧乏な人を補助したりします。「機会」を分配するのも政治の役割です。誰でも議員になって政治に参加できるようにしたり教育を与えたりするのが、これに当たります。
分配するのは、「よいこと」だけではありません。例えば、人口が少ないところに原子力発電所を作り、不利益をそこに住んでいる人に被ってもらい、代わりにその地域には助成金を出す。あるいは戦争をする際に、誰を行かせるか決める。こういう「悪いこと」の分配も必要になります。
この記事は、SBクリエイティブから発売された岡田斗司夫の『スター・ウォーズに学ぶ「国家・正義・民主主義」 岡田斗司夫の空想政治教室』からお届けしました。
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