岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/11/29
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この記事は、PHP新書から発売された岡田斗司夫の新刊『ユーチューバーが消滅する未来』から、一部抜粋してお届けします。
ARがもたらす、本当の衝撃とは?
ここ数年、「AR」とか「拡張現実」というキーワードが流行っています。
『ポケモンGO』では、スマホのカメラで撮影された現実の風景にポケモンが合成されて表示されますが、あれは一番手軽なARですね。
マイクロソフトの「ホロレンズ」では、目の前の空間に情報のウィンドウを開いたり、CGで作ったフィギュアを配置するなんてことができるようになっています。
(中略)
将来的にはメガネではなく、スマートコンタクトレンズになるかもしれないし、視神経に直接信号を送り込むとか、脳内に装置を埋め込むようになるかもしれません。
次のトレンドはスマートグラスだとか、ARだというのはよく聞く話ですが、もっと重要な変化は、それぞれの人が「自分の解釈で世界を見る」ということだと思うんです。
「この世界には、美少女だけがいてほしい」とか「『けものフレンズ』のような世界で暮らしたい」人にとっては、ありのままの現実を見るより、自分の見たい世界を見ることの方がずっと大切なはずです。
これは、アニメオタクやアイドルオタクが現実逃避するのとは、ちょっと違います。
スポーツや勝負ごとの好きな人は、日常のあちこちでバトルが起こるのを見たいでしょう。ビジネスが好きな人は、お金の流れが目に見えたら面白いと感じるでしょう。
スマートグラスやARというのは、便利なツールとか、目新しいゲームとかそういうことに留まりません。この世界における現実を、たんなる「元ネタの1つ」にしてしまうんです。メガネをかけたら、自分の見たい世界、「デコられた」世界が目の前に広がるようになる。
今、現実を「デコってくれる」のはせいぜいフェイクニュースくらいですが、デコられた世界の方がメインになってきたら、どうでしょう?
「現実」を見ずに、自分だけの世界に閉じこもる人たちが増える? 人と人とのコミュニケーションが失われて、ギスギスした社会になる?
そんなことはないと思います。
だって、自分の目に映るすべての人間が美少女だけだとしたら、僕らはもっと他人に優しくしますよ。「ただしイケメンに限る」と言って、不細工な男には冷たい態度を取っている女の人だって、優しくなるはず。
そうやって「現実補正」された社会で暮らす方が、多くの人間にとっては幸せです。
「いやいや、それは幻だよ。そんな幻ではなくて、現実を見なければダメだ!」
そう反論したくなるかもしれませんね。
でも、デコられていない現実って何でしょう?
外を出歩く時、僕たちは必ず服を着ています。きちんとしたスーツを着ていると、サラリーマンっぽく見える。汚いボロを着ていると、浮浪者だと思われる。濃い化粧をしてすごいミニスカを穿いている人は─などなど、僕らは人の身なりを見て、どういう人かを判断しているじゃないですか。
その人の「本当」とは、素っ裸の状態でしょうか?
「幻を剝がして現実を見る」というのは、「道を歩いている人たちを素っ裸にしたら、本当の姿がわかる」と主張しているのと同じこと。そんなことを言われても、「バカらしい」と思うでしょ?
この記事は、PHP新書から発売された岡田斗司夫の新刊『ユーチューバーが消滅する未来』
からお届けしました。
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