岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/09/14
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2018/08/12配信「『ハウルの動く城』は、宮崎駿にとって“初の恋愛映画”であり、ジブリにとって“初の敗戦作品”だった!」の内容をご紹介します。
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2018/08/12の内容一覧
- 『ハウルの動く城』参考図書
- 幻となった「細田守版ハウル」
- 『カリオストロの城』をクラリスからの視点だけで描いたら?
- 『ハウル』に登場する魔法使いたち
- ソフィーの視線の外で綿密に組まれた『ハウル』の世界
- ハウルの世界で起きた出来事
- りんご(隣国)の旗の意味
- ストーリー解説・Aパート 「ソフィーは宮崎アニメ初の裏表のあるヒロイン」
- ストーリー解説・Bパート 「勝手に家に上がり込んで掃除をする女が一番ヤバい」
- ストーリー解説・Cパート 「クズだけど許してしまう、大人の恋愛」
- ストリー解説・Dパート 「守りたいハウルと、生きていてほしいソフィー」
- ストーリー解説・Eパート 「ソフィーは自ら魔女になることでハウルの責任を肩代わりした」
- 宮崎、高畑、細田、押井、それぞれの家族論
ハウルの世界で起きた出来事
『ハウルの動く城』は、「ソフィーから見たお話の展開」なんですよね。一見、何が起こっているのか、わかりにくいんです。
(中略)
おまけに、ナレーションも入っていないから、歴史の流れというのも見えないし、唐突な展開が連続する、ご都合主義に見えちゃうんですよ。
で、ここからが大事です。
このソフィーの視線の外にある『ハウル』の世界というのを整理するために、この世界で起きた出来事を時系列順に並べたものを作ってみました。
このプロットを見れば、全体のお話が、絶対にわかりやすくなります。
(パネルを見せる)
- 隣の国、魔法使いが王国をつくる
- ハウルの叔父、魔法書を書きかけて死ぬ
- 国王、隣国の魔法を警戒。サリマンに王立魔法学校を作らせる。ハウル、入学
- 星が落ちた夜、ハウルは星の子を助けて契約。ソフィーにより「カルシファー」と命名
- 力を得たハウル、サリマンより逃亡。サリマン、車いすの乗るほどのダメージ
- 50年前、ある生徒がサリマンから逃げて「荒れ地の魔女」になる
- サリマンのムスカ化(小姓、人を犬に)
- ハウル、魔女を誘って惚れさせて逃げる→同様の繰り返し
- サリマン、隣国の王子を魔法で襲撃。王子をカカシにする(サラエボ事件)
- 隣国との戦争(第1次大戦)開始。サリマン、ハウルの魔法力を取り戻そうとする
- 指輪の導きでハウル、ソフィーと出会う
(本編)
- 隣国の王子が戻り、サリマンは降伏文書に調印。→膨大な賠償金で国家は破産。ハウルたちは故郷を捨てて空へ
- 数年か数十年後、再びサリマンたちは戦争(第2次大戦)を開始
- 魔女のソフィーと魔法使いのハウルは、空飛ぶ城で自分たちは年を取らず優雅に暮らす。地上には干渉しない
今からこの一番上から解説していきます。
『ハウルの動く城』の世界の出来事を、時系列順にプロットとして整理すると、どうなるのか?
まず、「隣の国、魔法使いが王国を作る」ということがありました。
さっきも言ったように、魔法使いが魔法王国を作ったんですね。王子が魔法使いだから、王家の人間が魔法を使えるという「魔法先進国」です。
これに対して、ソフィーの国は魔法と科学で対抗しました。さっき言ったように『進撃』のマーレみたいな国なんですね。
そして、次に「ハウルの叔父、魔法書を書きかけて死ぬ」ということがありました。
ここはプロットとしても大事な箇所です。どういう意味かというと―――。
(パネルを見せる)
これは、子供時代のハウルの家にタイムスリップしたソフィーが目にした、机の上の様子を描いた絵コンテです。
よく見てみると、机の上には原稿のような紙の上に「文鎮」が置いてありますよね? この戦艦の形をした文鎮には、ハウルの城についている砲台とか、ハウルが好きなものが全部付いている。なので、僕は最初、この文鎮はハウルの持ち物だと思っていたんですけど。
でも、ハウルはこの時、まだ10歳くらいの男の子なんですよ。なので、こんな文鎮を持っているとは思えない。
そして、この絵コンテには、「机の上、書きかけの草稿」と書いてあります。この「草稿」というのは何かというと「出版を予定しているけれど、まだ出版されていない原稿」のことです。
つまり、これはハウルが言っていたように、死んだ魔法使いの叔父さんの遺品なんですよ。魔法使いだったハウルの叔父さんは、魔法の本の原稿を書いていたものの、出版する前に死んだんです。だから「草稿」と書かれているんですね。
では、なぜ未発表のまま死んだのかっていうと、おそらく、叔父さんは殺されたから。そして、誰が殺したのかというと、おそらくは隣の国の王家なんですよ。
理由は「魔法を文字にして出版しようとしたから」です。そういうことをされると、自分たちの国の優位性がなくなるから、妨害工作として殺されたんでしょう。
その結果、ハウルというのは隣の国を憎むようになります。
ここは押さえておかないとダメなんですよ。
でなければ、ハウルが誰を憎んでいて、誰と戦っているのかわからないんですよね。「え? サリマン先生の敵なの? 味方なの? それとも隣の国の味方なの?」って、いったいハウルはどっちの国の味方なのかわからなくなるんです。
でも、よく見ると、ハウルというのは、誰彼構わず攻撃しているのがわかるんですよ。これはなぜかというと、自分の叔父さんを殺した隣の国も憎いし、自分を縛ろうとしているサリマン先生も憎いから。そんなふうに、周りすべてが敵になっている状態なんですね。
ハウルのこういった内情は、まず「彼の叔父さんは、魔法書を書きかけて死んでしまった」という部分を押さえないと、ちょっとわかりにくいんですね。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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