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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「【ゼミ室通信】なつかしのロボットアニメ『聖戦士ダンバイン』のオープニングを解説します」

2018/08/23 07:00 投稿

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岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/08/23

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今日は岡田斗司夫のゼミ室通信をお届けします。
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世界観や人間関係ではなく、ストーリーを表現したオープニング

 今日は『聖戦士ダンバイン』のオープニングを解説します。
 よければ みなさんも映像を見ながら、解説を見てみてください。

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 だいたい80年代のロボットアニメのオープニングって、ほとんどが男性の力強い声なんですね。
 それに対してダンバインは、あえて女性のシャウト、ロックっぽい歌い方でオープニングが作られている。
 それまでのロボットアニメのオープニングって、世界観を表現したり、人間関係を表現したりしてた。
 そんな設定表現型のオープニングと違って、ダンバインは完全にストーリーを表現しようとしてるんですね。
 ではダンバインはどのようにストーリーを表現しようとしていたのか。

 それを聖戦士ダンバインのオープニングで説明しますので、みなさんも見てみてください。
 一番最初にエフェクトからダンバインというロボットが出てきます。
 ロボットというよりは虫に近いんですけども、そのダンバインのシルエットが出てきて『聖戦士ダンバイン』のロゴが現れます。

 そのあと、門のようなところをダンバインを搭載した飛行機 “フォウ” が飛びます。
 「オーラロードが開かれた~」の所。
 この少し前ぐらいから、富野由悠季アニメのオープニングは空中に建物を描くようになったんですね。
 いきなり空中に門が浮いていて、その門の影だけが空の上をはしってる。
 これは本当を言えば、地面を描いて、門を描かなきゃいけない。
 建物は地面の上に乗っているから。
 でも、その地面を敢えて描かずに他の絵とダブらせることで、カットを割らずにいくつも風景を見せているんですね。
 かなり実験的な手法です。

 富野さんはアニメの中で、いくつもの実験手法を、開発というよりは完成させた人なんです。
 たとえばロボットの中で喋ってる人と、ロボットを画面分割で見せるとか。
 しかし、ダンバインのオープニングぐらいになってくると、「どのように複数の映像イメージを一画面で見せて、見ている人を世界に引き込むのか」という実験を始めました。

 「オーラロードが ひらかれた~♪」で本当にオーラロードがひらかれたシーンが描かれます。
 それで お城がクローズアップになって、妖精が飛んでいると。
 ここら辺は本当に設定紹介ですね。

 それで「きらめく光 俺をうつ~♪」で、本当にきらめく光が俺を撃っています。
 愚直なまでに「歌詞と絵を合わせる」という事を何度もやっています。

 それでダンバインのコックピットに乗り込んで、フタが閉まって発進です。
 「オーラの力 たくわえて~♪」で、後ろに城が見えて、オーラの光がキラキラと尾を引いて、それでダンバインが飛び立つ。

 「ひらいた翼 天に飛ぶ~♪」で、本当に天に飛んでいます。
 これも愚直なまでに、オープニングの歌詞どおりに絵を描いています。

 「恐れるな、俺の心~♪」で、キャラクター4人がバーッと出てきます。
 このときに注目して欲しいのが、4人とも左を向いていることなんですね。
 これは何かっていうと、彼らは主人公であるという証拠なんです。 
 それはどういう意味かっていうと、夏目房之介が発見した事なんですけども、日本語には日本語の進行方向というのがあるそうなんです。
 僕らが漫画を見るときには右から左へと読むんですね。
 漫画のセリフっていうのは縦書きですから、右から左へと流れていく。
 つまり右側が上流で、左側が下流になるわけですね。
 なので、物語を進める人間っていうのは必ず左を向く。
 それに対して、物語を止める人間っていうのは右側を向いてる。
 それが鉄則なんですよ。

 それで、この4人のキャラクターの顔が次々と並ぶときに、顔が左側を向いているのが “正義グループ” 。
 正しい側、正義の側だっていうのを現してます。

 「悲しむな、俺の闘志~♪」っていうときに、頭に角がある馬、ユニコーンが出てくるんですけども、足が太い事に注目してください。
 西洋的なユニコーンではなくて、農耕馬のような強い馬です。
 足首が太い馬に角が付いているという事で、西洋的なユニコーンのイメージを払拭して、富野さんは新しいファンタジーを作ろうとしています。
 力強い、泥臭いファンタジーを。

 「のびる炎が正義になれと~♪」、ここも本当に炎がのびているシーンですね。
 愚直なまでに。

 「雷はねてソォドが走る~♪」という所は、本当に雷がピカピカと光って、剣を振り回しているというですね。
 当時は本当に、ファンタジーというものはほとんど日本に紹介されてなかった時代なんです。
 なので富野さんは、敢えて愚直なまでに歌詞と絵を重ねる事で、世界観を作っています。

 それで「オオォ~♪」という所で、さっき言ったとおり右側を向いているキャラクターが3人出てきます。
 この右側を向いている3人というのは、対抗勢力ですね。
 ストーリーを止める側だと。
 これが悪いヤツらとは一概には言えないんですけども、主人公と対立する勢力だというのが、この流れで分かります。

 それで「海と大地を つらぬいた時~♪」のときに、本当に大地を貫いた映像が現れて。
 それで「オーラバトラー♪」って言った瞬間に、本当にオーラバトラーのダンバインが現れると。

 「オーラシュートー♪」って言ったら、オーラシュートっぽい武器が現れる。

 「アタック アタック アタック♪」で、三回の攻撃シーンがあると。

 それで「俺は戦士~♪」というときに、剣を取って、入れて。
 これで終わりかと思ったら、一瞬、走る動きを見せる。
 この走るポーズも、めちゃくちゃ難しいポーズを止めで描いてますね。
 作画の湖川さんの上手さをあらわしています。

 昔、アニメの『レインボーマン』のオープニングでは「インドの山奥で♪」って歌詞が流れた瞬間に、インドの山奥が映ってた。
 それで「修行して~♪」という歌詞が流れた時には修行しているシーンが映ってた。
 本当に歌詞の通りに絵が映って、スッゴイ程度の低い、くだらないオープニングだったんですね。
 それを見たときに僕らは笑って「絵と音楽がまったく同じなんて、こんなのダメだよ」って言ってたんです。
 マリアージュが起きていないというか、歌詞と絵が少し違うからこそ、そこに想像力が働くんだと思っていたんです。
 ところが富野由悠季のような才能がちゃんと作ると、絵と歌詞の意味がシンクロしていても、逆に効果を発するんですね。

 『マジンガーZ』とか『ザブングル』っていうのは、見ている人には分かりやすい世界だった。
 だけど、まったく日本人になじみの無いファンタジーの世界を描き、その中で大河ドラマを描いた。
 『聖戦士ダンバイン』の何が特殊なのか。
 正義と悪がしょっちゅう入れ替わって、主人公がいろんな場所に行って、認識が増える。
 最後はチェスのコマが段々と減っていって、どこが勝負か分かるようにコマが寄せ合ってくるような感じ。
 いろんなキャラクターの思惑とかが寄ってきて、最後のドラマを作るっていう作り方をしています。
 ダンバイン以前から、富野さんは、そういう事をやりだしていたんですけどもね。
 そういう難しい事をやろうとしているので、オープニングは思い切って、分かりやすく解説するようなものを作ったという事です。

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