岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/07/13

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2018/06/17配信「月一 Q&A」の内容をご紹介します。
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2018/06/17の内容一覧

本屋が潰れたら社会はどうなるのか

 「俺は電子書籍で読めればいい。紙の本なんて、それでも紙で買いたいと言うようなお金を持っている人だけが買えればいい」というのは、いわゆる「ホリエモン的な理屈」なんですね。
 ホリエモンという人について、僕自身、好きか嫌いかで言うと好きなんですけども。まあ、こういうのはホリエモンがよく使う理屈なんですよ。
 これの何が危険かといったら、「買いたい人が買えばいい、別に潰れる本屋は潰れればいい」と言うんですけど、この本屋というものは、たぶん、一度潰れてしまったら、もう戻せなくなるんですね。
 そして、この国から書店というものがほとんど潰れたら、僕らの社会がどうなるのかというのは、実はわかっていないんですよ。

 まあ、欲しい本は手に入れやすくなると思います。だって、値段が安くなるんだから。
 でも、「はたして、私はどんな本が欲しいんだろう?」とか、「僕が欲しくない本には何が書いてあるんだろう?」ということが、どんどんわかりにくくなるんですね。
 僕らは知的好奇心というのを持っているんですけど、その知的好奇心というのは、好奇心というのをある程度満たせる環境があってのものなんですよ。
 すべてのものが「これが欲しい → 検索した → 見つけた → 安く買える」というふうになってしまうと、自分の関心がある部分の物事しか見えなくなってきて、その周りが盲点のようにどんどんボヤケてしまう。
 これは別に書籍に限ったことではなくて、まあ、ネットワーク社会の弊害みたいによく言われてることなんですけども。

 では、これをやると、どうなるのかというと。
 内田樹さんが「効率化だけを考える組織よりも、弱者を救える組織、弱者を含んでいる組織の方が長生きできる」っていうふうに、以前から仰ってるんですね。
 僕も、この点について、内田樹さんとの対談の中で、ちょっと言い合いになったんですけども。
 例えば、内田さんは「大学を残すべきだ。大学というのには、補助金を与えるだけではなく、市民全体が『大学は残さなきゃいけない』と考えて残すべきだ。自然競争のままにしておいたら大学は潰れちゃう」と言うんですけど。僕はもう、「自然競争で潰れるような大学はもう潰していいじゃないですか」って言って、内田さんにすごく怒られたんです。
 その時のセリフが「効率化よりも弱者を残しているような組織の方が、絶対に生き残る」っていうふうに言われたんですけども。
 僕がその時に考えたのは、「日本にはもう大学というものを維持するような余裕がない。余裕がないところで無理矢理残したら、結局、大学に楽々行けるくらいお金がある人が大学に行くだけ。内田さんが考えている「知的な環境」が崩れていく中で、なんの助けになんにもならない。だから、知的な環境を構成しているものの中で、まず大学という、面積も取るし、文科省の予算を山程使うものをまず潰して、図書館の中に自由セミナーみたいなものをいっぱい作ることくらいでしか、立て直しは出来ない」というふうに言って、まあ、大激論になったんですけど。
 対談本の中では、そこのところはバッサリとカットされたんですけどもですね(笑)。

 僕らの社会に本屋さんを維持するだけの余裕までなくなれば、たぶん、本屋さんというのはなくなります。すると、紙の書籍というのは「お金持ちだけの娯楽」になっちゃうんです。
 貧乏人というのは「そんな不便なものを、なんで欲しいの? だって、2000円もするくせに、紙だからすぐになくなったりして、どこにでも持っていけるわけでもないから、外で読めない。なのに、なんでそんな紙の本みたいな不便なものが欲しいの?」というふうに思うようになる。
 金持ちは金持ちで、「紙の本は高いけど、良いんだよね」と言うようになる。そうやって、お互いの文化が理解できなくなる。
 これが「階級化」なんですよ。階級化というのは何かというと、「貧富の差があること」じゃないんですよ。「貧富の差というのが固定化されて、金持ちは貧乏人の気持ちがわからなくなるし、貧乏人も金持ちが何に喜ぶのかが、根本的に理解できなくなること」なんです。

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