岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/06/22
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2018/05/27配信「『海賊の経済学』プラス、大英帝国の繁栄の礎は海賊が築いたものだった!」の内容をご紹介します。
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2018/05/27の内容一覧
- 海賊も「神の見えざる手」に導かれていた!
- そもそも、海賊とは何か?
- 海賊の分類
- “黒髭”こと、エドワード・ティーチ
- なぜ、彼らは海賊になったのか?
- 当時の水夫たちの最低な労働環境
- 最高に公平な海賊船
- リーダーの権力を分散させる「クオーターマスター制度」
- 海賊の資料の紹介
- 後半のお品書き
- 海賊船の公平さの裏にある「プリンシパル・エージェント問題」
- 船長よりもはるかに偉い「海賊の掟」
- 髑髏マークに込められた意味
- 仲間になるか死ぬか、計算ずくの入団儀式
- 海賊たちの黄昏
- イギリスは海賊産業で成り上がった
最高に公平な海賊船
この『海賊の経済学』に書いてある海賊に関する話は意外なことばっかりで。
さっき話したように、海軍船はエゲツないし、民間の商船もエゲツないんだけど、海賊船はそれに対して、かなり面白いんだよね。
例えば、僕もこの本を読むまで知らなかったんだけども、海賊船の船長って「選挙」で選ばれてたそうなんだ。
しかも、投票権は船に乗る1人1人が全員1票ずつ持っていた。海賊船の中には、基本的に奴隷っていないんだよ。全員、同じ1票持ってるんだ。もう、格差0。平の船員であろうと、1等航海士であろうと、1人1票持っていて、その選挙によって、海賊の船長が決まったんだ。
海軍の艦長というのは、王様とか、偉い参謀本部が決める。商船の船長というはスポンサーが決める。だから、雇われた船員、もしくは連れ去られた水兵たちというのには、基本的には自分たちのトップを選ぶ権利がない。
しかし、海賊の船長は選挙制。
おまけに、その選挙というのは、いつでも始まるんだ。誰かが「お前より俺の方が船長としての適性がある!」と言い出したら、その場ですぐに選挙が始まるんだって。
これに関しては、詳細な資料が残ってて。18世紀のカリブ海で海賊船「ロイヤル・ローバー号」で起きた選挙の記録があるんだよ。これは海賊船長選挙の典型例なんだけども。
さっきも話した、4隻の海賊船に500人の手下を従えるバーソロミュー・ロバーツ船長は、部下の1人だったシンプソンから、挑戦された。
すると、お互いに推薦人を選んで、「演説大会」が始まったんだ。「彼はみなさんの福祉のために~」という演説を本当に大真面目にやるんだよ。「彼を船長として選ぶことが、いかに我々の利益に繋がるか。彼がどんなに自分の利益よりもみなさんの福祉のことを優先しているのか」っていうのを、マジで大演説するんだ。
選挙の結果、バーソロミューは再任されて、そのまま船長になり、結果、バーソロミュー船長のおごりとして全員に酒が振る舞われ、夜はパーティー、と(笑)。
とりあえず、船長はことあるごとにこうやって、みんなに何かを奢らなきゃいけないから、実は、船長って、かなりスッカラカンなんだけども。
この船長選挙は「世界中のどんな民主主義選挙よりも150年は早かった」と言われてるんだよ。
民主主義選挙の歴史でいえば、まあ、ギリシャのアテナとかがあるんだけど。でも、アテナって奴隷制だからさ、完全に1人1票を持ってるわけじゃないんだ。
でも、海賊船の場合、女の海賊というのもたまにいたそうなんだけど、その女の海賊ですら1人1票をちゃんと持ってる。黒人であろうが東洋人だろうが、その船に乗っている人間は、投票が認められている。
とりあえず、船に乗っている人間って、全員「使える人間」なわけだから。使えない人間なんて、そもそも船に乗せないからさ。使える人間であるということは、全員平等に1票、年齢も何も関係なく持っていたんだ。
逆に怖いのは、「運が悪い船長はクビになる」というところなんだ。
例えば、海図が読めない船長は容赦なくクビにされたし、「あの船長は勇気がない」という噂が立っただけでもクビになった。
これはその実例なんだけど。詳しくは後半で話すけど、本当にこの時代の人たちは、みんなスペインが嫌いで嫌いでしょうがないんだよ。そんな中、拿捕したスペイン船の船長を、みんなが「殺せ! 殺せ!」と言ってるのに殺さなかった、心優しい船長がクビになったことがあったそうだ。
では、クビになったらどうなるのか?
だいたいは「無人島に島流し」なんだって。必要最低限の水筒1杯分の水と、あとはピストルと弾と火薬だけを持たされて、無人島に島流しにされた。この銃は、もちろん「自殺するため」に持たされたんだよな。
まあ、船長を吊るし上げるほどでない場合とか、選挙するのが面倒くさいという時は、船長に不満を持った海賊達というのは、港に着いた時に黙って船を降りちゃうんだって。船乗りって、全員、1航海ごとの契約制の契約社員だから、船を降りたら、もう一度その船に帰ってきてくれるとは限らないんだよね。
だから、船長というのは、全員に対してものすごく公平に振る舞わなきゃいけなかったんだけど。とりあえず、「船長が気に食わないな」と思った船員は、全員、船を降りて他所の船に行っちゃう。だから、タチの悪い船長というのは、やっぱり残れなかったみたいなんだよね。
だから、船長というのは、大体の場合、食事も下っ端海賊と同じものを食べるし、寝る場所も同じベッドで寝てたと言われています。
(船の模型を見せる)
こういう海賊船の資料には、「船長室」っていうのがあるじゃん。「船長室で船長だけがベッドで寝てた」ってふうに思っている人も多いと思う。僕もそう思ってたんだけども。
でも、この本によると、海賊船には確かに船長室が付いてるんだけども、これはほとんど「シェアハウスのリビング」状態で、みんなで使うのが当たり前の場所であり、そこにある酒はみんなのものだったんだって。だから、みんなは勝手にその酒を飲むんだけど、それを買うのは船長なんだよね(笑)。
こういうふうに、船長の私物というのは基本的に「みんなで分けるもの」であって、あんまり独り占めできるものではなかったそうです。
ただ、海賊船のような、無法者が集団で生活する場では「強力なリーダー」というのが絶対に必要になるはずだよね。
ところが、そういった強力なリーダーというのを立ててしまうと、メンバーを粗末に扱ったり、自分の好きに振る舞うことになってしまう。例えば、勝手に部下を殺して、その罪を他のやつになすりつけたり。これはこれでヤバい。
だから、そういうジレンマがあるんですよ。海賊船というのは、強力なリーダーが必要なんだけど、同時に、そのリーダーにすべてを決めさせては自分達がヤバイことになってしまう、と。
そのため、海賊船では、黄金時代よりも100年くらい前のバッカニアの頃から、「強力な権力を分散させる」ということが図られていたんだ。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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