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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「モテない男の報われない愛を描いた『ノートルダム・ド・パリ』を、ディズニーはどう翻案したか?」

2018/03/05 07:00 投稿

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岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/03/05

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2018/02/25配信「『ノートルダムの鐘』の謎 ~ほんとは怖いノートルダム」の内容をご紹介します。
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2018/02/25の内容一覧

なぜ今『ノートルダム・ド・パリ』か?

 ディズニーのアニメ『ノートルダムの鐘』の原作は、岩波文庫から出ている『ノートルダム・ド・パリ』です。こんなに分厚い文庫本なんですね。しかも、これはあくまでも上巻で、この後には、さらに分厚い下巻が続いているんですよ(笑)。
 そんな、「いい加減にしろ!」っていうくらいメチャクチャ分厚い文庫本が2冊もあるんですけど、この原作本は、まあ読めないんですよ。この「読めない」というのは、「難しいから」というよりも、はっきり言って「現代の僕らにとってはわりと退屈だから」なんですね。
 この原作である『ノートルダム・ド・パリ』というのは、セルバンテスの『ドン・キホーテ』に並ぶ、「タイトルは有名だけど、ほとんど読まれていない作品」だと思います。
 でも、読めなくて当たり前なんですね。やっぱり、この作品は、当時のフランス人でしか面白くないような話なんですよ。

 これについては、NHKが発行している『100分de名著』という本の中で、わかりやすく解説されています。

 この中で、『ノートルダム・ド・パリ』の解説を行った、フランス文学研究家の鹿島茂さんは、「これは半分ポエムみたいなものであり、詩というのは、文章を読むだけではわからなくて、原語の声で聞かないと入ってこない」と言っています。
 『ノートルダム・ド・パリ』の作者であるヴィクトル・ユーゴーの時代というのは、小説というものを音読していた時代から、目だけで読む黙読の時代への変換点だったそうです。そして、ユーゴーの後の作品である『レ・ミゼラブル』は黙読のために書かれた小説なのに対して、この『ノートルダム・ド・パリ』というのは、どちらかというと音読の小説なんだそうです。
 だから、フランス語の音感の通りに発声したものを聞かないと、あまり面白くない作品であると、鹿島さんは言ってます。まあ、フランス語を読めないし発音できない僕には、それが本当かどうかわからないわけなんですけれどね(笑)。
 この『100分de名著』の『ノートルダム・ド・パリ』の回の本は、わりと頼りになるアンチョコです。

 あとは、なぜ原作を読まなくてもいいのかというと、この作品は、そんなに理屈だった話ではないからなんです。
 この物語の捉え方として、例えば、「「カジモド」という奇形の男と、「エスメラルダ」 という娘の純愛の物語である」とか、いろんな捉え方があると思うんですけども。実は、僕が思うに、おそらく、これは『雨月物語』とか『宇治拾遺集』とかに出てくる怪談が一番近いんですよ。
 なんか不合理で、気味が悪くて、ちょっとした人間の黒い部分が出て来る不思議な話。そして、やたらと長い。そういう意味で、どちらかと言うと、日本の古来からある怪談に似たようなものと考えた方が掴みやすいと思います。
 とりあえず原作を読んだ上での僕の全体の印象は、もう本当に「『雨月物語』の中に入ってても不思議じゃない」というものでした。

(中略)

 この『ノートルダム・ド・パリ』が、『ノートルダムのせむし男』というタイトルの映画になった時に、原作の話はメチャクチャに組み替えられました。さらに、それがディズニーの『ノートルダムの鐘』になった時にも、またメチャクチャにお話が変えられるんですね。
 でも、変えられる前のお話というのは、映画化するにあたって変えざるを得ないようなものなんですよ。さっきも言ったように、これは『雨月物語』のような、もう本当に、読むのがシンドい話ですから。

(中略)

 この解説の中で面白いのが、鹿島さんは「これは、アイドルに恋をした2人のオタク青年という、現代の物語である」と言い切っているところなんですね。
 確かに、この作品の中心にあるテーマは、鹿島さんが言ってるように、「モテない男の愛は報われない」ということなんですよ。これが、今回、僕が『ノートルダムの鐘』を取り上げようと思った理由です。そう聞いて、「これはもう、ニコ生ゼミで取り上げる価値がある!」と思っちゃったわけなんですけど(笑)。
 「モテない男の愛は報われない」というのはどういう意味かというと。原作の『ノートルダム・ド・パリ』では、フロロ司教補佐もカジモドも、エスメラルダを激しく愛しているんですけど、この2人の愛はまったく報われないんです。
 エスメラルダは、ただ単に「見た目がいい」というだけの理由で、クズ男のフェビュス隊長を好きになってしまって、物語の最後まで、これは1ミリたりとも変わらないんですよね。
 つまり、「怪物が美女に恋愛しても、悲劇しか生まないよ」という話なんです。

 こういった話をわかりやすく映画にしたら『ノートルダムのせむし男』というハリウッド映画になるし、更にそれを翻案すると『キングコング』になるんです。
 『ノートルダム・ド・パリ』では、「カジモドがエスメラルダを拐って、ノートルダムの塔の上にどんどん登る」というシーンがあるんですけども。「キングコングがヒロインを拐ってエンパイアステートビルに登る」っていうのは、完全にそれの翻案なんですよね。
 つまり、名作映画というのは、決してゼロから生まれてくるものではなくて、過去の作品からの引用で作られるんです。

 今、「オペラ座の怪人みたい」ってコメントが流れたけど、『オペラ座の怪人』だったらまだいいんですよ! ヒロインとの心の繋がりはあるから。
 『美女と野獣』だったらいいんですよ! 野獣は最後にはイケメンの王子様になるから。
 だけど、『ノートルダム・ド・パリ』というのは、そういった救いが一切ない世界なんです。そして、だからこそ、ディズニーのスタッフはこの作品を選んだんですね。
 ただ、ハッピーエンドにするために、大幅な改造をしてるんです。してるんだけども、「モテない男の愛は報われない」という部分だけは、これを原作にしたどの作品でも再現しようとしているんです。

(続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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