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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「エグいだけじゃない!本当に面白いマンガ『ど根性ガエルの娘』を語ってみるよ」

2017/11/27 07:00 投稿

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岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2017/11/27

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2017/11/19配信「今夜はマンガ夜話!あまりにもすごい作品『ど根性ガエルの娘』他を語る!」の内容をご紹介します。
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2017/11/19の内容一覧

『ど根性ガエルの娘』語るよ

 ネットでも一時期、話題になったんですけども。この作品がどんな話なのかというと、『ど根性ガエル』を描いた「吉沢やすみ」というマンガ家の娘が、当時の家庭環境の崩壊とそこからの復活を描いたマンガなんですね。
 この吉沢やすみという人は、『ど根性ガエル』の後、あんまりヒットに恵まれず……というか、正直、スベり通しで。終いには、マンガが描けなくなって失踪しちゃった。なによりギャンブル中毒で、麻雀ばっかりやっていたと。また、運がいいのか悪いのか、麻雀が強かったおかげで、全然、家に帰らずに、ひたすら麻雀をやっていた。そんな中で、家庭がどんどん崩壊していって、たぶん1億円以上溜めた預金にしてもなんにしても、すべて失ってしまって、家族が不幸のどん底に落ちるという話なんです。
 まあ、今現在は、ソルマックのCMと、あとは実写ドラマ『ど根性ガエル』があったりしたおかげで、そこそこ金が入ってきて、そこから復活しているんですけど。
 そういう、いわゆる家族の崩壊と復活みたいな話のはずだったんですが。話数が進むごとに、この『ど根性ガエルの娘』というのは、どんどん変になってきているんですね。

(中略)

 『ど根性ガエルの娘』は、ネット上では「15話からすごい!」って評判になっているんですけど。確かに、そうなんだよ。
 例えば、15話からの展開をちょっとまとめると。まずはこのエピソードからですね。
 22年前の話ですね。主人公のゆうこが、「お父さんは悪いことはしてなかったのよ! 疑って悪かったと、土下座して心から謝りなさい!」とお母さんに言われているシーンです。
 このお父さんはギャンブルに狂って失踪するんだけども、家に帰ってきた後は娘の財布から金を盗んでたんだよね。それに気付いた娘が「お父さん、お金、盗んだでしょ?」というふうに言うんだけど、奥さんはそれを頑として認めない。そればかりか、「そんな疑いをかけて悪かったと、お父さんに土下座して謝れ!」というふうに、娘に詰め寄る。お父さんは、そんな母の隣でふんぞり反っているんだけど、このお父さんは本当に盗んでるんだよ。
 そんな中、「さあ、早く!」っていうふうに母親に詰め寄られて、「お父さん、申し訳ありませんでした」というふうに土下座して謝るんです。このシーンは2ページを見開きで使って描かれていますね。
 だけど、ここですごいのは、無実の罪で娘が土下座するというシーンの次なんです。これが終わった後、残った他の家族がものすごい平気な顔して晩御飯を食べるシーンに切り替わるところなんですよ。
 母親が「さ、夜ご飯にしましょう」というふうに言って、カチャカチャっと用意を始める。「お父さん、今日は奮発して、いいお肉を買ったの」「美味そうだな!」という家族団欒している横で、土下座させられた娘は、そこから動けずに膝を抱えながらガクガク震えている。このガクガク震えている娘がいることを知りながら、その横で、娘以外の家族の一家団欒の様子が続いているんです。
 この辺が、ネット上で「すごい」とか「モンスター家族」みたいに言われたんだけども。

(中略)

 ここでちょっと注目したいのが、このシーンで描かれているお母さんが持っているこの「煙草」なんですね。
 事実として、このお母さんも、ひょっとしたらこんなことを言ったかもしれないんだけど、このシーンでわざわざ煙草を描き込む必要はあったのか? だって、次のこのページでは、この煙草がお母さんのシンボルのようになってるんですよ。
 このシーンであえてお母さんの目線を外してるのは、「娘をまともに相手にしてない」という証拠です。最初は娘の目を見て、煙草を吸って笑いながら、「そんなこと知ってた」というふうに言って。「お父さんのプライドを守らなきゃ~」と言うところでは母親の顔を見せずに、煙草の煙だけを見せるだなんてシーンは、正直言って、母親に悪意がないと描けないんですね。
 これは「現実の作者が現実の母親に対して悪意を持っているに違いない」という意味ではなく、「この作品の中のキャラクターとしてのお母さんに悪意を持っている」という意味です。これ、本当に悪者として描くつもりがなかったら、ここで煙草を持たせる理由がないし、煙草の煙をわざわざ描くはずがないんですよ。
 さっきも話したように、梶原一騎が、大山倍達に関する事実というのをベースにして、『空手バカ一代』の主人公・マス・オオヤマを描いているのと同じように、この作者はお母さんというキャラクターを描いてる。決して本人じゃないんです。これは「マンガの中のキャラクター」なんですよ。
 だけど、それを読んでいると、ついついこの作者の猛烈な毒気に当てられて、「このお母さんはなんて酷い人なんだ! 作者のあなたは、こんな最低の環境の中で、よく生き残ってくれました!」って感想になっちゃうんです。「生き残っててくれた」もクソも、こんなもん、マンガ作品として描いてるんだから、面白く描いてるに決まってるわけですよ。
 ただ、この作者は、「読者はこういうのを面白いと思っているに違いない」という部分が独特過ぎて、確かに面白いマンガなんだけど、癖が強すぎることになってるわけなんですよね(笑)。
 いや、僕も茶化すつもりは全然ないんですけど、こういうふうに自分の中で相対化しながら読まないと、このマンガを事実として受け取り過ぎてしまって、暗い方に引きずり込まれて、それで読めない人はいっぱいいるんですね。
 確かに、レビューにもある通り、このマンガは「最初はかわいい絵だと思ったら、エグい話」なんですけど。でも、「エグい実話」ではなく、何よりもこれは面白いマンガなんだというところを見てあげないと、こんな命を削ったようなネタを、さらに盛って描いてる作者がかわいそうなんですよ。まず、これは、面白いマンガなんですよ。

(続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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